ハリソンさんはカノ紳士 ーフランス通過編 ー(後半)

今は昔の18世紀欧州が舞台の歴史大河ロマン。

牧歌劇「アミンタ」はモーツァルトも作曲ネタにしてる?

2023年05月02日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の5】

 その後、
タッソは自作品が実際は高評価なのに
異端審問に引っかかるのでは?
とビビり続け、
狂気の高まりが抑えられずに
突発的奇行を繰り返しては罰せられ、
一つ所に落ち着けない旅ガラスとなり。
桂冠が贈られたのは永眠後でした。

 それから170年後の1765年の夏、
ハリソンさんはロンドンで
友人夫婦とコンサートへ行き、
まだ子供の頃のモーツァルトの演奏を
聴きます。


▲ 前編15-3より


 更に10年後の1775年、
ザルツブルクにハプスブルク家の皇子が
立ち寄り、歓迎のために演奏会形式の
オペラが上演されました。

 そのモーツァルト作曲のオペラが
「羊飼いの王様」といい、
主人公の名がアミンタというのでした。

職業も牧畜業で同じです。

 が、同じなのはここまで。
ヒロインは妖精のシルヴィアでは無く、
貴族の姫君エリーザ。

 牧歌劇「アミンタ」は
ギリシャ・ローマ神話の世界観を
引き継いだ北イタリアの緑生い茂る
郊外の雰囲気で、
時代もハッキリしていない。

 オペラの方では
紀元前4世紀の
中東にあるシドン市中と周辺の
田園地帯が舞台とされている。

 そして、恋人達を散々悩ましておいて、
最後に結び合わすのは
アレクサンダー大王なのだった!

 大王が遠征中に征服した。
フェニキアの中の都市国家シドンの
僭主に変わる人物として、
元王家の血を引くアブダロニュモスを
探し出して新王にしたという
史実の資料に基づいて、
メタスタージオ翁が書いた
台本を更に改作してから
モーツァルトが曲を付けたのでした。

 史実ではアブダロニュモスは
貧乏暮らしではありましたが、
羊飼いでは無かったようで、
庭師だったという絵が残っているとの事。

 18世紀には「田舎で牧畜しながら
のどかに暮らしたい」という考え
(現代の「都会を出て田舎で農業して暮らしたい」
みたいな―か?)があったらしく
史実と時代の理想を取り混ぜ、
「羊飼いなら名は有名なアミンタで行こう!」
更に話を面白く盛るため、
アミンタにはアーサー王伝説にでも
出て来るみたいな出生の秘密も付け加えよう!
―となったのでは無いかと思われます。

 確かにアミンタ同士、
どちらも恋愛に対して諦めの悪い所等、
性格はそのまんまなようですが…。

 とはいえ、
「羊飼いの王様」の原作が「アミンタ」だと
言うには薄まり過ぎたといった感じです。


 原作だったとしても、
タッソとの間にアレクサンダー大王や
アブダロニュモス、メタスタージオが入り、
最後には「どんなに人真似しても
自分の世界になってしまうモーツァルト」

が来てしまっちゃあね〜!?

 全然別物になってしまうわな〜こりゃ!

 以上が牧歌劇「アミンタ」についてでしたが、
いずれこのブログの本体の話とも繋がって行く
事になるでしょう。

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