NHK番組改編事件判決について、自民党は、そのHPに次のようなまったく市民を馬鹿にした
コメント(←クリック)を載せている。
【昨日の東京高裁判決でも両議員がNHK職員を「呼びつけた」ことや「政治的圧力を加えた」ことは明確に否定され、ここにおいて朝日新聞の報道が虚偽であったことが再確認できました。
判決は、(1)面談がNHK予算の説明であり、両議員が呼びつけたことはないこと、(2)中川議員については番組放送前にNHK担当者に意見を述べたことを認めることは困難であること、そして、(3)面談の際、「一般論として(公正・中立にと)述べた以上に本件番組に関して具体的な話や示唆をした」ことなどの事実は認められない、と明確に述べています。
以上のとおり、今回出された判決によっても、両議員が番組内容に関して政治介入などしていないことが極めて明確になったわけであります。】
公党がこのような言い方をする厚顔無恥さには恐れ入る。
今回の判決(←クリック)については、政治家として真摯に反省する必要があるのであり、免罪符のように解釈する余地はまったくない。
まず、【(1)面談がNHK予算の説明であり、両議員が呼びつけたことはないこと】について、判決は次のように認定した。
【同月25日から26日ころ, 上記担当者らは, 古屋圭司, 平沢勝栄,荒井広幸ら自民党総務部会所属の複数の国会議員を訪れた際, 本件番組に関し, 同議員らから「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」所属の議員らが一審被告NHKにおいて女性法廷を特集した番組を作るという話をしているのを聞いたけれどもどうなっているのかという質問を受け, その説明をするようにとの示唆を与えられた】(判決45頁)
当時、安倍は、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長であり、中川は代表であった。
判決は、安倍、中川が直接、NHK職員を呼びつけたとは認定していないが、間接的に、安倍、中川がNHK職員を呼びつけたことは認定したわけだ。つまり、古屋圭司, 平沢勝栄,荒井広幸ら自民党総務部会所属の複数の国会議員が、安倍、中川のところに予算説明に行く際には、【その説明をするように】と言った。だからこそ、NHKは普段予算説明に行く担当者以外に、女性国際戦犯法廷の番組の制作責任者である松尾放送総局長を安倍の説明に連れて行ったのだ。
少なくとも、公党たる自民党は、古屋圭司, 平沢勝栄,荒井広幸ら自民党総務部会所属の複数の国会議員が、NHKが制作している一番組について、放送前に説明するように求めたことについて反省をするべきなのだ。
古屋、平沢、荒井がしたことは、オウムがTBSに取材された後で、番組内容を見せるよう迫ったことと比較すれば、いかに報道の自由を害するものであったかが分かるはずだ。TBSは、オウムに放送前に番組をオウム関係者に見せたことにより次のような経過を経たうえ、担当者を厳しく処分した。
【1996年3月25日:TBSの磯崎洋三社長、坂本弁護士のインタビュービデオを、オウムの早川たちに見せたことを認める内容の記者会見を行う。
1996年3月28日:TBSの大川前常務、衆議院法務委員会で陳謝。
1996年4月2日:TBSの磯崎社長ら、衆議院逓信委員会に参考人招致。
1996年4月3日:TBSの磯崎社長ら、衆議院逓信委員会に参考人招致。
1996年4月30日:TBSは坂本弁護士のインタビューテープ問題についての社内調査概要など発表、19時00分から19時20分まで磯崎社長による社告謝罪番組「視聴者の皆様へ」、19時20分から23時00分まで検証特番「証言」を放映。ビデオをオウム幹部に見せた曜日担当プロデューサーは懲戒解雇】(
ウィキペディア「TBSビデオ問題」)
NHKも説明に行った松尾や松尾を連れて行った野島担当局長に対し厳しい処分をとるべきだし、自民党は、そのような行為をなさしめた古屋圭司, 平沢勝栄,荒井広幸に対し、厳しい処分をとるべきなのだ。
次に、【(2)中川議員については番組放送前にNHK担当者に意見を述べたことを認めることは困難であること】については、まさに、「困難」だと言っているだけで、そのような事実がなかったと言っているわけではない。
判決は次のように言う。
