野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

アキノノゲシ

2023-09-26 | フィールドガイド--植物編--

アキノノゲシ(キク科)

 

東南アジアが原産で稲作と共に日本へ渡って来た史前帰化植物。

田や畑のまわり、土手などでよく見られます。

 

アキノノゲシは、ノゲシが別名でハルノノゲシと呼ばれるので、秋に花を咲かせることからつけられた名前です。

ノゲシ(野芥子)という名前が付きますが、ノゲシ(ハルノノゲシ)とは別でアキノノゲシ属です。

レタス(Lactuca sativa)の仲間で、 レタス、サニーレタス、ニガチシャ、カキチシャ、サラダ菜など同じ仲間になりあます。

 

初夏までは丈は低く、花を咲かせる頃から急に高くなります。直立して高さ50~200cmになります。

 

アキノノゲシの花は、一日花で、甲虫、チョウ、ハナアブなど様々な昆虫たちが集まってきます。

きずつけると白い乳液が出ます。

同じキク科でも,白い乳液のあるなしで次のように分けます。

白い乳液の出るタンポポやアキノノゲシを「タンポポ亜科」

白い乳液のでないアキノキリンソウやヨモギやヨメナは「キク亜科」

 

 

アキノノゲシには葉に切れ込みがあり、切れ込みのない細い葉を持つものは、ホソバアキノノゲシ(学名: Lactuca indica f. indivisa)と区別されます。

 


ワレモコウ

2023-09-25 | フィールドガイド--植物編--

ワレモコウ

秋の七草の1つです。

俳句でもワレモコウ(吾木香)は秋の季語になっています。

 

一休の俳句に、「ワレモコウさし出してはなのつもりかな」

ワレモコウの花について一休さんも評価に困ったようです。

暗紅色の花と思いきや、この暗紅色の部分は、花の咲き終わった「跡」です。

ワレモコウは花弁がありません。 あの暗紅色の部分は、4 枚の萼片になります。

雄しべは4 個、ガク片より短く 花外に出ません。

葯は、乾くと黒くなります。花は、花序の先のほうから咲き初め、下部におよびます。

 

ワレモコウの名は,源氏物語に初めて登場し,平安時代に京都でブームになったようです。

平安時代の宮廷庭園では、ワレモコウを植えて秋の野原を再現という風流な表現をしたとか。

 

ワレモコウは、ヨーロッパや東アジアなどに広く分布するバラ科の植物です。

漢方でも、根や根茎を天日で乾燥させたものは、古くから収斂、止血、火傷、打撲への薬として使われました。最近では,育毛剤や化粧品にエキスなどが利用されています。

 

英名では,グレートバーネットと呼ばれます。

食用植物として、若い葉をスパイシーな風味のハーブとして使用したり、花のつぼみをサラダに加えたりして食しているようです。

 

ワレモコウには変種があります。

湿地にはえるワレモコウで、花穂の太さが6㎜を超える太長いワレモコウで、ナガボノワレモコウと呼ばれます。関東に多くみられるようです。兵庫県でも見られ、県の中南部に点在してみられますが、絶滅危惧種になっています。

ほかに湿地にはコバナノワレモコウがあります。これも、湿地が開発などでなくなり数が減っています。

 


ヒガンバナのなかま

2023-09-24 | フィールドガイド--植物編--

ヒガンバナのなかま

 

秋のお彼岸の頃に咲くヒガンバナは、秋の季語になっています。

昔から日本で親しまれてきた植物です。

 

ヒガンバナはリコリスの一種に分類されており、リコリス・ラジエータ(Lycolis radiate)の学名があります。

ヒガンバナは種をつけず、球根が分球して増えるところです。

 

ヒガンバナ

秋の田畑の畦に多くめられます。原産地は中国南部です。球根になった鱗茎には毒があります。

花の咲く秋には葉がなく、葉は冬から早春にかけて、他の植物が枯れている間に、細い葉を伸ばします。

 

ナツズイセン

かなり古い時代に中国からやってきた多年草です。ヒガンバナと同じように、花は咲いても種子はできません。ユリに似た花から「裸ユリ」とも呼ばれます。暑い夏の花の少ない季節に、突如として咲くところが重宝され庭園などに良く植えられています。

