弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
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東電OL殺人事件研究会 at 龍谷大学

2012-08-09 22:49:21 | インポート

Toudenol

   

先週、龍谷大学で開かれた刑事弁護実務研究会に参加してきました。

テーマは東電OL殺人事件で、弁護人を務められた神山啓史弁護士が報告をしてくださいました。

 

 この事件は、1997年3月に発生した強盗殺人事件で、ネパール人のゴビンダ氏が犯人であるとして起訴され、一審では無罪、控訴審で逆転有罪、無期懲役判決となり、上告審も棄却され、有罪判決が確定していました。

 ところが、再審請求の中で新たな証拠が明らかになり、6月7日に再審開始決定がなされ、先日、この再審開始決定が確定しました。ゴビンダ氏は、再審開始決定によって、15年ぶりにようやく家族の待つネパールに帰ることができました。

 

 再審開始決定の根拠となった新たな証拠は、被害者の体内に残っていた精液と被害現場に遺留された陰毛のDNA型鑑定の結果。

 精液も陰毛も事件直後から発見されていたものであり、捜査機関側は把握していたにもかかわらず、一審や控訴審ではその存在が明らかにされることなく隠され、有罪判決が言い渡されていました。

 東電OL殺人事件についてはこちら。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E9%9B%BBOL%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 

Syouko

日本の刑事裁判では、弁護人への証拠開示はいまだ限定的です。

事件が起こると、警察が捜査に乗り出し、ありとあらゆる証拠を根こそぎ収集していきます。

そして、その証拠の中から有罪の立証に役立つ証拠だけが裁判所に提出されます。

今回のように無罪を示す証拠があって、それは握りつぶされ、隠されてしまうのです。

有罪方向の証拠しか裁判所に出ないのだから、有罪判決になるのは当然で、そこに冤罪も生まれてきます。

裁判員裁判が始まって、一部の証拠については弁護側には開示がなされるようになりました。
しかし、未だにすべての証拠を開示することも、証拠リストを見せることもなされていません。

弁護側は、捜査機関に無罪を明らかにする証拠があっても、その証拠にはアクセスできないのです。  

東電OL事件は、当初から全面的な証拠開示がされていれば起きなかった冤罪事件です。

  

再審無罪判決によって一日も早くゴビンダ氏の名誉が回復されるとともに、

二度とこのような冤罪が起きないように、弁護側への全面的証拠開示制度が実現されなければなりません。

   

   


「息もできない夏」 ~民法772条問題~

2012-08-07 23:49:10 | テレビ番組

    

リーガル・ハイの後のフジ火9枠で始まった 「息もできない夏」

  

それまでの惰性で何となく見始めたのですが、テーマは 「無戸籍」

母親の事情で戸籍のない主人公(武井咲)が様々な生活上の支障を受けたり、夢まで奪われそうになってしまう。
熱を出したときにリンゴをすってくれた母親との思い出まで、健康保険証がなかったからだと気づき、すべて否定されていく。

というとても重いテーマのドラマで、健気な武井咲の演技が涙を誘います。

  

Ikimodekinainatu

    

さて、この「無戸籍」 法律の盲点ともいうべき欠陥で生じてしまいます。

民法772条は、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定し、また、婚姻解消の日から
300日以内に生まれた子も婚姻中に懐胎したものと推定しています。
子の福祉のために、早期に父子関係を確定させようという規定です。

      

しかし他方で、離婚成立前から夫と別居し、別の男性との間で子を懐胎した場合、
生物学的な父親は別の男性であるにもかかわらず、法的に夫の子と推定されてしまうため、
出生届を出すと血縁関係のない夫が父親になってしまいます。

   

生物学上の父親を、戸籍上も父親とするためには、

(1) 夫を相手方とする親子関係不存在確認の調停(または訴え)

(2) 生物学上の父親を相手方とする認知の調停(または訴え)

をしなければなりません。

(なお、婚姻の解消または取消し後300日以内に生まれた子のうち、医師の作成した「懐胎時期に関する証明書」によって、懐胎の時期が婚姻の解消または取消し後である場合には、前の夫を父としない出生の届出をすることができるので、裁判手続は不要になります。)

   

ところが、こうした手続をとると、夫に、子が生まれたことや現住所などを知られてしまうおそれがあります。

DV被害を受けていたなどの理由で、夫にどうしても知られたくないという場合には、手続をとることが怖くなり、結果として出席届を出さずに「無戸籍」になってしまうのです。

   

「息もできない夏」も、そうした原因で無戸籍になったという設定です。

木村佳乃さん演じる母親を見ているとイライラしてくるのですが、DV被害のトラウマというのはそれだけ深刻ということでしょう。

残念ながら、今のところ、このドラマには弁護士が登場しません。

こういう問題こそ、弁護士が力を発揮すべきだと思いますが。

最終回あたりに、突然、古美門登場・・・・なんてことはないですね。

   

民法772条は、1898年、今から110年以上も前にできた法律です。

近時のDNA型鑑定の進歩からすれば、生物学上の父親を確定させることは難しいことではありません。

いろいろな救済措置があるとはいうものの、今や必要性の薄れた民法772条は、見直すべき時期が来ているのかもしれません。

Baby

民法772条の問題について詳しくは法務省のHPへ

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji175.html

    

「息もできない夏」はこちら

http://www.fujitv.co.jp/ikimodekinai_natsu/index.html


どっちが辛い?夏はやっぱりカレーでしょ!

