意思による楽観のための読書日記

未知なる家族 日本経済新聞社 ***

日経新聞での連載を本にしたもの。

生産年齢人口減少が始まっている日本、標準世帯、という考え方が変わってきた。親子4人家族で夫がはらき主婦は専業、という標準は少数派になってきている。企業にとってもそうした社員の標準を基本に家族手当、扶養手当、出産と育児を考えてきたのがすでに実態に合わない。そもそも子どもを育てるのは経済的に見合わないから結婚はしても子供は要らない、と考える若い夫婦、いや結婚すらもしたくないと考える若い世代、世帯、という形が変わる。塩野七生さんによれば古代ローマも少子化で悩んだ、このための施策を考えていたという。

子どもの教育にかかる費用、子どもの安全が心配なおや、子ども教育のために良い教育環境の地域に引っ越したい、不動産業者はこうした親に向けた不動産広告をしている。遺産相続にも変化が。子供に世話になりながら親は子どもに財産を相続する、という形態が変わってきている。子供は親の面倒を見たがらない、親も子供の世話になどなりたくない、財産は町に寄付したい、親子の会話がなかったのでそうした親の気持を子どもが知らないので遺産相続争いが起きている。

世界でも同じような状況がおきている。イタリアでは養子ならぬ養祖父の広告が出て話題になった。一人暮らしのお年寄りが若い学生を住まわせるというサービスが広がっている。子育てを外国人に委託するシンガポール、離婚と再婚が多くて親子の血がつながっていないケースが5割以上あるデンマーク、国によって事情は様々、文化的背景が違うので同じ施策が有効かどうかはわからない。

児童虐待、DV問題、年金問題、法と制度と家族の実態がズレている。人はひとりでは暮らしたくない、やはり誰かと一緒にいたいがプライバシーは犯されたくはない、コレクティブハウス、異なる世代同士がつかず離れず暮らしていける仕組みを模索している。

国の制度、企業の社員福利厚生と支援の考え方、個人の価値観、すべてが同期していかないと少子化と高齢化が同時に進行する今の日本の問題は解決しない。

未知なる家族
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