 

オオキツネノカミソリ

秋、里山や、森の周辺に咲きます。ヒガンバナのようにひとつの茎にたくさんの花はつけません。よく似たものに雄しべや雌しべの短い、キツネノカミソリがあります。

 

キツネノカミソリ

この花も秋、森の周辺に咲きます。雄しべが花びらより外に突き出ることがありません。名前の由来は、「キツネ」は葉もなく花が咲き、そして消えてしまうところがキツネに化ばかされたとし、「カミソリ」は葉の形から付けられたようです。


ヒガンバナ

2023-09-23 | フィールドガイド--植物編--

ヒガンバナ

 

ヒガンバナはちょうどお彼岸の時期に見られる花です。

葉がないのに、突然花が見られるので大変目立つ花です

彼岸に咲くのは、ヒガンバナは気温の変化で開花する特性があるからです。

「暑さ寒さも彼岸まで

ちょうどこの時期涼しくなり始めた頃に、花が咲くというのがヒガンバナの生態です。

 

ヒガンバナは花が終わると、その後「葉」のみが出て、冬を過ごします。夏になると「葉」もなくなり休眠期に入ります。気温が下がってきたお彼岸の頃に花が咲くのです。

 

日本で咲いているヒガンバナは、すべて実をつけません。ヒガンバナは、すべて3倍体だからです。

中国には、2倍体で種子をつけて繁殖するヒガンバナがあるので、日本の個体も中国由来といわれています。

どのように日本にやってきたのかはわかりませんが、有史以前に渡来・帰化した植物、史前帰化植物とされています。

 

赤い花から、別名「毒花」や「死人花(しびとばな)」と呼ばれます。

しかし、球根の方にアルカロイドがふくまれますので、モグラをよけに植えたとも

球根のでんぷんは飢餓のときの食料にするためにむやみに食べないように「毒花」とつけられたという説もあります。


ツリガネニンジン

2023-09-19 | フィールドガイド--植物編--

ツリガネニンジン(キキョウ科)

里地の畦や里山に向かう道沿いに釣り鐘状の薄い青紫色の小さな花をぶら下げた植物がツリガネニンジン。

ニンジンと名がついているのは、根が朝鮮に人参に似ているところから。

朝鮮人参と同じように薬効があるそうで、根を乾燥させ(シャジン (沙参))、漢方では鎮咳、去痰作用があるとか。

若い芽や茎先のやわらかい部分は「トトキ」とよばれ⾷⽤になる。

ツリガネニンジンは、 花の色やかたち、 茎や葉の様子などに個体差が出やすい種類です。

ツリガネニンジンの受粉は夜行性のガのなかまが花粉媒介をしているという報告があります。(つくば生物ジャーナル2016.)昼間にやってくる昆虫は受粉に貢献せず、夜にやってくるガの仲間が受粉を助けているそうだ。この研究では、ツリガネニンジンの出す蜜を手がかりにして、夜の方がたくさん蜜がでて、しかも生殖器官も成熟するところから夜のガのために花のしくみができていると結論づけている。

なぜ、ツリガネニンジンが夜の昆虫を選んだのかはわからないが、小さい花のわりにめしべが突出しているのが原因かもしれません。

 

観察

1枚の花びらが筒状で、その先が5つに分かれている。花の中から垂れ下がっている部分はめしべ。

株もとに出る葉と、 茎につく葉のかたちが大きく違う。株のもとの葉は丸く、茎の葉は先がとがった楕円形になっています。葉は輪生(茎に一カ所に数枚ずつつく)

ガクには小さな突起がある。


エノコログサのなかま

2023-08-30 | フィールドガイド--植物編--

エノコログサのなかま

 

エノコログサの仲間は、どれも1年草。

五穀の一つとして栽培されるアワ(粟)はエノコログサを祖先とする栽培植物である。

(「モデル植物となったエノコログサ―その雑草生物学への適用」福永健二;雑草研究 Vol. 65(4)140 ~ 149(2020))

 

