発注者への気遣いは、とにかく細心の注意が必要だ。 へそ曲がりな役人にわずかでも粗相すれば、即、指名から外される。
『ある日突然仕事が来なくなり、5年以上も指名に入らない知り合いの会社があった』。 地質測量などをやるコンサルタント会社経営者の話だ。 知り合いの先生を使って調べたら、指名を外した課長が転勤するとき、申し送り事項として次の課長にも伝えたため、5年以上も数珠つなぎに続いたそうだ。 しかも、『ゴルフ場であいさつをしなかった』のが理由だという。 コンサル社長は単純に気がつかなかっただけのようだが、そうだろう。 発注者を無視すれば、どんな目にあうか、みんなよく知っている。
絶対つぶれない者が一番強い。 そして、権力者は必ず、自ら有利なように権力を使う。 古今東西の歴史法則のようなものだ。
県内大手業者の専務で、談合を専門にやっていた故人は、『積極的にたかってくるのは少数派だが、袖の下を拒否する役人は、ほとんどいなかった。とくに、教育費がかかる幹部クラスほど現金をほしがった』と語っていた。 現金ほど直接的じゃなくても、ご機嫌をとる方法はいっぱいある。 スーツ券や商品券、高級酒、吉原接待などなど。 あと、高級魚介類や農産物の贈答も多かった。
地方の土建屋には、農家や漁師を兼業している社長、従業員も多い。 昔は、収穫期や漁解禁時になると、『所長様』、『課長様』などと書かれた、段ボール山盛りの果物やバケツ山盛りのウニ、アワビが事務所前に並んだものだ。 最近は表立ってやれなくなった代わりに、もっとえげつない裏営業が行われているという。
発注者の悪口ばかり書いて見苦しいが、政官業三者の中で、もっとも弱い業者の言い分が、公に取り上げられることがない。 地方の中小業者社長のほとんどは中高卒で、自らの正当性を主張する論理的武器も持っていない。 ところが、談合が世間で騒がれると、基本的に業者が悪人で、発注者は善意の被害者のような構図が出来上がってしまっている。 どうか、ご寛恕いただきたい。
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