〈日本に稲ある限り稲雀(いなすずめ) 今瀬剛一〉。稲が実るころ、群れをなしてついばみにやってくるスズメ。同じ秋の季語には「秋雀」も。
俳諧の世界では、スズメは他の語と組み合わせることで四季を詠むことができるといいます。それだけではありません。ことわざや昔話、童話や童謡、最近では大ヒットしたアニメ映画の題名まで―。古くからスズメは身近な鳥として親しまれてきました。
人びとのくらしとともに当たり前のように見かけてきた存在。しかしいま、その数が急速に減っています。環境省などの調査によると、スズメの数は年3・5%以上のペースで減少。このまま減り続ければ絶滅危惧種の基準に達する恐れがあるといいます。
この調査は30年ほど前に締結した生物多様性条約をきっかけに実施してきたもの。自然保護団体や専門家、企業や多くの市民が協力し、陸から海までおよそ全国1000カ所で生態系の変化を長期にわたり観察・記録しています。
報告書では身近なチョウ類の33%、鳥類の15%にあたる種が年3・5%以上のペースで減少。スルメイカやサンマの不漁をはじめ海でも異変が起き、サンゴの白化現象の増加、藻場の衰退や消失が進んでいると。
専門家は温暖化や農地の減少、山林の荒廃といった環境の変化が影響しているとみています。改めてスズメを探してみると、たしかにその姿はどこに…。なじんできた生きものたち、同じ地球に住む“仲間”が消えてゆく。それは私たち人類への警鐘でもあるでしょう。