野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

加東市の観光パンフより

2023-07-26 | 資料を読む

資料を読む 兵庫県加東市の観光ガイドより

 

先日加西市のあびき湿原での観察会をおこなった。集合は粟生駅(あおえき)。

そこで、加東市の観光パンフレットがおいてあった。

2種類の観光パンフレット。どちらも加東市観光協会が発行している

「加東市観光ガイドマップーようこそ伝の助のかとうへ!!-」(2022.8;14刷)=以後マップ

「るるぶ特別編集 兵庫県加東市 ―大阪神戸姫路からのおでかけにぴったりー」(2023:企画編集制作株式会社JTBパブリッシング)=るるぶ版

どのようにわが市の観光を伝えるか、同じ加東市観光協会が発行もとなので、企画編集の違いがでているのがおもしろいので、取り上げた。

 

マップは1枚のマップの裏に加東市の観光・レジャー・歴史・特産品・加東市のデータが詳しく記載されている。多くの自治体の観光地図と変わらない。

るるぶ版は右綴じの20pのA4変形の冊子になっている。「加東市の紹介・あそび場紹介・歴史ロマン・山田錦・アクティビティ・グルメ・スイーツ」と市販されているるるぶ冊子の形態をそのまま

 

企画編集の違い

マップは百科事典型、るるぶ版はネットワーク型

マップは「観光スポット」として加東市の観光地や観光施設を一覧で紹介している。

るるぶ版は観光スポットを「加東市はこんなところです」と2pにわたり加東市の今の売りのところが一目でわかるように割り振りされている。企画が「1dayモデルプラン」なのだが、まず加東市に興味をもたせる配置はネットワークを形成する導入になっている。

 

特産品

特産品は加東市が他市と違う、買ってほしい、来てほしいという願いがあるページ

マップは特産品の紹介のみ。どこで買えるというのがない、問い合わせ先が観光協会のみになっている。

一つの店や企業に偏らぬような行政の配慮がみえる構成になっている。

るるぶは、山田錦のブランドの紹介、地酒の紹介。

土産物もいまの店「和洋スイーツ」として取り上げ、おみやげはここで買うことができると紹介。

マップはこれまでのどこの市町村にもある従来型の観光マップで、その目的は達成でいているが、着たら何をしたいのかは自分で考えてとお役所視線だが、るるぶ版は加東市に行って何をしたいという明確な動きが感じられる。

 

発行がどちらも加東市観光協会、観光パンフとしてはるるぶ版、加東市の魅力が伝った1冊でした。


子どもの本がおもしろい㊷ 黄砂にいどむ―緑の高原をめざして

2023-07-19 | 資料を読む

子どもの本がおもしろい㊷ 黄砂にいどむ

 

黄砂にいどむ―緑の高原をめざして 高橋秀雄著 新日本出版社 (2016/2/23)

『黄砂にいどむ』は、砂漠の緑化運動をわかりやすくまとめた本

黄土高原の砂漠化を食い止めようと努力している研究者一前宣正氏の活動を中心に話がすすむ。

 

 

黄土高原は中国北西部の海抜1000~1500m、日本の総面積の1.5倍という広大な高原。

今は砂漠だが、2000年前は緑豊かな地域であったといわれる。

春、日本に飛来する黄砂の発生地である。

黄砂は、ゴビ(中国・モンゴルの砂礫砂漠)、黄土高原、河西回廊などの半乾燥地では冬季に降雨が少ないことと冬から早春まで植生がないことで、黄砂が舞い上がる。

 

黄土高原に住む人々のくらしはきびしく、いまなおヤオトン(横穴住居)に住む人が何千万人もいるという。

 

 

ふつうは緑化というと植林活動を考えるが

砂漠化を食い止める方法は

一前宣正氏は「雑草を植えることで緑化」し「黄砂を抑えよう」と考えた。

なぜ、植林ではなく雑草かは本書を読んでもらうとわかる

 

植生回復の最初の段階を担ってくれる雑草探しから活動が始まる。

世界中から2万種以上を集め選抜試験を重ねた。

その結果イネ科のスイッチグラスが最も適していることを見つけた。

 

