次の時代に引き継ぐこと

私は私の人生を生きている。と同時に、私は「命」を引き継ぐ者として、時代を担って生きなければならないのかもしれない。そんなむずかしいことを毎日考えていても仕方ないのだけれど、今日はふとそんなことを考えた。

ひとつは、NPO法人の理事会にて。
私は、埼玉県の就労自立支援NPO法人「ラナップ」の代表理事をしている。「就労自立支援」という言葉は簡単だけれど、まあ、いろいろと奥が深く、また、理念を事業化して継続することの難しさや「NPO法人」という組織の運営の難しさに苦悩している毎日。（まあ、悩み苦しんでいるわけじゃないから「苦悩」でもないけれど）。その理事会で、女性の就労支援事業の話しになった。

話題は議題からそれ、女性が働き続けられる環境についての話しに。自分たちのおかれた状況やら、今の社会環境やらについて次から次へと「思い」が述べられる。「自分（妻）の親が近くにいるから」とか「独身だから」とか「子どもがいないから」とか、そんな理由が働き続けられる環境としてあげられている現実。それ自体が、おかしい。男性が働き続けられる理由として同様の理由を当てはめられることはない。逆に男性は「妻のため」「子どものため」に好きでもない仕事であっても家庭の経済を守るために働け、と言われる社会。

男にも女にも、自分の能力を活かして働きたい人に最善の機会が与えられていない日本の社会はもったいないことをしている。もっと、様々な「かたち」が認められていい。人材の無駄遣いは国家の不利益だ。社会を生きるひとりの「人間」として教育している自分の娘。彼女たちが大人になる時代にもこのような男と女の現実が変わらないとしたら、それは嘆かわしいこと。社会が変わらないとしたら、娘たち、自分の能力をこんなにも必死に磨いている彼女たちの苦労は目に見えている。日本になんかいるな。生きやすい場所へ、行っていいぞー。

ほんとにこんな社会でいいのだろうか。
理事会、熱い思いを語る言葉は途切れない。

私は、この議論を聞きながら、ごめん、笑ってしまった。
嬉しくて、笑ってしまったの。だって、NPO設立準備段階も含めると早５年。これまでの間、私はずーっと私の口でこのようなことを言い続けてきた。これからの社会は、これから私たちの手で作っていく。先輩方に敬意を抱くからこそ、私たちの世代が守るべきものは守り、変えるべきことは変え、そして未来に引き継ぐ。

今日は、私以上に皆が話していた。
呆気に取られてしまい、つい笑顔に。その様子を見ながら、多くの人の力を借りてこれから先3年くらいかけて、私はきっと多くの人が、見えない呪縛から解放されるとても素晴らしい事業が展開できる気がしてきた。やってやろう。必ず。

もう一つは、自然環境について。
埼玉で大宮公園への散歩からスタートした一日。充実した一日を過ごし、群馬の田舎にある自宅へ帰ってきた。近くのスーパーでちょこっと買い物をして、ついでにいつもの温泉でお風呂を済ませる。露天風呂から暮れかかる空を見上げて、青が移り変わる美しいグラデーションに見入る。木々の紅葉や桜の葉の緑が、この間よりもグーンと濃くなった。

温泉から自宅まで、わずか5分。
その間、田んぼの中の狭い道を車で走る。カエルが鳴いている。5月の始めに植えたおばあちゃんの畑のキュウリの苗が、50センチにも伸びていた。

自然って、なんて力強いんだろう！
感動。私のために「自然」があるのではない。私はこの「自然」を借りて生きている。その力強い堂々とした美しさに感動している私の前を、シジュウカラが、チョコチョコチョコっと足早に横切った。かわいい！

人間、傲慢になってはいけない。
人間が、たまたまこの自然を間借りしているだけなのだ。私はこの美しい自然環境を、次の世代にきちんと引き継ぎたい、と思った。

次の世代に何を引き継ぐのか。
20代、30代、40代。もう、子どもじゃないんだ。今、私たちにはいろいろなことができるのだから、自分や自分の家族のことだけでなくてもっと大きな視野で自分が生きる意味を考えてみてもいいんじゃないかな。

【今日の言葉】
『芸術も栄光も、自由もいつかは消える。しかし山々は、いまだ美しい。』
バイロン

【写真】地球。

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