野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

灯火にあつまるガと花にやってくるガ

2023-09-06 | 兵庫の自然

スズメガのなかま

 

スズメガの多くは夜行性なので、灯火の周りでよく観察できます。

スズメガは花や樹液へ吸蜜をするので、蜜源から観察することができます。

 

 

エゾスズメ 

時期:5 月上旬~ 8 月中旬.特に 7 月に多く見られます。年1化とされています。

食草はクルミ科オニグルミやノグルミ

成虫の静止姿勢独特で後翅を前翅よりも前に出します。

 

クチバスズメ

時期:5 月中旬~ 8 月下旬.特に 7 ~ 8 月に多く見られます。年 1 化とされています。

食草:ブナ科(コナラ,シラカシ,ウバメガシなど)

 

トビイロスズメ

時期:5 月中旬~ 9 月中旬ごろ、特に 7 ~ 8 月によく見られます。年 1 化

食草:マメ科(ニセアカシア,クズ,フジ,ハリエンジュなど)

秋に幼虫が土中に潜り前蛹越冬し、翌初夏に蛹化することが知られています。

オオスカシバ

時期:4 月下旬~ 10 月中旬まで見られますあ。特に 7 ~ 9 月に吸蜜の様子がよく見られます。

年 2 化。

食性:昼行性で,アベリアなど各種の花に訪れ吸蜜する.

食草:アカネ科(クチナシなど),スイカズラ科(ツキヌキニンドウ)

 

ホシホウジャク

時期:6 月下旬~ 12 月下旬.特に 9 月に吸蜜の様子がよく見られます。

食性:昼間に活動し,様々な花から吸蜜を行います。

食草:アカネ科(ヘクソカズラ,アカネ)


血吸いバッタ -ショウリョウバッター

2023-09-04 | 兵庫の自然

血吸いバッタ -ショウリョウバッター

人間の生き血を吸い取るバッタのことではなく、手でつかむと口から茶色の汁を出すことから「血吸いバッタ」と呼ぶ地域があります。飛ぶときにチキチキという音をだすのでチキチキバッタのほうが有名かもしれません。

7~10月に見られるこのバッタはショウリョウバッタです。

頭部が尖った、大きなバッタです。特にメスは大きく、8cmぐらいになります。

オスは細身で4~5cm程度と小さいです。7月から10月頃まで見られます

緑色型と褐色型や白い筋のはいっているのがいますがすべてショウリョウバッタです。見た目は別のバッタかもと思います。

これは後から色が変わるのではなくて、母親から生まれたときにすでにそれぞれの色をしています。

遺伝的に同じ色にならないよう何系統の色にわかれています。

枯れ葉が多い場所、草が茂っている場所、土が多い場所、などどんな場所で生まれて、目立たない色で生まれると生き残れる確率が高くなります。産む卵の数は100~300ほどで、卵の中どれかの個体が生き残れるような仕組みになっています。

 

明るい草のはえている原っぱが好きで、住宅地周辺でもよく見られます。特にエノコログサ、メヒシバ、カゼグサなどのイネ科の葉が大好きです。

驚くと、はねを使って遠くまで飛んでいきます。オスは、飛ぶときにチキチキという音をたてます。

どのように音をだしているのでしょうか。

オスは飛ぶときに前翅と後翅をうちあわせて「キチキチキチ・・・・・・」と音をだします。


街路樹でなくアオマツムシ

2023-09-03 | 兵庫の自然

アオマツムシ

 

街路樹で「リー・リー」とかん高く聞こえる。

アオマツムシだ。

アオマツムシは8月下旬から10月ごろにかけて街路樹の上で「リー・リー」と、かん高い音で連続して鳴いている。

アオマツムシはどちらかというと自然の森ではなく、街路樹や生け垣などでよく見られるのが特徴だ。

体長は20~25mmくらいで、鮮やかな緑色、オスの背中の羽には茶色い斑紋がある。

幼虫 ・成虫 とも夜間活動型で、日中は隠れてじっとしている。

夕方ごろからは活発な歩行活動を行う。

秋の終わりに、細い木の枝に卵を産み付けて死んでしまう。

卵で越冬、翌年の初夏に幼虫がかえる。

 

明治時代 1898 年に東京で発見され1970年ごろから、都心部などで急激に増えてきた。

中国からはいってきたといわれている。

関西で広がりはじめたのは戦後のこと。

関西では植木の産地の兵庫県宝塚市山本地域から広がりはじめ、大阪、京都を通って滋賀県に広がった。

 