【また, 一審原告らは, 中川議員が事前に一群被告NHKに対し放送中止を求めたと主張し, 甲179の1,2によれば, 同議員は, フジテレビ番組におけるアナウンサーの質問に対し, 放送法に基づき公正に行うべきことをNHKに申し入れたと発言する等, 事前の一審被告NHK担当者との接触を窺わせる発言をしていることが認められる。しかしながら, 同議員は, 同インタビューでは平成13年2月2日に会ったことを明言しており, また, 野島の供述や伊東の陳述書(乙19) もこれに沿うのであり,上記発言に依拠して同議員が番組放送前に一審被告NHK担当者に番組について意見を述べたことを認めることは困難である。】(判決61頁)
これって、どうも事前に会ったくさいんだけど、関係者が口裏合わせているから、ちょっと事実認定することはできませんっていうことだ。
仮に、判決がそこまで言っているとは解釈できないとしても、【事前の一審被告NHK担当者との接触を窺わせる発言をしていること】は認定されており、放送の自由に関わる重大な事項については、「李下に冠を正さず」の姿勢で臨むべきであり、そのような慎重さを欠き、放送局の信頼を失わしめた中川の行為については、反省を迫るべきであることは明白だ。
そして、【(3)面談の際、「一般論として(公正・中立にと)述べた以上に本件番組に関して具体的な話や示唆をした」ことなどの事実は認められない】という点だが、正確には判決は次のように言っている。
【同月26日ころ, 一審被告NHKの政治部出身の松岡重臣総合企画室担当部長が一審被告NHKと安倍官房副長官との面談の約束を取り付け,同月29日午後,首相官邸内にある官房副長官室において, 松尾と野島及び松岡が, 安倍官房副長官と面会した。その際, 野島が一審被告NHKの新年度予算について一般的な説明をした後, 松尾が本件番組について女性法廷が素材の一つであり, 4夜連続のドキュメンタリー番組ではないとの説明をした。安倍官房副長官は, 松尾らに対し, いわゆる従軍慰安婦問題について持論を展関した後, 一審被告NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した】(判決45頁)
安倍は、放送内容について説明を受けた後で、持論を述べて、公正中立に報道すべきだと言ったのである。順番が逆ならまだ安倍には言い訳の余地がある。しかし、安倍は、番組内容を聞いた後で、その番組について、【持論を展関した】うえ、【公正中立の立場で報道すべきではないか】と言ったのである。この安倍発言は、【NHKが放送しようとしてる番組は俺様の考えとは違う。俺様のような者のことも配慮し、公正中立なものにしろ】と解釈するほかない。安倍はNHKに圧力をかけたのだ。
だからこそ、
【 松尾は, 朝日新聞の記者に対して,「先生はなかなか頭がいい。抽象的な言い方で人を攻めてきて。 … 「勘ぐれ, お前」みたいな言い方をした部分がある」, 「力によるサジェスチョン。それを一方的に与える」等と発言し, また, 野島は自民党の言うことを聞かないと予算もゴチャゴチャ言ってこられると心配したのではないかとの質問に対し, 「それは, ないと言えばウソになる。」と答えた】(判決60頁)のだ。
自民党のHPのコメントの開き直りぶりは、柳沢厚生労働相の「子供を産む機械」発言にも通じる。しかし、このような重大な問題(新聞批判)について、松浪健四郎を座長にした委員会に検討させること自体が世間をなめている。本来であれば、座長は法律家出身議員とすべきであるはず…。それでは、思うような結論を出せないことから、法律とは縁の遠い松浪を座長にしたのだろう。
参院選で、自民党を痛いめに遭わすしかない!そのためには、いまから、この問題について、自民党に抗議し、野党に国会で自民党を追及するよう要請し、マスメデイアに自民党を批判するよう求め、このことを「風化」させないようにさせなければならない。いま、電話をかけてください。
なお、【関西テレビ放送の情報番組「発掘!あるある大事典」のデータ捏造(ねつぞう)問題で、総務省は2日、制作を外注した番組のチェック体制などについて、主要民間放送局15社とNHKからのヒアリングを7、8日に実施すると発表した。安易な外注やチェックの甘さが捏造の一因とみており、再発防止に役立てたいとしている】(
共同・エキサイト)という。放送局への安易な行政指導は避けるべきだが、あるあるに指導するくらいなら、今回、編集権を放棄したに等しいとまで認定された(判決65頁)に指導してほしいと思うのは私だけではないはずだ。
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへは
ここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いは
こちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(
ここ←参照下さい)。