 

スイッチグラスとは

注目されている植物という。理由はバイオマスに利用しているトウモロコシより優れているから。

スイッチグラスは北米原産の植物。

北緯55度からメキシコの奥深くまで、主にプレーリーグラスとして自然に発生する。北米では、土壌保全や飼料作物として長い間使用されている。

アメリカとヨーロッパでは観賞用植物としても利用されている。

1990年代初頭から、この作物は米国とカナダでエタノールと電力生産のためのモデル草本エネルギー作物として注目されている。

 

この本は

活動はまだ始まったばかり、これからも活動を続ける必要があることで終わる。

 

黄砂についてのメモ

黄砂の始まりは

中国黄土高原では約 250 万年前からであり、その多くが約 200 万年前から始まった第四紀に入ってからである。チベット高原の隆起によって熱帯との大気循環が遮断され、中国内陸部が乾燥するようになったからであろうと推定されている。(成瀬 1996)(https://www.env.go.jp/環境省のホームページより)

 

日本への影響

日本への黄砂はタクラマカン沙漠とゴビ沙漠、および黄土高原から補給されて輸送され、やがて落下して、九州では黄砂の堆積は数メートルになったとされる。また、沖縄でも赤土の多くは黄砂由来であるとも推定されている。(略)

黄砂の記録は、さすが中国では紀元前からあり、雨土、雨砂、黄霧等の用語がある。韓国では中国に近いためか2世紀からあり、雨土が多い。日本では8世紀からあり、赤雪、紅雪が多く、黄砂の用語は 1906 年からである(岩坂ら、2009)(https://www.scj.go.jp/ 日本学術会議のホームページより)

 

中国の黄砂は日本上空を通過して、はるか太平洋上のハワイを越え、さらに太平洋を越えてアメリカ合衆国、カナダへと輸送される。そしてまた、大西洋を越えてヨーロッパへと輸送され、やがて中央アジアを経て中国・日本に還ってくる地球一周の循環を認識する必要がある。最近、その一周の期間は 12~13 日であるとのシミュレーション結果が報告されている(鵜野、2009)。(https://www.scj.go.jp/ 日本学術会議のホームページより)

 

 

日本での黄砂の研究

空飛ぶ納豆菌(PHPサイエンス・ワールド新書2012)

出版社からの説明より

「地球を半周して飛来する黄砂は、微生物たちの格好の乗り物だった! 中国奥地のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠から偏西風によって日本の上空に飛来してくる黄砂に、カビや細菌類が付着していることがわかってきた。黄砂が含む水分やミネラルが、長距離を移動する微生物たちにとってとても具合がよかったのである。黄砂からどのような微生物たちが見つかったか。微生物たちが長距離を移動する間に起きる化学的・生理学的変化とは何か。黄砂が落ちる場所で微生物たちがもたらす生態系、農業、人間や家畜の健康への影響とは何か。「黄砂に乗る微生物」をめぐり、科学者たちの探求が始まった。☆ 黄砂が飛んでくると、微生物の量が5倍にふえる☆敦煌の上空を飛ぶ黄砂の10%にカビや細菌が付着☆金沢や能登の上空の黄砂でも、微生物を採集☆標高3000mの立山の積雪から、黄砂と微生物を採集☆生態系、健康への影響はこれからの研究課題」

黄砂にいろいろなものがくっついているのを初めて知った

この研究成果、金沢大学では、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠から舞い上がった黄砂を珠洲市の上空3,000m 付近で採取し、付着する菌で納豆を作り”そらなっとう“として売り出しています。


子どもの本がおもしろい㊶ ジャガイモの花と実 ―オリジナル入門シリーズ5-

2023-07-07 | 資料を読む

子どもの本がおもしろい㊶ ジャガイモの花と実 ―オリジナル入門シリーズ5-

 

今はほとんどの児童がしっているが

「ジャガイモは茎、サツマイモは根」

 