日本に一番最初にやってきた外来のカミキリムシーラミーカミキリ

2023-09-02 | 兵庫の自然

日本に一番最初にやってきた外来のカミキリムシーラミーカミキリ

 

カミキリムシといえば最近はサクラなどを枯らすクビアカツヤカミキリが有名です。

特定外来種に指定されています。

それ以外にも果樹の害虫であるツヤハダゴマダラカミキリや街路樹に被害を与えるサビイロクワカミキリの被害も多く報告されています。

 

ラミーカミキリは樹木に被害をあたえない,

愛好家に人気のカミキリ虫です。

しかもカミキリムシで日本に一番早くやってきました。

 

もともとはインドシナ半島,中国,台湾に分布し、江戸時代長崎で見つかったという記録があります。

繊維の原料であるラミーの根について入ったと考えられています。

 

1930年には宮崎県, 1938年には福岡県, 1940年代には四国,兵庫県,愛知県,神奈川県につぎつぎと侵入定着しています。

 

兵庫県では、1948年に有馬温泉で見つかっているのが最初です。

 

幼虫はカラムシなどイラクサ科の茎の中で育ちます。

最近の研究ではマメ科のフジやムクゲなどが寄生植物になっています。

 

かつては兵庫をはじめ関西に生息する昆虫でしたが、今では関東までも生息するようになりました。

冬期の平均気温が4℃以上あれば生息できるため、温暖化の影響で分布が北上しているようです。

 

 


猪名川外来の魚(生きている猪名川改訂版より)訂正版

2023-07-20 | 兵庫の自然

◆なぜ外来魚が日本にいるの?

 カダヤシ、 オオクチバス、 ブルーギルはもともと北アメリカに住んでいる魚で、 それぞれ1916年、 1925年、 1960年に日本に輸入されました。 カダヤシはボウフラ退治のため、 オオクチバスとブルーギルはゲームフィシングのためそれぞれ特定の場所だけに放流されました。 ところが、 心ない人が持ち出し、 あちこちで放流したため、 日本各地の川や池沼に広まりました。 特に、オオクチバスやブルーギルは魚のこどもや小動物を好んで食べるため、 元からいた日本の魚が絶滅に危機に瀕しているところもあります。  みなさんも、 無責任な放流をしないようにしましょう。

 

オオクチバス (サンフィシュ科)

全長50cm。別名ブラックバス。体側に、黒い斑点が一列に並んでいます。ダム湖やため池、川の流れのゆるやかな場所にすんでいます。その名のとおり、大きな口で小魚、甲殻類、落下昆虫など動くものなら何でも口にい入れてしまいます。

 

カムルチー(タイワンドジョウ科)

全長約70cm。細長い体型で体側には2列の暗色斑があります。流れのゆるやかな場所の水草の中などに潜んでいます。肉食で小魚や甲殻類を食べています。

 

ブルーギル(サンフィッシュ科)

全長約25cm。エラ(英語で gill:ギル)ぶたの後方に濃紺の斑点があるのでこの名がつきました。ダム湖やため池などの流れのゆるやかな場所を好みます。水生昆虫、甲殻類、小魚、魚卵などを好んで食べます。

 

(注)

カムルチー(タイワンドジョウ科)とブルーギル(サンフィッシュ科)の説明が入れ替わっているとしてきをうけました。訂正させていただきます。

指摘ありがとうございました。

 

 

 


サイコクヒメコウホネ(スイレン科)

2023-07-17 | 兵庫の自然

サイコクヒメコウホネ(スイレン科)

 

サイコクヒメコウホネは関西ではヒメコウホネだった。

「京都の野草図鑑」(京都新聞社1985年)をみるとヒメコウホネと記載されている。

「ヒメコウホネ」は愛知県のをタイプ産地としていて、関西のヒメコウホネとはちがうことがわかったのだ。

関西のヒメコウホネはコウホネ×ヒメコウホネ、コウホネ×オグラコウホネ、コウホネ×ヒメコウホネ×オグラコウホネの交雑種としてサイコクヒメコウホネ(Nuphar saikokuensis Shiga & Kadono)となった。(志賀:2007)

 

兵庫県ではcランク。京都府では絶滅危惧種になっている。

 

