文化の日の朝、思い立ったように、岩手県奥州市水沢区にある
みちのく曹洞宗の古刹「奥の正法寺(しょうぼうじ)」、天台宗の
古刹「妙見山黒石寺(こくせきじ)」などを訪れた。
奥の正法寺は、かつて永平寺(福井県)、総持寺(横浜市)と
ならび奥羽の本山として栄えた寺で、1811年(江戸時代)伊達
家により再建され、現在、国指定重要文化財となっている。
http://www7.ocn.ne.jp/~shoboji/
本堂から開山堂に上る廊下は、永平寺によく似ていて、開山堂
より望む、本堂の茅葺屋根、屋根妻飾りは必見である。
茅葺屋根は日本一の大きさらしい。また、棟に伊達家の家紋、
「九曜」紋「竹に雀」紋「三引両」紋がついていて、特に色の付いた
「竹に雀」の家紋は珍しい。
黒石寺は幾多の火災で消失し、その度に再建されてきたが、
現在の黒石寺は1884年(明治17年)に再建されたものである。
本尊は薬師如来坐像(862年作)で火災の度に難を逃れ、国指
定重要文化財となって今に至っている。
黒石寺蘇民祭りが有名で、旧正月に行われる裸参りでの蘇民袋
の争奪戦は圧巻で、福島県柳津の裸参りに良く似ている。
薬師如来坐像は、国指定重要文化財となっているためか、本堂
とは別棟のコンクリートの狭い部屋に鎮座していた。火災等から
保護するためとはいえ、あまりにも寒々としていて、可哀想でな
らない。仏様ご自身が寒さに耐えるのに精一杯で、広く民の病
まで庇護するに至らないのではないかと懸念する。
住職の話によると、薬師如来坐像を3.11大地震の時、支えて
転倒を防いだとのこと。
薬師如来坐像は、約千年前の貞観地震以来、大きな地震に二
回遭遇している。今回、転倒を防止したことで私の御役目を果た
したので、千年後の大地震が発生した時どうなるか、私の責任
ではないとお話されていた。
この後の行程は、「ホテルプラザイン水沢」和食処「きくすい」にて
食事。http://www.plazainn.jp/restaurant/kikusui.html
幕末の蘭学者高野長英の菩提寺「大安寺」、武家屋敷「内田家
旧宅」「後藤新平旧宅」を見学。
http://www.iwatabi.net/morioka/ousyuu.html
最後に伊達政宗の家臣後藤寿庵(ごとうじゅあん)遺跡「寿庵
堰」(大規模な用水路)現在もその跡が残る。「円筒分水工」
を見学し帰途についた。
http://www.isawa-heiya.or.jp/05guide/05_09.html
朝7時頃、自宅を出発、東北自動車道路一関ICまで約1時間、
正法寺には8時50分頃に着き、最後の「円筒分水工」を見学
して水沢ICに入ったのは16時頃。一日の小旅行としては、
手頃な行程であったように思う。
行程の途中には「猊鼻渓」があり、近くには、世界遺産の「中
尊寺」「毛越寺」そして「厳美渓」等の名所が散在する。
岩手県奥州市水沢が仙台藩の領地であったこと。かつて仏教
文化が隆盛し衰退してしまったこと。幕末、明治と活躍した
政治家など多くの著名人を排出していたことを改めて教えら
れた。紅葉にはまだ少し早かったが、文化の日に相応しい、
今回の小旅行であった。