このことが教科書でふれられたのは、明治14年「植物小学」で

そこには「馬鈴薯(じゃがいも)甘藷(さつまいも)などは茎の地中にあるものだ」と書いてありました。

その著者は松村任三氏。この名前を聞いてピンときた方は、朝ドラのファンですね。

7月のドラマではまだ東大の助教授ですが、・・・

 

「ジャガイモは茎、サツマイモは根」と訂正されたのは明治16年文部省のグレー著「植物通解」(矢田部良吉訳)だそうです。(以上あとがきによります)

「ジャガイモの花と実」、この本ができたときは、日本には男爵とメークインの品種が主流だったとおもいます。

著者は、ジャガイモの種はどうなっているのだろうという子どものころの疑問を解いていく中で、アメリカでの品種改良の話を取り上げています。

バーバンクの話です。

いまのマクドナルドのフライポテトのジャガイモの品種をつくった人でもあります。

マクドなんてまだないときに、バーバンクを取り上げるところに先見性があったと思います。

マクドのジャガイモと日本の料理に使っているジャガイモは同じか、違うかなどから

今の授業は入るかもしれません。

いまはジャガイモの種類もたくさんスーパーにならんでいます。

「ぜんぶわかる!ジャガイモ」(安田守著;ポプラ社:2020年発行)

を読めば、いま日本で栽培されているじゃいもがよくわかります。

調べてみようでは、ジャガイモの芽の出る場所が反時計回りでらせん状にならんでいるとか、たねいもの大きさで育ち方はどうかわるなど、写真で見せてくれる。

現在のジャガイモについて調べたいならこの本がおすすめ。

 

 

まとめ

「ジャガイモの花と実」

板倉 聖宣著

もともとは福音館の科学シリーズ (1968年)

いまから 半世紀前の本。

‎ 仮説社から2009年に再販となった。

-- もくじ --

ジャガイモとわたし

植物の花と実とたね

生物の再生の力

たねから育てたジャガイモ

たった一個のジャガイモの実

植物の魔術師

野生のジャガイモ草

ジャガイモの歴史

 

ちなみに

バーバンクによって作り出されたジャガイモの品種のうち、最も有名なものはラセット・バーバンクという品種です。これは、1880年頃に開発されたジャガイモで、現在でもアメリカで最も栽培される品種です。表面が赤茶色になり、粉質でほくほくした食感が特徴です。ベークドポテトやフライドポテトなどに適しており、マクドナルドのフライドポテトにも使用されています。

現在、北米では

  1. ラセットポテト(Russet Potato)=マクドのフライポテト向き 
  2. イエローポテト(Yellow Potato)
  3. レッドポテト(Red Potato)

という「3つ」が人気だそうです。

 

日本では、その昔メークインと男爵という2つの「品種」が主流です。

メークインはイギリスで作られていたものを輸入して北海道で栽培、

男爵イモはアメリカのバーバンクが品種改良したものを北海道で栽培

どちらも昭和3年1928年に北海道の優良品種として認定され現在に至ります。

 

「じゃがいもの世界史―歴史を動かした『貧者のパン』伊藤章治著 中公新書 2008年発刊」

も参考に

 


子どもの本がおもしろい㊵ チバニアン誕生 ―方位磁針のN極が南をさす時代へー

2023-06-16 | 資料を読む

子どもの本がおもしろい㊵ チバニアン誕生 ―方位磁針のN極が南をさす時代へー

 

ポプラ社ノンフィクション(39)

チバニアン誕生

方位磁針のN極が南をさす時代へ

著/岡田 誠

出版社 ポプラ社

地質学者がとなえる説は「トンデモ本」に掲載されてもよい話がある。

たとえば、ドイツ人気象・地球物理学者ウェゲナーの大陸移動説。

発表当時は大陸が移動するなど非常識扱いされました。また、ウェゲナーは地質学者ではなかったので最初に提唱されてから40年ほどの間、学界で受け入れられることはなかった。

1960年代初めにイギリスの古地磁気研究グループの研究が発端となって大陸移動説が復活した。

 

日本ではその古地磁気研究から大発見をした人がいる。過去に地球の磁場が現在とは逆向きの時代があったことを、世界で初めて提唱したのが、日本の京都帝國大学教授松山基範博士。