今回はあびき湿原を環境省が生物多様性の観点から重要度の高い湿地として指定している

選定理由として「県で規模が大きい湿原.多くの貴重な動植物の生息・生育地.周囲にはカタクリが,ため池にはサイゴクヒメコウホネが自生しており,地域全体として重要な生態系を形成している.」としている。

湿原の近くのため池でサイコクヒメコウホネをみることができた。

花はコウホネより小型の黄色の花が咲く。

花は雌性先熟で、雌しべが先に、雄しべが後に咲く。

 

 

 


食虫植物 モウセンゴケの花が咲いている

2023-07-02 | 兵庫の自然

モウセンゴケ

モウセンゴケは湿原を代表する植物のひとつ。虫を捕らえて、消化し、虫に含まれていた窒素やリン酸などの栄養を吸収する食虫植物である。

 

里山では、湧水のあるため池の斜面にはえる。

ササやススキを取り除いたあと、斜面に日光があたりはじめ、ため池と接する栄養のない土壌で3株ほどが生えているのを見つけたのは20年前。

年ごとに、数株ずつふえ、ことしは50株以上が確認できた。

 

このため池は、基盤が酸性岩で、酸性岩の上に0~3cmほどの土壌がたい積する。その薄い土壌の上にモウセンゴケがはえる。土壌がほとんどないので、ほかの植物も定着しにくい。

ササなどが生える前には、ミカヅキグサなどの湿地の植物があったのかもしれないが、今はモウセンゴケのみである。

 

この場所は谷筋にせきとめて、ため池作られた場所。

もともとは大小合わせて6枚あったが、現在、ため池の状態で残っているのは4枚。農業用水としては利用されていない。モウセンゴケのある場所は、その中間の池となる。

 

里山でのこのような湿地が面積が大きくなって、湿原となる。湿原として保護されている場所が兵庫県には数か所ある。兵庫県の湿原は「湧水湿地」と分類されたり、「鉱質土壌湿原(泥炭地をもたない湿原)」と分類されたりする。

 湿原と名がついているため、兵庫県の湿原の場合、有名な高層湿原である尾瀬ヶ原のようなイメージを持つ方もあり、県内のある湿原を見に行ったが見つからず、遭難したというニュースが今年あった。

尾瀬ケ原のつもりだったのが、知らぬ間に通り過ぎ、いつまでたっても見つからないので道にまよってしまったという話で、笑えない話となってしまった。

 兵庫県の湿原は「湧水湿地」と定義されるように湧水から緩やかな谷筋に湿地ができた湿原。尾瀬ヶ原のように泥炭地が形成された上にできた湿原と少し性質が違う。

 

モウセンゴケ

葉は地面から放射状に伸び、長い毛が生えています。毛の先にはねばついた液をだす。

葉に小型の虫がとまると、この毛がからめとり、そのまま消化するが、どのようにして虫とそれ以外と区別すのかはよくわかっていない。

名は、ひな人形の飾りつけをする赤い敷物を「緋毛氈(ひもうせん)」といいますが、毛が密についた毛氈(もうせん)状の葉の様子と、コケのような小さな植物という特徴からつきました。

6月から7月にかけて細い茎の先に十数個の白色の花がつく。花は午前中に開き、午後には閉じる。


ヒメタイコウチ ―湿地の貴重な昆虫―

2023-06-27 | 兵庫の自然

ヒメタイコウチ ―湿地の貴重な昆虫―

 

「生きている武庫川(改訂版)」に掲載したヒメタイコウチ。タイコウチとの違いがわかるように比較して掲載した。

 武庫川流域にある湿地などで見られるヒメタイコウチ。生息される地域が限定される貴重な生き物。

初めて見つかったのが1978年8月、兵庫県西宮市の甲山湿原(かぶとやましつげん)で市西宮高校生物部の観察会でのこと。

兵庫県ではその後、三田市の北摂ニュータウン造成のための調査(1973年)で発見。その後、宝塚市、明石市や加古川市などでも見つかっているが、日本では、三重県、岐阜県、愛知県の東海地方と静岡県にしかいない。愛知県西尾市では天然記念物になっている。1995年には四国香川県でも見つかっている。

 

 

ヒメタイコウチ

湿原のような湧水のある湿地で見られる。

前肢(まえあし)が変形して捕獲肢となっており、小動物をつかまえて食べる。

ヒメタイコウチの一番大きな特徴は、後麹が退化して飛ぶことができないことがあげられる。

 

