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今日の筆洗

2021年01月12日 | Weblog
 九日は「風邪の日」とされている。江戸の相撲で無敵だった横綱谷風の忌日が旧暦正月の九日だったことにちなむ。谷風が亡くなったのは、インフルエンザとみられる、たちの悪い「風邪」であったらしい▼江戸の商人が、値引きをせがまれて「うちは谷風だよ」と言えば、「まけない」を意味したとも伝えられている。「負けない」ことでは無双のお相撲さんでも、はやりの病が相手では話は別だ。風邪の日に込められたのは、感染症へのいっそう厳しい心構えであろう▼現代のお相撲さんたちが、新型コロナの第三波に苦しめられる中で、大相撲初場所が始まっている。濃厚接触を含め力士六十人以上が初日から休場した。取組は大幅に減っている▼上位陣も新鋭も見どころが多いと思われた場所である。二日目まで熱い土俵が多いのが救いではあるが、ぎりぎりの状況だろう。千秋楽まで無事を祈りたい▼力士が集まって戦うことの難しさを見るにつけ、どうしても頭をよぎるのは、開幕まで半年に近づいている東京五輪への道のりだ。時間はあるようで、まだ代表が決まっておらず、選考の場を残す競技も多い。感染の先行きがはっきりしない中、海外の国々が、無事選手を選考できるのかも気がかりである▼課題が多い五輪であるが、選手選考がうまくいくか否かは、大会の権威に関わる。まけてはならないところである。

 


今日の筆洗

2021年01月11日 | Weblog

「雨の日の結婚式は幸せな結婚をもたらす」。フランスのことわざだそうだ▼縄の結び目が水にぬれるとほどけにくくなるように、夫婦の絆も雨によって固くなり、離れることはない。そんな言い伝えらしい。雨は神さまが二人に代わって泣いているためであり、その分、二人はこれから泣くことはないという解釈もあるそうだ▼気休めにこんな話を持ち出したところで慰めにもならないか。結婚式ではなく、成人式。晴れの門出ぐらいはすっきり晴れてほしかったが、新型コロナウイルスという「大雨」の中で迎えることになった今年の成人の日である▼感染対策上、やむを得ず、成人式の中止や延期を決めたところも相次いでいる。新成人やわが子の大人への仲間入りを祝いたかった家族には、お気の毒な門出となった▼本日、あのことわざを引いたのにはもう一つ理由がある。内容よりもことわざができた理由や背景を想像してみる。おそらくは困っている人への慰めだろう。青空の結婚式を望んでいたが、雨になってしまった。それでも、その雨に何か良いことや前向きになれることを考えだし、雨に浮かぬ二人を励ましている。あのことわざは、やさしい▼人の痛みや悲しみを理解する。なんとか知恵を絞って元気づける。大丈夫だよと声をかける。そういう大人が一人でも増えれば世の中は明るい。成人の日おめでとう。


今日の筆洗

2021年01月09日 | Weblog
 「米社会の深刻な分断とその分断を抑えられなかった結果である」と厳しく断じている。米連邦議会を襲ったあの暴力を中国のメディアはどう報じているのか知りたくて、グローバルタイムズのサイトをみた。中国共産党機関紙・人民日報系の英字紙だ▼辞書を手に読んだ社説には「分断は深刻すぎる…影響は長く残るだろう」ともある。いかにもとうなずいたが、その先で展開されるのが、米国の二重基準への批判である。香港では暴力的行動が「美しい光景」として描かれるのに、米国では混乱に関わった人が、「暴徒」と呼ばれると▼香港に関し、民主派弾圧と批判する資格は米国にないという主張だろう。連邦議会の暴徒と香港の民主派を一緒にしてはならないと思うが、米国の混乱をしたたかについた主張にもみえる▼香港で起きている事態には、当局のしたたかさを感じる。権力移譲をめぐって米国が混乱し、人権にうるさい欧州の国などが、自国のコロナ禍で「余力」をなくしている時機を狙っているようだ。香港警察は先日、民主派の元議員らを実に五十人以上、香港国家安全維持法違反の疑いで逮捕している▼過去最多の人数という。多くが保釈されたようだが、法施行から半年あまりで、速く、ときに静かに一国化が進む▼「暴徒」と並べられた香港の民主派は非難の声を上げている。米国の混乱は逆風であろう。

 


今日の筆洗

2021年01月08日 | Weblog
  雪の中のツルが長い首をすっぽりと羽の中にしまい込み、凍ったようにじっと動かないで、片足で立っている。そんな姿を写真などでごらんになったことがあるだろう。「凍鶴(いてづる)」という▼<身一つに耐へて凍鶴眠りけり>永井東門居。防寒の知恵なのだろう。ツルの体温は四〇度と高く、ああしているとそれなりに温かいのかもしれぬが、微動だにせず風雪に耐える孤独な姿を見れば、こちらが凍えてくる▼どうやら、われわれが再び「凍鶴」になる番がやって来た。新型コロナウイルスの「吹雪」が強まるなか、政府は東京など一都三県に二度目の緊急事態宣言を発令する。不要不急の外出は控えるよう求められている。気うつだが、あの瑞鳥を習い、なるべく動かず、耐えるしかあるまい▼二度目である。最初の緊急事態宣言下での教訓を生かしたい。あの時、気分の重かったのは流行語にもなった「自粛警察」か。無論、自粛は大切だが、それを守らぬ人や感染者を必要以上に非難し、攻撃するような振る舞いだけは控えたい。人には事情がある。吹雪の中、自分の心まで冷たくしてはなるまい▼期間は二月七日までという。延長もあり得るが、この期間の辛抱がやがて実を結び、感染拡大に歯止めがかかると信じ、落ち着いて、日々を過ごしたい▼<凍鶴が羽ひろげたるめでたさよ>阿波野青畝(あわのせいほ)。春。羽を広げる日は必ず来る。