この話も、発表当時地磁気逆転現象は、否定的に扱われため、その後、博士自身もこのことを強く主張されることもなく、岩石地磁気の研究もされなかったといいます。その発見した場所が兵庫県の玄武洞です。

1960年代になって地磁気逆転が明らかになり77万年前の逆転境界をブルン・松山地磁気逆転境界と博士の名前が付いた。

 

そして「チバニアン」

ジュラ紀や白亜紀といった地質年代の名称があるが、約77万4千年前~12万9千年前の地質時代に、「チバニアン」という名称ついたのだ。

このチバニアンが世界に認められるまでの研究者たちの活動がこの本。

 

 

 

発売年月              2021年6月

ISBN      978-4-591-17034-2

 

書籍の内容

新たな地質年代「チバニアン」が生まれるまでのノンフィクション。千葉県市原市にある地層「千葉セクション」に、およそ77万年前に地球の磁場が逆転したことを示す手がかりが残されていた!地層に刻まれた痕跡から太古の地球のすがたを考える地質学の魅力に迫るとともに、「千葉セクション」の日本初GSSP(国際境界模式地)決定に至るまでのドラマを紙上体験する一冊。著者は、千葉セクションGSSP提案チーム代表の岡田誠・茨城大教授。

<もくじ>

・はじめに

・第1章 日本の地名がはじめて地質年代に

・第2章 77万年前の地球を地層から解きあかす

・第3章 僕はこうして、地質学者になった

・第4章 めざせ、チバニアン承認。国際レースにいどむ

・第5章 科学の発見とは、今見えている世界を広げること

 

 

地磁気逆転と「チバニアン」 地球の磁場は、なぜ逆転するのか (講談社ブルーバックス) 2020/3/18

という本もおすすめ。

GSSP(国際境界模式地)決定の条件に「行きやすい場所にあり、世界中のだれもがその地層を使って研究することができる」というのがあり、地権者とのいろいろなできごとがあったようで、そのあたりはブルーバックスの方がおもしろい、

最近までの日本の地学の教科書で日本列島の成立は地向斜説があり、小松左京の「日本沈没」が発表されたとき、日本を沈めるのに小松左京はプレート運動をとりあげて小説を面白く説明していたが、そのころ日本ではまだプレートテクトニクス説は認められていなかった。いまでは、ほとんどの人(小中学校の理科の教科書に掲載さてている)はそちらが主流であるが、まだまだ地向斜説は健在だったというのがわかったのは収穫だった。


子どもの本がおもしろい㊴ 水中の小さな生き物けんさくブック

2023-05-21 | 資料を読む

子どもの本がおもしろい㊴ 水中の小さな生き物けんさくブック

湖 池 沼 田 川 色 形うごく/うごかないで調べる!

著者  「水中の小さな生き物けんさくブック」編集委員会 編著

出版社 仮説社(2014年)

現場の先生たちの切実な「分からない」を、専門家たちと一緒に教材研究するという、画期的な取り組みから生まれた本作🦠杉並区を中心に、現在では全国の小中学校でご活用いただいています。

(『水中の小さな生き物けんさくブック』のFacebookより)

プランクトン(浮滸生物)定義は,

「水柱に生息し流れに逆らって移動できない」(生物海洋学入門,閣・長沼 2005) という条件に当てはまる生物を便宜的にまとめた言葉で、分類をすると種類の多い生物になる。

 

最初にプランクトンを学習するのは小学6年理科

これまでは、5年生でメダカの食べるものとして学習していたが、6年生で食物連鎖のなかで観察する。

中学校では理科第二分野でいろいろな環境条件で存在する生物の学習でプランクトンをとりあげている。

 

顕微鏡を取り扱うので、子どもたちはたのしみにしている勉強のひとつ。

顕微鏡で見ることができても、

小学校の場合 教科書にみられるプランクトンの写真がのっているが、これがプランクトンだという代表的なものしかのっていないので、自分が見ているのが何か気になっても分からない。

