筆者は、従来からの日本史は固有名詞の連続で、記憶を強いられることが理解への困難さを増長すると主張。本書では可能な限り固有名詞を使わずに通史として概説した。
本書によれば、日本史を古代、中世、近代と3区分。約4万年前に日本列島に訪れた人類は、長い間おおむね平和な生活を送っていた。しかし約3000年前ころからコミュニティが発達し、戦争も増えていった。3世紀ころには列島を穏やかに支配する王権が生まれ、7世紀には最高権力者を「天皇」と称し、国号を「日本」と呼ぶことを定めた。こうした列島を一つにまとめようとする時代区分を古代と呼ぶ。12世紀になると天皇、上皇、貴族、武士、寺社など複数の権力が併存する中世へと移行していった。朝廷の権威と中央政権の勢力が弱まり地方勢力の力が増す時代だった。16世紀の戦国時代を経て、17世紀から再び中央政権の権力のもとに列島の状況は平定に向かう。19世紀後半には西洋列強から導入した思想や技術を持ちいて本格的に国家が一つにまとまっていった。この時代を近代と呼ぶ。20世紀には大きな戦争に敗戦し数えきれない犠牲を出した後は、史上例を見ない経済成長を遂げて豊かな時代を迎えた。これが日本史概括。
通史とは別に、様々な切り口から歴史を捉えたのが本書の特徴。「コメと農耕」「神話と物語」「土地と所有」「家族と男女」「未来予測」「戦争と平和」「歴史認識」というテーマ毎に本書の見方をまとめたのが後半。本書としては、途中で放り出すことなく日本史を通読できる、というのが主眼。