意思による楽観のための読書日記

最終定理 アーサー・C・クラーク、フレデリック・ポール ***

作者はそれぞれ発刊時に90才と88才という高齢コンビでクラークの遺作でもある。クラークは本書最終稿に目を通して数日後、2008年3月に亡くなった。生きている間に見たかった、しかし見ることができなかったものとして次の3つをあげていたという。①地球外生命体が存在する証拠 ②石油依存をしなくて済む商業的にも成り立つクリーンエネルギー ③帰化した国スリランカの紛争集結 本書にはこうした自身の夢や人類の願いなども入ってきている。ちなみに、最終定理とはフェルマーの定理、ストーリーにはクラークが何度となく作品の中で紹介してきた宇宙エレベーターや太陽風によるソーラーセイル、宇宙に存在する知的存在の「グランド・ギャラクティックス」などが登場する。

舞台は近未来の地球、主人公はスリランカの少年ランジット・スープラマニアンで、ひょんなことから海賊に拉致され、2年間の幽閉生活をおくる間にフェルマーの最終定理を証明して著名な数学者になるという筋書き。地球ではあちこちで紛争が絶え間なく起きているが、明るいニュースとして宇宙エレベーターがスリランカを基地として建設される。また、極秘に開発された人を殺さずに電子的な武器を無力化する、という国際協力の成果として完成された装置により、国連などの機関により協議された対象国は軍隊を始めとした国家権力による武力が無力化される。

しかし、こうした人類による核実験や強力な電磁波は銀河系の中での無法者を見張っている「グランド・ギャラクティックス」に目をつけられるきっかけとなる。そして地球を目指して人類無力化のために強力な艦隊が送り出される。亜光速で進む艦隊はその後も地球での動きをモニターし続ける。人類が人類同士で殺戮を繰り返す、そして地球外にまでその勢力を広げる危険な存在となるかどうかを見極めるために。

ランジットはその後マイラという女性と結婚し、ナターシャとロバートという二人の子供を授かる。ランジットとその家族は地球の外からくる艦隊とどのように係るのか。ナターシャは成長してソーラーセイルを操り、地球から月に向かうレースに出場、ちょうど彼女がレースに向かうとき、艦隊の地球外生物はナターシャに目をつけ、彼女を地球人類へのメッセージ送出アバターとすることにする。そして、競技を通して世界の人たちが平和的に競い合うというスポーツを示すことで地球は艦隊からの攻撃を避ける事ができるというもの。

地球の中での出来事や争いなどは地球外の生命から見ればこんなにつまらないこと、というメッセージ。アーサー・C・クラークが人生の最後に読者に語りかけたかったことである。


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