先生も分からない。

これまで、先生向けの夏のセミナーで教科書にのっているプランクトンを見つけるのは至難の業であると聞いている。

それで、当会が毎年人と自然の博物館でおこなう夏のセミナーも結構人気の理由がそこにある。

今年も開催予定なので、人と自然の博物館の情報を見てほしい。

 

それで、1学期にプランクトンを調べたいなというときに、いい参考書になるのが本書。

表題の通り、「色 形うごく/うごかないで調べる」ことで検索ができる参考書。

インターネットと連携しており、動きの速いプランクトンもじっくり観察できる。

実際はこれ以上の種類がみられるが、教科書で不足している情報をおぎなうことができる。

本の作りは上部にできており、検索の方法も便利なように工夫されている。

 

中学校では微生物の専門書としてこの本に紹介しているが、滋賀県立衛生環境センターほかの「普及版やさしい日本の淡水プランクトン図解ハンドブック」や日本ブランクトン学会監修の「ずかんプランクトン」がおすすめだ。

 

現在プランクトンの分類については 新しい分類体系 (Adlet al. 2012, 2018) が主流となっている。さらに、DNAなど新しい方法がかくりつするにつれ新しい知見がこれからも付け加えられるだろう。


子どもの本がおもしろい㊳ うねゆたかの田んぼの絵本(全5巻)

2023-04-26 | 資料を読む

子どもの本がおもしろい㊳ うねゆたかの田んぼの絵本(全5巻)

 

宇根豊・作/小林敏也・絵

定価:揃 14,850円/各 2.970円(税込)

ISBNコード:9784540201011

発行:2021/3

出版:農山漁村文化協会(農文協)

判型/頁数:AB 各36ページ

第1巻 田んぼの四季 なぜ赤とんぼは人間に寄ってくるの?

第2巻 田んぼの動物 足あとにオタマジャクシが集まるのは?

第3巻 田んぼの植物 草刈りしないといけないのはなぜ?

第4巻 田んぼの環境 土に石ころがないのはなぜ?

第5巻 田んぼの文化 なぜ正月はやってくるの?

 

農文協の編集室から

「全国の小学校で行われている、田植えや稲刈りの体験。でも稲作にかかわる四季の仕事のもつ意味や、

それを田んぼやその周辺の動植物や環境とつなげて考えることはあまり多くありません。

この絵本では農家(お百姓)と子ども、そして田んぼの生きものたちとの対話をとおして、生きものの視点から田んぼという環境への理解を深めていきます。

田んぼをめぐる素朴な疑問に答えながら、「田んぼ」という身近な環境が、農家の仕事をとおして保たれていることがわかる絵本です。」

 

 小学校5年は社会で日本の農業について学習する。多くの教科書会社の教科書で、「家庭で食べている米の生産地、品種などを調べ、白地図にまとめる。」「米作りとして、山形県の庄内平野を取り上げ、日本有数の米の生産地であることを調べる。そして、学習問題(「米を生産方法」「生産者と消費者の立場から農業の発展」など)をつくるのが社会の学習だ。

 テスト問題を解くだけの学習になりそうだが、それに環境を付け加えてみるのはどうだろうか。

 環境教育の視点を取り入れた学習内容に発展させるとあじけない農業がより興味深いものになると思うのだが、この絵本がヒントを与えてくれる。

 

本の副題や目次にはつぎの質問があるが答えられるだろうか?

1巻より「なぜ赤とんぼは人間に寄ってくるの?」「北海道で米作りがむりといわれても米をつくりつづけたわけは?」

2巻より「なぜ稲植といわずに田植えというのか?」「足あとにオタマジャクシが集まるのは?」

3巻より「草刈りしないといけないのはなぜ?」

4巻より「土に石ころがないのはなぜ?」

5巻より「だれのために、ごはんを食べるの?」

 

また、各巻にクイズコーナーが設けられており

たとえば

Q田んぼ中の小さな生き物を見つける一番良い方法はどれでしょう(2巻)

  1. せめて10秒ほど動かずにじっと見る
  2. 顕微鏡で見る
  3. できるだけ広く歩き回ってさがす

Qなぜ代掻きをするのでしょう

など

付録にもいろろな資料が満載

たとえば名前の由来がのっていたり

(2巻)

