日本列島の周りにある、日本の島は6852個(周囲100m以上の島)あり、有人島が418、そこに暮らす人の数は1955年には136万人いたのが、1975年には97万人になり、2015年には61万人へと減少してしまった。戦前は自給自足経済が成り立っていたのが、戦後は経済成長から、就職先を求めて島を出る労働者が増えた。島にあった小中学校が閉鎖され、人口減少に拍車がかかった。離島の自然は大切に残したい、という思いから離島をテーマとするライターになったというのが筆者。1971年生まれの書籍編集者・ライター。東京大学大学院博士課程中退(環境学)。テレビ局や出版社勤務などを経て独立。大学在学中から国内外の海や島をめぐる旅をつづける。離島への思いは深い。
有人島が無人化すると、離島への定期船がなくなり、電気ガス水道のインフラが停止される。一度無人化すると、再び有人となるのが難しい理由の一つである。そんな離島に一人になっても暮らし続ける人がいる。ずっとその島で生まれて育ってきたし、暮らしやすいし、離れたくはない、という。
紹介された島の風習で印象的なのが「守姉」、沖縄県多良間島で、近所の子供が赤ちゃんの面倒を見るという習慣である。近所であれば、血がつながっていてもいなくても、守姉はできる。多くの場合、守姉は小学高学年から中学3年生くらいまでで、そこからは進学や就職のために島を離れてしまうから、次の守姉にバトンを渡す。守姉は「他所の子も自分の子も宝物」という精神からくる。世話になった守姉は一生「ネエネエ」として慕い、守姉も可愛がるという。昔は沖縄各島で行われていた習慣が、今ではこの多良間島だけに残るという。
本書で紹介された離島は14箇所。島の暮らしや人々、風景を詳しく紹介。絶滅寸前の習慣や、「最後の一人」になった島民の思い、死者とともに生きる知恵などをリアルに伝える。島に残る風習、海に囲まれ、資源が限られる離島には、相互扶助の精神や、「公共知」ともいえる、ともに生きるための知恵が培われてきた。いずれもすでに無人島だったり、近々無人島になる可能性を持っている。TV番組でロケーションで使われる由利島も紹介され、その昔、由利島が無人島になってからもしばらくその島に設置され続けたという公衆電話が紹介される。シケにあった人が緊急連絡するために、いつも10円玉が置かれていたという。本書内容は以上。
離島にはなにかロマンを感じてしまうのだろう。エピソードはいずれも郷愁を誘うような、昔の物語のような風合いがある。「ポツンと一軒家」と同様の面白さを感じてしまう。