ただし、いつ倒産するかわからない中小零細では、終身雇用制はほとんど採用されなかった。 普及したのは、絶対倒産のない親方日の丸の公務員と、まず倒産はありえなかった大企業だけだった。 基本的な価値観の逆転が起きない、安定した環境が絶対条件なのである。 しかしバブル崩壊後、上場企業の倒産も珍しくなくなると、大企業でも廃止するところが多数出てきた。
先憂後楽という年功序列賃金は、終身雇用が絶対条件である。 安い給料で、二十代、三十代はほとんど家にも帰らず滅私奉社し、四十代後半から若い時の赤字分を回収する給与体系は、途中入社は社員に、途中退社は会社に有利すぎる。 だから、新卒一括採用そして定年まで同じ会社に奉公することが、社員会社双方にとって都合のよい制度だった。 社員にとっては、将来の安心。 会社にとっては、社員の忠誠心を保証してくれた。
ただし、終身雇用制をもって、競争がないなどと言う、バカなことを言うつもりは毛頭ない。 同期入社の中で、部長、取締役そして社長と残っていくためには、40歳ころまでは、本当に社畜といわれるような滅私奉社が必要だ。 これは官僚組織でも全く同様である。
国家一種試験に合格して官庁回りをした時、『霞が関から自転車で通勤できる距離にアパートを借りなさい』とアドバイスされた。 30歳中ごろまでは、終電前に帰れることはほとんどないからだった。
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