オタマジャクシ(お玉杓子):調理用具のお玉杓子を小さく した形そのものだからです。

カエル(娃):鳴き声の「ケエーロ」からつけられたのか、必ず産まれた場所に「帰って」くるからつけられたか、どちらかでしよう。

アメンボ(始棒):さわると飴の棒みたいな香りがします。

など

(3巻)

タンボポ(たんぼぼ蒲公英は中国名):茎を切って、断面に切れ目を 入れて、水に浸けておくと、左のように鼓(つづみ)の形になります。鼓の 音は、タン•ポポ•タン•ボボと聞こえます。同じように、鼓の形になる ヒガンバナも、狐(きつね)のタンボボと呼んでいる地方もあります(右)。

カラスノエンドウ(烏野豌豆):熟れた実が豌豆(エンドウ)のさやに似 ていて、しかも真っ黒なので、烏の色にたとえました。

カスマグサ(かす間草):とてもかわいそうな名前です。なぜなら、力と スの間の草というのですから。力はカラスノエンドウで、スはスズメノ エンドウです。この三つの草はよく似ていて、葉と花の大きさが力とス の中間だからです:それにしても、この名前のっけ方はひどいと思いませんか。

カタバミ(片食み酢漿草は中国名):夜になると葉が閉じて、半分何 かに食べられたように見えるから。「食(は)む」は「食べる」という言葉 の古い形です。

など

 

インターネットでは調べ切ることのできない内容がいっぱいの5冊です

 

しかし、気になるところがひとつ

2巻の田んぼの植物p17にあるカンサイタンポポの画像が

白いタンポポが掲載されている。黄色に見えるようにしていただくと誤解が少ないと思うのだが


資料を読むー「自然とともに」第37号(兵庫県環境政策課林務課)

2023-04-16 | 資料を読む

資料を読む 「自然とともに」第37号平成9年3月28日発行

—兵 庫 県一環境政策課•林務課  

〒650神戸市中央区下山手通5 丁目10番1号 

「自然とともに」は兵庫県環境政策課林務課の会報誌。

兵庫県のレッドデータの内容の一部が、ナチュラルウオッチャーの会員に配布されていた冊子に掲載された。

この37号を最後にこの冊子は、ひょうご環境創造協会のほうに移管することになるが、兵庫県からは最後の号になる。

県のレッドデータブックは平成7年3月に「兵庫の貴重な自然(兵庫県版レッドデータブック)」として出版された。

先に「自然とともに」第33号がそのレッドデータを紹介したのが最初で、今回はその続き。

 

広報紙は一度読むとそのままゴミ箱行きになることが多い。

大事な事柄があっても薄いのでそのままどこかに消えてしまうのが普通だが、いろいろな内容の種類をまとめめれば、自分なりのデータベースになる。

この冊子も短いながら、画像と説明があり、全体の調査報告の一部でありながら、兵庫県での貴重種がわかるので保存しておいたもの。

県だけでなく地方の自治体などでも素晴らしい冊子をつくっている。しかし、必要な記事の大きさなどがまちまちなので、一つにまとめる方法があれば整理しやすのだが、

 

この冊子で 活動している里山でレッドデータに関係する項目がある。

「◎ニッポンパラタナゴ(Aランク)【魚類】

ため池や流れの緩やかな水路に生息する小型の淡水魚で す。繁殖期には雄の体が、緑靑色や赤桃色などに美しく彩色 します。県下では、千種川などに分布していたようですが、 タイリクバラタナゴの移入によって交雑が進み、純粋なニツ ボンバラタナゴは全国でもほとんど残っていません。

◎カスミサンショウウオ(Bランク)【両生類】(セトウチサンショウウオに名称が変わっています)

瀬戸内海側と日本海側の低地に分布する西日本の代表的 な小型サンショウウオです。3月ごろに水の残った水田の 溝、湿地の水たまり、小さな池の浅瀬などに産卵し、生息地 が人里に近いため、開発の影響を受けて著しく減少しています。