ヒメタイコウチは海外では朝鮮、中国北部でみつかっているので、ウルム氷期に大陸と陸続きのときに日本にやってきた(日浦;1978)といわれているが、堀・佐藤 (1984)は,中新世後期~更新世に東海地方から近畿地方以西にまで、拡がった現在の瀬戸内海が東海まで広がった時期が何度かあり、海水ではなく淡水域の時期に、ヒメタイコウチが日本列島内で分布拡大したのではないかと考えている。

それは、兵庫県の分布地は、河川などの水系によって開析が進んだ、鮮新世から更新世の堆積物からなる正陵地および台地と沖積層との境界近く(三宅;1985b)で見つかっている。


ハンゲショウ

2023-06-22 | 兵庫の自然

ハンゲショウ(ドクダミ科)

 

梅雨で今日も関西は本降り。

梅雨のころに開花する花の一つにハンゲショウがあります。

低地の水辺や湿地に群生しているのが見られます。臭気のある多年草で、群生するのは、地下茎を張り巡らせながら増えていくためです。

穂のわきにある葉が白く色づき、 遠くからでもよく目立ちます。

穂がハンゲショウの花の集まりで花穂(かすい)といいます。ドクダミと同じようにがくやはなびらはありません。

雨が花の中に入りにくくするため、筒状に小さな花が密集していて、下から順に咲きます。開花時になると花穂に近い2~3枚の葉の下半分が白くなります。これが、昆虫を誘引する仕組みになります。

花穂の個々の花を裸花 らか)と言い、 ドクダミ科の植物に見られる特徴のひとつです。花が終わると、 白く色づいた葉は薄緑色になります。

 

 

ハンゲショウはドクダミ科です。おもしろいことにドクダミ属はドクダミ1種しかなく、東アジアにしか分布しませんが、ハンゲショウ属は北米とアジアにそれぞれ 1 種ずつ計 2 種が含まれるだけで、そのうちの 1 種ハンゲショウは東アジアから東南アジアにしかありません。日本では、この時期ドクダミもハンゲショウも両方みることができる位置にあります。

東アジアと北米に見られる現象は、かって温暖な時期は北半球全域にあった植物が氷河期をむかえ、温暖な東アジアと北米の中緯度の温帯域で雨が多いところに生き残ったと考えられています。

ハンゲショウは農作業のめやすとして、夏至から半夏(11日あと)の間におわらせると言い伝えがあり、これが咲くまでに田植えを終えるめじるしになっていました。

 

関西では、半夏生の頃にタコを食べる習慣があります。淡路島の明石海峡公園ではハンゲショウが5000株植えてあり、今が見ごろ。


グンバイトンボ

2023-06-21 | 兵庫の自然

グンバイトンボ

兵庫県のホームページの種の概要によると

「長34~40mm程度。♂は中・後肢の脛節が軍配状になっており他種との識別は容易であるが、♀はモノサシトンボに似ている。砂泥底の抽水植物や沈水植物が繁茂する河川中流域などに生息する。成虫

は5月~8月に見られる。」

とある。

6月里山のため池周辺でみられる。概要によると河川の中流となっており近くの小川で砂泥の場所が見当たらない。ずいぶん離れたところからとんできているのであろうか。

兵庫県以外では、京都府,滋賀県,大阪府北部に分布している。

岐阜県のホームページによると

「丘陵帯に生息する。谷間の湧水があるような緩やかな流れのある湿地などに見られる。」

とあり、里山のいくらかのため池は湧水で成り立つ池もあるので、その所で産卵をしているだろうか。

 

このグンバイトンボ、オスの中あし、後ろあしの一部は、白色で軍配(ぐんばい)状に広がっていてよく目立つので、この名前が付いた。この「グンバイ」が、オスのなわばりをまもるために、ほかのオスがやってくると、この白い軍配状のあしを広げて威嚇する。

メスに対しても同じようにあしを広げて自分を見せびらかすのに利用する。

 

幼虫(ヤゴ)は、緩やかな流れにある水草などにつかまりながら、水生昆虫などを捕まえて食べる。

 

グンバイトンボの産地は、生息には清らかで流れのゆるやかな湧き水が必要と条件のため全国的には減少しており、準絶滅危惧種になっている。