ウルトラマンZの第12話「叫ぶ命」に衝撃を受けました。
大人向けかと思うほどシリアスに作られていて、驚きの内容だったからです。
どう驚いたかというと、怪獣の命について踏み込んだ台詞があったのです。
「被害が拡大する前に、キングジョーで殺すんだ!」
“殺す”とストレートに言う響きに、最初は違和感がありました。
子供向けらしくないからです。
もっとオブラートに包んだ言い方をしないと「教育上よろしくない!」と、うるさ型の視聴者さんにクレーム付けられちゃうよと思っていたんですが……。
私の心配をよそに、ドラマは構わず進みます。
「Z様(ウルトラマンZ)には頼らない……次は、私たちだけで!」
「うん、よく言った! その意気だ!」
――むむっ?
これは、ウルトラマン第37話「小さな英雄」へのオマージュ!?
イデ隊員が「ウルトラマンが居れば、我々科特隊はいらないんじゃないか?」と言ったことに対するアンチテーゼが出てくるんじゃないかと思ったら、やっぱり出てきました。次のシーンで。
「……本当に、怪獣を倒すことが平和を守ることなんですか?」
なんと、この台詞をウルトラマンであるはずの主人公が言ってしまったのです!!
(このエピソード回……すごくなりそう!)
私は、身が震えました。
「今この世界に、怪獣の居場所はない……かわいそうだけど……」
「…………」
「……だからこそ、誰かに押しつけちゃいけない。ちゃんと背負いたいんだ。命を奪う責任を――」
このシーン、グサッときました。
役者たちの演技も良くて、撮り方も雰囲気も最高。シナリオの台詞も余計な説明もせず短く決まっています。
地球で暮らす人類の問題だからこそ、宇宙人に押しつけちゃいけない。
怪獣の命を奪うという十字架(使命と覚悟)を背負いたい。
だから「殺す」というストレートな表現が、その前のシーンに伏線として出てきたんですね。
まさか、ここまでのセリフが出てくるとは思いませんでした――。
制作側の意図は深いところにあったんですねぇ……。
そのあとも、怪獣を殺すべきか迷うウルトラマンZ=ハルキの脳裏に、これまで倒した怪獣たちの姿が走馬灯のように甦るシーンには、シーボーズの回を思い出させました。
さらに怪獣は、人間によって利用されてきた存在。ここはジャミラを連想させます。怪獣が殺されそうになった直後に悲鳴をあげた(命乞いをした?)とき、私にはジャミラの顔が重なりました……。
脚本 根元歳三+武居正能 監督のコンビ、いい仕事しますねぇ~。
ウルトラマンZの12話って、怪獣と人間の共存共栄の流れに対して無情にも楔を打ち込んだと個人的に思いました。
地球上の生存競争があるため、人類の側から怪獣の存在は認められないという強い意志を示したこと。私たちも実社会では動物を食料として殺している以上、そこに異論は挟みにくい。
だからこそZの存在は揺らぐ。
――ウルトラマンの持つ正義とは何か?
私はそんなものを掲げてはいけないような気がします。
人間が好きになったから味方してるだけ。乗り移った人間の脳に刻まれた倫理観に従ってるだけ。
だからハルキが葛藤したらZの行動も能力も止まる。ハルキが結論を出さないといけない。Zは見守るだけ。
見守ってるけど、なかなか答えてくれない――。
そんな神様みたいな存在に近いのかな?
しかし最近はウルトラマンにも喋らせて会話している以上、脚本的にはZも考えを述べざるを得なくなります。ここを誤魔化すのか、真正面から斬り込むのか…?
ウルトラの歴史に、ひとつのテーゼを刻んで残すシリーズになるのか……?
個人的には(え? 宇宙人のモラルって、そんな風だったの?)と思うような、意外な台詞が出てきて欲しいです。
ウルトラマンを人間っぽくさせないで、と願いたい……。
そんな感想を書きたくなった12話は、私にとって感慨深いエピソードとなりました。
「私たちが強くならなきゃいけない……自分たちの力で、平和を守れるように……」
拙作「ウルティマゴッテス ~巨人娘~」にも、怪獣との共存共栄の側面が出てくるのですが……まさに、ひとつのテーゼを示してくれたと思います。
自分の創作への刺激を与えてくれました。
――制作陣の皆さん、ありがとうございます。
なお、ウルトラマンZの第12話「叫ぶ命」は、↓以下で見逃し無料配信がありますよ。
(期間限定ですので、視聴はお早めに)
◆『ウルトラマンZ』第12話「叫ぶ命」-公式配信- "ULTRAMAN Z" Episode 12 -Official-
https://www.youtube.com/watch?v=AQiO5sS7DtQ&t=70s
◆TVer見逃し配信「ウルトラマンZ 叫ぶ命」
https://tver.jp/corner/f0057185
(9/12から約一週間、無料配信)