◎ギフチョウ(Bランク)【昆虫類】

里山を代表するチョウで、日光が差し込む明るい林が維持 され、林床には幼虫が食べるカンアオイ類が繁る場所に生息 しています。里山林の定期的な維持管理が行われなくなり、 カンアオイ類が生育できる環境が減ったため、姿を消しつつ あります。」(自然とともに第37号平成9年3月28日発行より)

 

里山では下草を刈ることで、ギフチョウの食草が増えたことや、里地の水路の落ち葉を取り除くなどでセトウチサンショウウオが産卵しやすい環境をつくったことで、里地里山でのそれらの生き物の活動を見守っている。


子どもの本がおもしろい㊲

2023-04-01 | 資料を読む

子どもの本がおもしろい㊲

今回は農業、学校で食育実践、肥料の代わりに野菜ごみをつかって育てるノンフィクション。

「菌ちゃん野菜をつくろうよ」

あんずゆき文

出版社 ‏ : ‎ 佼成出版社; 初版 (2016/6/20)

発売日 ‏ : ‎ 2016/6/20

言語 ‏ : ‎ 日本語

単行本 ‏ : ‎ 96ページ

 

「虫はまずい野菜につく」退職金使い果たした有機野菜農家がたどり着いた驚愕の答え(2020年)

「雑草があれば2カ月で有機野菜作り始められる」常識を覆した土作りの方法とは?(2020年)

生ゴミコンポストの作り方|菌ちゃん先生の「生ゴミ漬け物投入法」(2021年)

菌ちゃん(吉田俊道さん)に学ぶ自然農法の世界が日本を救う理由(2022年)

とネットには山のように菌ちゃん農法があります。

 

この本は、これは子ども向けに書かれたノンフィクション 2016年のもの

 

菌ちゃん先生こと吉田氏は、1996年から農業を始められたそうで、この本は20年間の成果と実践、おもに子どもたちを行った実践の経過と結果をあんずさんが著したもの。

2010年に「生ごみ先生の元気野菜革命」が‎ 東洋経済新報社が出版されているので、16年ごろには成果が定着し評判になっていたのだろう。

 

出版社の説明には

「菌ちゃんって、なんだろう? ほんとうにいるのかな? ある小学校で行われた「菌ちゃん野菜づくり」は、そんな疑問いっぱいで始まりました。菌ちゃんとは、土の中にいる土壌微生物のこと。土に混ぜた生ごみを菌ちゃんが分解し、発酵熱で土がおふろのように温まることに、子どもたちはびっくり。さらに、菌ちゃんがたくさんいる土で育った野菜のおいしさに、またびっくり! 子どもたちが野菜づくりを通して、目に見えない微生物の存在に気づき、いのちの循環や健康の大切さを感じていくようすを紹介したノンフィクションです。」

 

本書は、長崎県の小学校で行われた、吉田俊道さん(大地といのちの会)による「菌ちゃん野菜づくり」の授業をまとめたものです。 現代の子どもたちの食の乱れを危惧している吉田さんは、野菜づくりの体験が、食を見直す近道だと言います。 実際に土づくりをしてみましたが、土に混ぜた生ごみが消え、土が40度以上に温まると、大人でも感動します。土壌微生物が土を豊かにし、そこで育った野菜から栄養をいただいているのだということがよくわかります。 ぜひ多くの方に体験していただきたいと思います。巻末には、家庭でも簡単にできる菌ちゃん野菜のつくり方を掲載しました。

 

 

動画などからも多くの方の支持があるようで、最近は糸状菌を出させるために枯れ木や枯れ草や竹を利用して畝の上に乗せて軽く土をかけて発酵させる方法なども盛んに動画がみられる。

子ども向けに書かれた本だが、入門編として生ごみを活用してみようとおもう本でした。

バックグランドが広いので、この本だけではエッセンスのみ、

実践からこまかい方法は動画などを参考にしないといけないが、食育にもかんれんすることなので、興味ある人は調べてみるのが良いだろう。

 

窒素リン酸カリという肥料の概念だけでは植物の成長は図れないという本。


こどもの本がおもしろい㊱

2023-02-22 | 資料を読む

こどもの本がおもしろい㊱

カメの甲羅はあばら骨ジュニア版人体で表す動物図鑑

著: 川崎 悟司

出版社: SBクリエイティブ

発行日: 2021年07月07日

ISBN-10 ‏ : ‎ 4815611971

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4815611972

 

小学校4年の理科で骨の学習をする。主な学習内容は関節と筋肉の学習だが、人間とほかの動物の骨格の比較についても学習する。

そこで、問題。上図の牛の人間の「かかと」にあたる部分はAかBか?

