敵基地攻撃/ミサイル防衛/軍拡
2023年版の防衛白書は、安保3文書の改定を踏まえ、全体的に構成が書き換えられました。
安保3文書に盛り込まれた敵基地攻撃能力(反撃能力)について、憲法の範囲内で「専守防衛の考え方を変更するものではない」と解説。その根拠に「(敵基地攻撃は)法理的には自衛の範囲に含まれる」とした1956年の鳩山一郎首相(当時)の答弁を挙げました。しかし、59年に伊能繁次郎防衛庁長官(当時)が同能力の保有は「憲法の趣旨ではない」と答弁していますが、それには触れていません。
敵基地攻撃と「ミサイル防衛」を一体化させた「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)について、「イメージ図」を付けて解説。しかし、「イメージ図」には「迎撃部分」のみで敵基地攻撃能力に該当する長射程のスタンド・オフ・ミサイルを活用する場面は描かれていません。一方で、相手からの攻撃を最初に探知するのは「米国の早期警戒衛星」であることが示されており、日米一体の先制攻撃を含むミサイル網であることを浮き彫りにしています。
安保3文書の一つ「防衛力整備計画」に5年間で43兆円の軍拡方針が盛り込まれたことを受け、軍事費に関する記述を拡充。過去最大の6・8兆円の軍事費を計上した2023年度予算で「防衛費の相当な増額を確保した」ことに言及。同予算によって武器や弾薬の整備費、研究開発費などが急増したことを示すグラフを新たに掲載し、「成果」を強調しました。
軍需産業の生産・技術基盤を「防衛力そのもの」と位置付けました。英国、イタリアと行っている次期戦闘機の共同開発は「世界の安定と繁栄の礎となる事業」だと強調。「いかなる課題があろうと、事業の成功に向け官民オールジャパンの体制で取り組みたい」と明記し、「殺傷兵器」の輸出に道を開くことを狙っています。
また、自衛隊内の性暴力・ハラスメントが深刻な問題となっていることを受け、「ハラスメントを一切許容しない組織環境の構築」と題した項目を新設。元陸上自衛官の五ノ井里奈さんが性暴力被害を告発しても、適切な調査がされなかった事例を挙げ、「ハラスメント防止対策が組織全体まで行き届いておらず、きわめて深刻で遺憾だ」と明記しました。
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