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美篶芦沢の「道祖神講」へ

2025-02-09 23:23:05 | 民俗学

道祖神講(令和7年2月9日)

 

 伊那市美篶芦沢の道祖神講にうかがった。美篶芦沢の道祖神建立の背景で詳細を触れているが、実際の講がどのように行われているか見てみたかった。午後6時に講員の方たちが集まり講は始まる。講といっても懇親会が主たる中身である。

 集まった人たちは、各々床の間に掛けられた「道祖神」の掛軸にお参りする。掛軸の前にはお神酒と洗米、塩が供えられるが、お神酒と洗米については、当番の方が実際の道祖神に供えておき、講で披露される。お神酒で献杯となるが、そのさいのお神酒は、昼間道祖神に供えておいたお神酒が使われる。掛軸にお参りすると、線香に火をつけ線香立てに立てられる。道祖神なのに線香を立てる理由は、講員の方たちも知らない。聞くところによるとこの地域では秋葉講も行われていて、その際にも線香を立ててお詣りするのだという。掛軸にお参りをすると、席に着くが、年配の方が上座に座り、若い人ほど下座に座る。7軒あった講員は一昨年一方が退会されて、現在は6軒となった。みなが集まると講の始まりとなるが、当番の方が挨拶をされて、長老の方の発声で献杯となる。あとは直会となり講を終える。

 現在は公民館で行われているが、元は当番の家を巡回していた。当番の方を「オトウヤ」と言ったらしくオトウヤでは必ず芋汁を作ったという。先ごろ高遠町藤沢の荒町の山の講を訪れたが、その際にも芋汁が必ず作られた。芦沢のこの講の方々に山の神のことを聞いたが、ここでは山の講は行われていない。

 オトウヤに渡される道具類の中に、「道祖神講」という講のやり方を記した紙がある。道祖神へのお神酒と洗米を供えた写真、床の間に飾る掛軸と供え方の写真の2枚が貼られ、①会費は2000円、②来た人からお茶を出す、③お神酒で献杯(音頭は長老)と記されている。講仲間は後から加わったNさん以外は屋号で記されている。表紙に昭和10年2月8日と記しの入った道祖神講の帳面があり、記されているのは会計簿である。古い記述かをうかがうと、オトウヤのことを「宿」と記しており、「御当番」とも記されている。昭和10年にはすでにNさんは加わっているようで、当時も7軒が講員だったよう。戦時中も講は実施されている。なお、もともとは2月8日に行われていたものだが。現在はその日に近い日曜日にあてられている。こと八日にあたるが、この日を「コトヨウカ」とは言わずに道祖神のお祭りの日と言っている。現在参加される長老の方も経験はないというわら馬を作って道祖神にお参りしたという習俗が、昔はあったという。

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