大学院時代の恩師は、政府委員を務めるほどの権威だったから、研究室名を冠した名刺は水戸の印籠のようだった(拙著を読了していない方にはネタばれです。ごめんなさい)。 資料を集めるために霞が関を訪問した時には、ショートケーキと紅茶が出てきたが、家業を継いで土木事務所に行ったら、とんでもないものが出てきた。 机に置いた名刺の上に出てきたのは、水虫薬を塗ったばかりの素足だった。 この人は特別ひどいうちの一人だが、肩書きで世間がこれほど変わるものなのか、良い勉強になった。
市長選で召集された時の選挙参謀の豹変ぶりも勉強になった。 取材記者が、土建屋たちの集合部屋にいた時は敬語を使い、深々と頭を下げて記者を見送ると、振り向きながら『おめーらなー』と気合を入れられた。 官製談合真っ盛りの10年以上も前の話だが、業者など政と官、とくに親方日の丸に比べれば微々たる微々たる存在である。 倒産も失業も落選もない、合法的独占者にだれも逆らえない。
ところが、日本のメディアは当局の言い分だけ取り上げ、弱い弱いものたちの主張が報道されることはほとんどない。 仮に機会があっても、拙著出版のように、実名発表の玉砕覚悟でなければ見向きもしない。 日本では官が完全匿名だが(当局責任者の名前が報道されることすらない)、欧米では丸裸にされる。 当局の責任者は実名、経歴はもちろん、個人の趣味まで報道され、権力執行者の素顔が知らされる。 権力を監視し、国民の知る権利にこたえるためである。
強い奴にしっぽを振り、弱い奴に咬みつくのが、戦略的に賢いやり方だが、単眼主義の彼らにはそのような自覚もないだろう。 いじめっ子にも、いじめている自覚がないように。
報道関係者や先生と呼ばれる人たちに世間の実相はわからない。 世間が本心をださないから。 せめてこれくらいの自覚はほしいが、無理だろうなー。 自分自身がそうだったから。 よく言えば世間知らずなお人好しで、個人的には本当にいい人たちが多いのだが、現実のとくに危急の指導者としては困ったものである。 高校時代の恩師も、人間としては尊敬しているが、大人になって付き合ってみると本当に純粋すぎる人だ。
そして、新聞を毎日読む人たちも、先生か、一つの職業一つの組織に専心する高学歴者がほとんどだから、単眼主義者同士共鳴し合い、世間知らずな理想論で、現実と格闘している者(民間企業、政治家)を糾弾する。
今日も読了ありがとうございました。 おやすみなさい
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