多くの子どもの場合は「B」と答える。自信をもって、わけは人間とくらべて位置関係から絶対だってこたえる。

正解はAである。なぜ、

このような問題をすぐに解決してくれる本がこれ。馬のページをみれば、人間だったらつま先立ちで大変だなとすぐわかるようになっている。

他に、小学校4年生では、手にはどのくらいの骨がある。赤ちゃんと君たちではどちらが骨の数は多い、同じ?

など骨について学習するのだが。さて、どれだけ答えられますか?

この本、もとは2019年に発売されたときは大人向けの新書版で発売。シュールすぎて結構話題になった。

そして、送り仮名をつけてジュニア版で発売。

2022年10月に『カメの甲羅はあばら骨』がアニメになっている。

「作者の川崎悟司さんは、絶滅動物、古生物、恐竜などのイラストを描く仕事をしており「人間のあばら骨がカメのあばら骨だったら」をビジュアル化したイラストを自身のTwitterにも投稿して話題を集めていた。」https://www.oricon.co.jp/special/54229/

ぜったい、この本は受ける。おすすめ本です。


こどもの本がおもしろい㉟

2023-02-19 | 資料を読む

こどもの本がおもしろい㉟

こどもの本のうち社会科に関係する絵本は寿命がみじかい。いま、新しく求められる視点はSDGs。川の絵本はこれまでたくさん出版されている。「調べ」学習につかえる本として、学校図書館や地域の図書館で採用されるように編集された本だ。

調べてわかる!日本の川(全3巻)

  • 一級河川ってどんな川?
  • いのちと暮らしを守るために
  • 地域社会とのかかわり

出版社: 汐文社/発行年月: 2022-03/ISBN: 9784811313269

出版社からのおすすめ文「昔から人や文化と密接な関係を持ってきた一級河川ですが、近年各地の河川による自然災害の発生頻度も多くなり注目を集めることとなっています。一級河川とはなにか、その歴史や治水、生活や産業とのかかわりなどを解説します。」

全国の一級河川についてその歴史や治水、生活や産業とのかかわりなどを写真やイラストで解説しています。2巻では、秀吉が淀川に築いた堤防など治水の歴史を紹介しています。(大阪府立中央図書館こども向け調査ガイドより)

 

  • 一級河川ってどんな川?」前半は川比べ、後半は川と人のかかわり
  • いのちと暮らしを守るために」治水の歴史が中心
  • 地域社会とのかかわり」川から生まれた産業とSDGs

 

3巻目が切口新しいところ。

また、川から生まれた産業の切口も新しい。これまで多くの本が、農業のために川を利用してきたという本が多い中、川を主人公に農業があるという視点がすばらしい。それぞれほかの内容は工業、観光業、漁業、公共施設がある。そして、SDGs。

生物多様性のある川の生態系を紹介している。

当会は、武庫川 揖保川 加古川 猪名川 淀川 大和川 由良川 鶴見川 をこれまでまとめて本にしてきた。 

今回の本のではたくさんの川の事例をあげているが、日本の河をすべて網羅というわけではない。地域の河の様子を知りたい手掛かり本。

当会では武庫川以外はすべて1級河川。1級河川の長い川は紹介されているが、短い川の代表の鶴見川がなぜ1級河川なのかとか、治水の歴史なら大和川が面白い。秀吉の治水は淀川だけでなく加古川でものこっているし、地域のかかわりなら動植物をまとめた当会の「生きてる武庫川」はじめ「生きている」シリーズの本はきっとよい資料の一つになるはずだ。参考まで