筆者は旧制津島中学に入学、大学に入学するまでを回想、その後は日記という形でその時考えていたこと感じたことを書き残してきた。小学生の時、着ていたシャツの色が紫紺だったことがあり、担任の先生に「紫紺」と呼ばれ、それがあだ名になったという。また、名前の光顕は幕末の志士であり、明治には大臣にもなった田中光顕伯爵と同じ、ということで伯爵ともあだ名が付いていたことから、この本のタイトルにしたという。田中光顕の自伝を先日読んだばかりであったので、面白い因縁というか関連に驚く。
学生時代の回想は戦争時代の学生生活、日本軍の横暴さ、そうした戦争の中にも若者の楽しい生活が描かれる。終戦直後では、混乱した学校制度の切り替えの狭間で起きたことを自分と友人たちの出来事として紹介、戦後は米国占領軍の良い印象、マッカーサー元帥が行った施政に日本人が敬意を表し、朝鮮戦争で本国との意見相違から首にされたときに日本人が元帥に大層感謝の意を表したことも気している。
戦後の物価の推移、教師の薄給を具体的に紹介していて面白い。また、戦後の庶民の生活を学校に来ている生徒たちの生活を紹介することで記述している。日記であるためすべてが具体的かつ分かりやすい。
日記を読んでいると筆者の考え方が戦中戦後に経験した日本軍と米国占領軍、そして戦後の日本政治などに大きく影響されていることが分かる。人間の考え方は12-22歳時代の経験と思索で決まるという分かりやすい実例である。実直で誠実な筆者の考え方、生き方が好ましい。
紫紺伯爵日記
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