プロのスポーツで世界の頂点を極め、それを維持することは、どの種目であれ、並大抵の努力で成し遂げられるものではない。特にボクシングの場合は、リング上の戦いの前に、減量という己自身との戦いで、肉体を極限まで絞り込む過酷な試練が待ち受けている。平均して5㌔、多くて10㌔の減量といわれる。
写真(3月30日付『讀賣新聞』第23面〈スポーツ〉から転写)は、WBAフライ級タイトルマッチの5ラウンドに、チャンピオン・坂田健史の右フックが挑戦者・山口真吾の顔面を捉えた瞬間である。坂田の右腕は必要にして最小の筋肉の固まりである。これほどまでに贅肉を削ぎ落として、ようやくボクサーとして戦える体になるのだ。
雑誌『諸君!』第39巻・第12号の<紳士と淑女>欄は、例の亀田大毅と比較するため、平成19年10月2日付『毎日新聞』夕刊に掲載された、元WBAジュニアフライ級世界王者・具志堅用高(十三回連続防衛)の「減量中の千切りキャベツの味」に言及し、「減量中のキャベツは特にうまい。甘かったなあ」と引用している。「食べたいときに食べられない」ことはさぞ苦しかったことだろう。
坂田と山口の鬼気迫る戦いに観客は興奮するのだが、勝っても負けても、選手の身体に蓄積されるダメージは如何ともし難い。「このような危険なスポーツは廃止すべき」という意見が出るのも頷ける。
坂田はスロースターターで、3ラウンド(ダウン)までの劣勢を、4ラウンド以降の接近戦で積極的にポイントを重ねて盛り返し、3?0の判定で三度目の防衛を果たしたが、序盤戦の劣勢をいつも挽回できるとは限らない。これが命取りになるかも・・・
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