2012-08-07 00:18:54 | インポート

Photo

   

プロフェクト法律事務所の京都市営地下鉄の車内広告が8月1日から新しくなりました。

イメージは夏! 

刺激的な辛いカレー!を食べて元気を出そうと、こんなポスターを作りました。

  

パソコンで仕事をしていて、ワープロで「更新料」と入力しようとして、キーボードで「こ う し ん り ょ う」と打ったところ、ワープロが誤変換。

「香辛料」と入力してしまいました。

     

ビビビィー!

これを見た瞬間、夏のポスターはこれだ!! カレーでいこう!! とひらめきました。 

(こんなアイデアに頭を捻るのも弁護士である私の仕事のうち???)

  

どうです?

カレーは見ると食べたくなるそうですが、ポスターを見て思わず食べたくなりませんでしたか?

ポスターを見て、思わず法律相談したくなる人がいるといいのですが。 

   

ちなみにポスターに出てくる店は、こんなインド料理店がイメージです。

Dip Jyoti(ディップ ジョッティ)  (JR円町駅近く)

http://tabelog.com/kyoto/A2602/A260203/26018465/

  

もう一つの店は、

ナマステ (JR福知山駅前)

http://tabelog.com/kyoto/A2608/A260802/26019464/

 

ぜひ、お試しください。


たまの法律目線(ラジオ大阪)9月分を収録してきました!

2012-08-05 10:45:21 | インポート

   

Radio201208042

  

4月からオンエアの始まった、「たまの法律目線。はよ相談しなはれ!」も、2クール目の大詰め。

  

9月オンエア分を収録してきました。

私の回のテーマは、

高校生模擬裁判選手権(9/5OA)と、取調べ・留置場・拘置所・刑務所の実態(9/12OA)

  

昨日の収録日は、丁度、日弁連主催の高校生模擬裁判選手権の本番。

大阪大会には、京都からも京都教育大学附属高校と立命館宇治高校が出場。

5連覇を果たしていた京教に、立命館宇治が初めて勝利し、初優勝を決めたようです。

私も、2年前に立命館宇治に支援に行きましたが、その時は僅差で準優勝でしたが、とうとう念願の初優勝。本当におめでとうございます。

京教も、昨年と今年に、半日づつプレゼンを教えに行きましたが、さすがにチャンピオン!

高校一年生とはとても思えない分析力、論理力、表現力でした。

来年は、ぜひ、チャンピオントロフィーを奪還してください。

  

Photo_2

 

取調べなどの実態についても、話してきました。

カツ丼食べれるの? お菓子は? 本は? お金があった方がいいの?

椅子を蹴られたり、怒鳴られたり、卓上ライトを顔に向けられたり、母親の話をされたり、

テレビや映画と同じところ、違うところ、いろいろと話してきました。

もっとも、私自身は入ったことがないので、すべて入っている人から聞いた話ですが 

   

ラジオ大阪1314hzで、毎週水曜日19:05~19:20 オンエア中です。

第3クールへの(12月まで)延長も決まりました。

どうぞお楽しみ下さい。

  

Img_0420

   

 収録後に、みんなで焼肉に行きました。

 鶴橋デビュー!

 焼肉ってこんなに美味しかったんだと感動しました。


二人を処刑 ~マリと日本~

2012-08-04 07:26:50 | インポート

    

 8月3日のCNNニュースによれば、西アフリカのマリ北部を支配しているイスラム勢力が、不貞の罪に問われた男女を、イスラム法に基づき、石打ちの刑にかけて処刑したということです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120803-35020022-cnn-int

   

 同じ日、日本では、滝実法務大臣後初めて、強盗殺人などの罪に問われた男性二人を、絞首刑で処刑しました。

http://mainichi.jp/select/news/20120803k0000e010219000c.html

   

イスラム勢力のことを、野蛮で人権意識がないと軽蔑できるのか?

不貞と殺人、石打ち刑と絞首刑、裁判の手続 ・・・・ 違うところはたくさんある。

しかし、イスラム勢力もまた、彼らの価値観に基づき、正義を実現しているのではないのか。

日本も同じ。

一定の価値観に基づく正義を実現するために、人の命を奪っている。  

   

死刑を執行したのは、法務大臣でも、法務省でも、裁判所でも、検事でも、拘置所職員でもない。

すべての国民が死刑を執行した。もちろん、私も執行した。

人殺しの一人ではあり続けたくない。