アワは黄河文明で栽培の証拠は、紀元前5000~6000年前の遺跡から見つかっている。

エノコログサがアワの祖先であるが、アワがどこから始まったのかはいまだ明確な答えは見つかっていない。

『栽培植物と農耕の起源』(中尾佐助 1966 岩波新書)ではインド起源説、その他中央アジアからアフガニスタン‒パキスタン‒インド北西部の地域説、中国と日本を含む東アジア説など多くが論議されている。

エノコログサの実は硬く、剛毛が多く、食べるツブツブの部分(小穂)も小さく美味ではありません。

が、 炒めると香ばしく、 食べることはできます。油でポップコーンのようになるのをしょうかいしてるホームページもあります。

スズメなどの小鳥はこの実を食べにきます。しかし、食べられても、消化がわるく、そのまま体外に排出されるので、エノコログサがひろがる理由の一つです。

 

8月以降になると、アキノエノコログサのようがよく目立ちます。エノコログサの穂は比較的短く、直立しているものが多いですが、アキノエノコログサの穂はエノコログサより太く長く、先端を下に向けて、深く垂れています。

 

エノコログサは、俗称「猫じゃらし」の方が有名です。

漢字で書くと「狗尾草」と書き、「狗尾」は「子犬の尾」のことです。

昔の人は、あの草の様子を「子犬のしっぽ」とたとえました。

 

「よい秋や 犬ころ草も ころころと」小林一茶

 

英語では、「green Foxtail」と「キツネのしっぽ」と見立てています。


オニユリとコオニユリ

2023-08-24 | フィールドガイド--植物編--

オニユリとコオニユリ

 

オニユリの原産地は東アジアです

オニユリは食料として中国から入ってきたようで、成長が速いことから多く栽培され、それが野生化して各地で見られるようになりました。

日本には種子のできる二倍体のものはなく、理由はよくわかりませんが、三倍体のオニユリが日本に入ってきました。

他にオニユリのように種子ができないもは、来月みられるヒガンバナや春の花シャガ、夏の花のヤブカンゾウもおなじく種を作りません。

それらの植物はみな三倍体になっているからで、種子をつくる二倍体個体は日本では見られません。

 

三倍体とは、本来生物は二組の染色体をもっているものが、何らかの理由で3組の染色体をもっているのを三倍体といいます。

 

オニユリの場合種子はできませんが、ムカゴをつくり、ムカゴから数を増やすことができます。

ムカゴからは3年位で開花します。

観察

オニユリの花びらは6枚あるように見えますが、外側にある3枚は萼で、外花被と呼びます。内側の3枚が本来の花びらで、内花被です。

よく似たものにコオニユリがありますが、ムカゴがないので区別できます。


タカサゴユリとシンテンポウユリ

2023-08-21 | フィールドガイド--植物編--

タカサゴユリ

 

夏になると兵庫の高速道路の斜面にたくさんのユリの花が見られるようになってきた。

最初のころはテッポウユリと思っていたが、聞いたところタカサゴユリと教えてもらった。

ここ20年の間に一気に増えてきたようだ。

タカサゴユリはもともとは台湾固有種。

台湾では低地から海抜 3000mまでみられ、台湾の花として保護されている。

花はテッポウユリに似るが、花弁の外側に赤紫色の筋がある。

日本には1924 年に園芸用として輸入され,

その後野生化したので、日本各地で見られるようになった。

1つの蒴果には1000から1500個の種子があり、種子はポテトチップスのように薄く、周りに翼を持ち、散布しやすい形をしてる。

こうして、どんどん増えていった。

繁殖力が強いのだが、同じ場所で咲きづづけと連作障害をおこし、枯れてしまうそうで、

咲いて枯れ、別の場所で咲くという様子から「旅する花」とも。

 

タカサゴユリとシンテンポウユリ

タカサゴユリとみていたが、紫色のすじがない。

花が紫赤色を帯びず、白色なのはシンテッポウユリ。

シンテッポウユリはタカサゴユリとテッポウユリの交配により日本で1951年に作られた園芸種。

シンテッポウユリも野生化して各地で見られるようになってきているとか。

今回は、里山に向かう道すがらのユリの花

紫赤色を帯びないものが混じる場合はこのシンテッポウユリではないかと。

画像はシンテッポウユリと判断したが。

タカサゴユリかシンテンポウユリかは詳しくは遺伝子で!外見からではわからないのが多くなってきた。


スイレン

2023-08-16 | フィールドガイド--植物編--

スイレン

 

