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意思による楽観のための読書日記

負けてたまるか!日本人 保阪正康、丹羽宇一郎 ***

私達が歴史に何を学ぶか、作家でありジャーナリストと中国大使も務めたビジネスマンの対談、2020年5月発刊。

二人は昭和14年生まれの同世代、終戦時にはまだ小学生だったが、空襲や敗戦の経験と記憶がある。今の若い人たちに何を一番に伝えたいと思っているか、それは「戦争から遠ざかりなさい」ということ。戦争とはなんとしても避けなければならないものだということ。

歴史というものは、誰かが目的を持ってその時の出来事を記録した文書である以上、事実の解釈でしかないことを思い知る必要がある。古事記・日本書紀から戦後史まで全てに渡って同じことが言える。歴史書に書かれた内容が、どのように解釈して書かれた「史実」なのかを読み手は読み取る必要がある。加えて、書かれない真実もあること、それは書かない、という意思が働いていると見たほうが良い。

今の日米同盟は、日本が米国の占領状態から脱していない証明書のようなもの。地位協定を見れば一目瞭然、特に沖縄は米軍基地であること、米国の軍隊は日本列島で好きなことができる取り決めでもある。それでも日米同盟が重要だというなら、そのことを肝に銘じて今後の日米関係、対中ロ韓朝関係を見定める必要がある。意見を持っていても言わなければ、何も考えていないのと同じこと。発言すれば、意見が異なる人との議論となり、異なる視点からの見方が頭に入る。文系は理系、理系は文系の視点が必要で、リベラル・アーツの重要性が増している。

日本が明治維新以来、日清日露戦争を経て、そのままの国家体制で日中太平洋戦争へと突き進んだ理由は何だろうか。それは優越した対中対朝感情のままに、軍部が政治に優越する体制をマスコミを先頭とした国民が許容したからではないか。ドイツ・イタリアという枢軸国との違いは、当時の日本に明確な政治システムがあったわけではないこと。軍部が暴走したと言っても、それは軍令部や幕僚の中での合議で、特定責任者不在のまま天皇を国家のシンボルに仕立て上げて、文民統制のないままに戦争に突き進んでしまった。東京裁判では天皇をさばく対象から外したため、戦犯を決めてさばくことに戦勝国は苦慮した。その政治システムは現在も大きくは変わっていないし、曖昧な合議制や、感情的な国民世論も同様である。昨今の桜を見る会や森友問題などをみれば分かる通り。責任所在が曖昧な政治のあり方を正すことは、国民に課せられた義務であるはず。戦争は政治論争の先にあるが、外国との対立があると、慎重論は弱腰と見られ、常に強硬論が優勢になる傾向がある。国民が国の政治の行方を常に関心を持ってみていないと、国家というのは戦争に突き進む危険性を常にはらんでいる。

日本人は一生に一度、できれば若い時代に外から自国を見て見る経験をすべき。そのためには3ヶ月でも良いから海外に留学してみること。国家や企業はそのためにお金を出しても良い。自分がいかに同じコップの中にいるのかを感じる、そのことを知るだけでもその後の人生観、政治観が変わるはず。また読書は価値観形成に有用であり、知らないことは山ほどあることを実感できる。良書を読むことは有用だが、乱読でもいいと思う。読んだ内容を忘れないためには、自分の感想や内容を書き留めておくことは有用。

若い人たちには、いい会社に入ってそこそこのお給料をもらい、老後は小金をもって不自由なく暮らしたい、なんて思わず、やりたいことを見出してチャレンジをしてほしい。本書内容は以上。

年寄りがまた同じこと言ってるわ、などと思わないでほしい。私もこの二人にあらゆる論点で同感。なぜ同感してしまうのだろうかと思うが、穏健ではあるが左でも右でもなく、バランス感覚がありながら現在の政治にもビジネスにも批判的な視点を持つことに共感するのだと思う。感情的な反感や、視点の定まらない好悪からは建設的な意見や論点は生まれないし、異論があれば対立を恐れず議論してみることが重要。この世の中に生まれた限りは、人は一定の組織や地域の中で、縦と横の関係があるはず。特に日本では縦の関係組織の影響を受けやすい。社会人になれば、いずれかに極端に依存したり、従属してはならないと思う。そのために必要なことは、「反対者の意見を聞いてみる」「立ち止まり別の視点で考える」「自分の間違いに気づく」「やり方を変えてみる」「縦の関係を見直す」・・・。政治にも企業にも、そしてもちろん若者にも年寄りにも「明日のために」できることはまだまだあると思う。
 

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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