Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

オモテ玄関

2020-10-18 23:54:06 | つぶやき

 わたしが生まれ育った空間のことについて説明した記事といえば、平成18年1月11日に記した「飯島町のこと」が具体的だ。ここに映る中央アルプスの峰々は、わたしにとっては象徴的な姿、形である。このことについてはその後にも何度か記してきたこと。象徴的な姿、形に捉えるのも、自らの育った環境によるが、何よりも生活空間の方向性にかかわる。生家での表玄関を出ると、そこにそれらの峰々はなかった。トオリを抜けて、裏口に出るとその姿が望めた。朝陽がのぼる表玄関側に、明るいイメージはあったが、陣場形山(実際は飯沼山といっただろうか、前山である)が接近していて、常に朝陽ののぼるのは遅かった。少し窮屈なイメージの表玄関に対し、裏口を出ると開放感のあるこの景色が望めたわけである。確かにわたしにとってのオモテは窮屈なイメージの山裾の光景だったが、だからこそ正反対の開放感を印象付けてくれる、裏口からの光景は、記憶に強く残ったのである。朝陽が東からのぼるのは当たり前で、生家のあたりでは、当たり前のように玄関は東を向けることが多かった。かつての家は、効率性や利用性以上に方角を重視した。したがって、玄関をあえて陽のあたらない方へ置くことはそれほどなかった。それぞれのこころの中に疼く象徴性は、こうして暮らしの中の日常性から発したのかもしれない。

 つい先ごろまで「暑い」と言っていたのに、「寒い」を口にするころになった。気がつけば山々は冠雪である。昨日の冷たい雨は、山では雪だった。南アルプスも、中央アルプスもすっかり白くなった、と気がついたのは、山々を隠していた雲が峰々を露にするようにどいてからのことだ。夕方には、すっかりそれらの峰々が姿を現し、中央アルプスの峰々も白く姿を現した。

 わが家からは、生家で望んだような中央アルプスの峰々はのぞめない。そのいっぽう、生家からはまったく望めなかった南アルプスが見える。とりわけ表玄関を出、屋敷の入り口から望めるのは南アルプスだ。実際のところ仙丈ケ岳もよく望めるのだが、隣の家が邪魔をしていて、ふだんの暮らしの中で目に入ることはそれほどない。やはり屋敷の入り口から望む光景が象徴的な姿になるのは当然なのだろう。だからこそ、ふだんの暮らしの視線が自ずと自らのこころのイメージを形成していくということなのだ。

 

塩見岳

 

小河内岳

 

荒川岳

 

赤石岳

 

 夕方望んだその峰々を紹介しよう。まず北側(左)から1枚目の塩見岳である。標高3047.3メートル(国土地理院図)は国内16位。何と言っても尖がっているため、すぐにそれと解る象徴性の高い山だ。手前右端に映るのが本谷山(2658.3m)となる。続いて2枚目は冠雪のある今だからこそ象徴的に映る小河内岳(2802.0m)である。右側がそれで、左側の頂は前小河内岳(2784m)、左端の山が烏帽子岳(2726m)である。小河内岳といえば、その西側の裾に大鹿村釜沢がある。いわゆるリニアの南アルプス長野県側工事現場である。ということで、手前の冠雪のない山左手が大西山となる。

 3枚目は荒川岳である。右側から前岳(3068m)、中岳(3083.7m)、東岳(3141m)となる。最も高い東岳は悪沢岳ともいう。国内6位の標高となる。中岳も国内13位。4枚目は最も南に冠雪した山として映る赤石岳である。3120.5メートルということで、国内7位にあたる。右側の頂がそれで、左側は小赤石岳(3081m)である。これらがわが家からの現在のふだんの表玄関である。


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