里山の水草であるヒツジグサを取り上げたが、外来種のスイレンは同じ仲間です。

国内のスイレン属はヒツジグサ以外、外来種・園芸品種です。

お盆の花の一つハス(蓮)はスイレンを混同された歴史があります。

エジプト原産のスイレンとハスをヨーロッパ人が混同したのです。

そのため、英語では蓮もスイレンもロータス(Lotus)ですが、植物の分類としては別種類です。

 

植物分類としては、睡蓮(Nymphaea)と蓮(Nelumbo nucifera)になります。

・睡蓮(水面近くに花が咲くものが多い。葉も水面に浮く。)(Nymphaea)(スイレン科)

・蓮(水面から高く咲くものが多い。葉も高さがある。)(Nelumbo nucifera)(ハス科)

 

 

 

「就眠運動」

植物の現象で、花が昼に開いて夜に閉じる現象のこと。

タンポポ、チューリップなどで観察できます。

スイレンも就眠運動をします。

エジプトのスイレンは、花を昼に開く青いスイレンと、夜に開く白いスイレンがあります。

古代エジプトの壁画に描かれている「聖なるハス」は熱帯スイレンです。

 

それらから多くの園芸品種が作られました。

昼の花は朝開いて夕方には閉じる就眠運動を3日間繰り返し、4日目に開いてその後水没します。

一つの花の寿命は4日と短いですが、開花期は5月下旬~10 月と長いので、この時期ため池などで水面に花を次々と咲かせる人々を楽しませます。

 

 

スイレンはエジプトの国花です。四千年も昔から生命の河ナイルの水辺に白と青のスイレンが咲き、古来より「聖なる花」として尊ばれてきました。白のスイレンは「ナイルの花嫁」とも呼ばれ、青のスイレンは、髪飾りなどのアクセサリーとして愛用されました。

 

蓮の原産地については、エジプト説、インド説、中国説などあります。それを特定できる遺物が発見されていないからです。


キキョウ

2023-08-05 | フィールドガイド--植物編--

キキョウ(キキョウ科)

 

「生きている由良川」をまとめるときに由良川の支流である上林川を調査したときキキョウはふつうにみられました。

ところが、今京都府のレッドデータにはキキョウは「山野の草地にはえる多年草で、近年個体数が激減しほとんど見られなくなった。」(京都府のレッドデータによる)

環境省のレッドデータブックをみると、兵庫県はまだ白色であるが、白色なのは隣の岡山県広島県だけで、全国的には京都府に近づいている状況だ。全国的に近年キキョウの野生株が減少しており,絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されていました。

兵庫県でも水田の周りは頻繁に草刈りがされるので少なくなったが、ため池などの堤の斜面ではまだ健在です。

近年では観賞用に庭などに植えられ,園芸植物として定着しました。

ほかにも、キキョウの仲間はカンパニュラという名前で最近園芸品種も多くみられます。カンパニュラとは小さな鐘のことです。

 

キキョウはその漢字から運を招く花として知られています。

花の形から「桔梗紋」が生まれ、明智光秀が桔梗紋を用いていたことは有名です。

 

キキョウは秋の七草のひとつ。

咲くのは、早く6月頃から咲き始め、9月ごろまで見られます。

 

日本でも古くから親しまれている植物です。

というのもの、万葉集の「朝がほ」と詠まれているのは桔梗(キキョウ)の事と考えられている。

現アサガオは奈良時代に中国から渡来。 貴重種だったので、万葉集に詠まれる庶民の花としてはまだ定着していないのでキキョウだろうと推測されている。

アサガオが一般的に広がったのは江戸時代になってから。

庶民に広がり、栽培熱はヒートして多様な変化アサガオが生まれ、高額で取引されたとか。

 

観察

茎は直立、高さ40~100cmになる。茎の切り口から乳液が出ます。

 

根は肥厚して太く白色の直根。漢方薬に利用される。

キキョウの根はデンプンを含まない。キキョウはデンプンではなくイヌリンという形の糖で貯蔵します。ゴボウやキクイモなどもキキョウと同じ形で貯蔵する。