ひねもす日報

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太陽の墓場(1960年)

2009年07月20日 | 本・映画
 博多に帰ったときに、何かサラーっと読める雑誌はないかと、久しぶりにテレビブロスを買った。昔からだいすきな山田広野監督が連載をしていたからだ。
 その号で広野監督が紹介していたのが「太陽の墓場」。広野氏のあの独特の声が聞こえてきそうな文章で書かれたそれがとても気になった。「ドヤ街に咲く一輪の花」「あの時代にこの映画を撮り得た大島渚はすごい」。今月池袋で公開とあったので調べると、昨日のみ上映。これは行くしかないと新文芸座へ。映画館の「文芸春秋SPECIAL-映画が人生を教えてくれた-」の中のひとつとして上映されていた。
 とにかくグっときた。カメラワークは、現代映画では見られないようなものがいくつもあって面白かった。今のようにCGやハイビジョン対応の化粧品がない時代。ぶっといアイラインと口紅だけで勝負する女優の潔さ。戦後混沌としたドヤ街。食べることだけで精いっぱいな時代にたくましく生きるヒロインをこのように描き得るとは。ラストシーン。ヒロインが生きるための金を稼ぎに医者の手をひき歩き出すシーンの生命力と美しさ。たくましく、情もあり、美しく、タフで、頭を使い、非合法に血液を売ってそこいらの男より稼ぐ。「女性は強く美しい!」なんていう現代女性誌がばかばかしくなるほどのヒロイン。映画中なかだるみ一切なしの話。こんな面白い映画があったとは!
 文芸座は初めて行ったけれど、昔のパンフレットやオールナイト上映もしていていい映画館。今日は「の・ようなもの」。これも面白いんだよなー。来週末は「大友克洋ナイト」だって。AKIRA映画館で観たい!!これ、マンガの方がいいっていう声たくさんあるけれど、アニメはアニメで十分あの時代衝撃的だった。
 いい映画館でいい映画。池袋まで行った甲斐あり。

 行きがけは「椎名誠/続岳物語」を読む。岳物語よりも、主人公が椎名おとうから巣立ってしまう年頃を描く。これがいいんだ!野田知佑氏のあとがきから読んだのだけれど、もう涙。電車内だったのでどうにかこらえるも、鼻水。セガレがいる身として、いつかこやつが巣立ってしまうことをしっかり認識しながら育てたい自分には、もってこいの一冊。あとがきと岳の中学入学式の文章で余りに感動したので、その後の映画がこれ以下だったらどうしようと思った。

 とんちピクルスの「君の手」の歌詞が、急に耳に入ってきた。今まで何十回と聴いた氏のCD。「まるで睨む仕草で 君の手を見ていたよ」「まるで祈る気持ちで 君の手を見ていたよ」。こんな歌詞を甘ったるくせず書き歌い続けるとんち氏やっぱりすごい。
コメント (3)
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