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日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

株主リストに記載する株主

2023-12-13 10:51:36 | 商業法人登記

平成28年10月1日より、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合又は登記すべき事項について株主全員の同意が必要な時は、「株主リスト」が添付書面として必要書類になりました。

7年以上経過しているので、実務でも浸透し当たり前のようになったと思います。

株主リストに記載するのは、①議決権数の上位10名の株主、②議決権割合が3分の2に達するまでの株主、①と②でいずれか少ない方の株主について記載したものが必要です。

自己株式のように議決権を行使できない株式を有する株主は記載しませんが、当該株主総会に欠席または議決権を行使しなかった株主は記載する必要があります。私は勘違いをして、株主総会で議決権を行使した株主のみを記載して提出したので、見事に補正となりました(議決権を行使した株主のみの記載でも、要件を満たしていれば補正にならなかったと思いますが)。

なお遺産分割協議前の株主の株式がある場合には、相続人全員の住所及び氏名を記載する必要がありますが、株主としては相続人全員ではなく、被相続人の人数でカウントします。

遺産分割前の株式の議決権の行使 - 司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上 (goo.ne.jp)

自己株式がある場合の株主総会議事録の記載方法及び株主リストの作成方法 - 司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上 (goo.ne.jp)


株主総会の普通決議の定足数

2023-12-12 10:48:32 | 商業法人登記

株主総会の決議は、法令または定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した当該株主の議決権の過半数の賛成により成立します(会社法309条1項)。

株主総会の普通決議の定足数は、定款の定めにより変更可能です。法定の定足数の定めを排除し、「出席した株主の議決権の過半数の賛成により決議が成立する。」と定めることも問題ありません。

ただし取締役、会計参与、監査役といった役員を選任または解任する株主総会の決議は、上記のように定足数を完全に排除することは出来ず「定足数は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1未満とすることはできない(会社法341条)」とされています。役員の選任に関しては、定足数は「議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上が出席し」と定めるのがギリギリのラインだと思います。

なお、特例有限会社についても同様です。

 


相続登記後に相続放棄をしていることが判明し、錯誤により所有権移転登記を抹消する場合

2023-12-07 11:12:12 | 不動産登記

先日ある相続登記が完了したところ、相続した相続人が相続放棄をしていたことが判明しました。

そもそも相続が発生したのは3年前で、本人の意向で相続放棄をしたのではなく、税理士のアドバイスがあって相続放棄をした経緯があるため、税理士の指摘を受けて相続放棄をしていたことに後から気が付いたようです。

相続放棄の手続きをしたのは、その税理士の知り合いの司法書士だったようですが、当時、その司法書士から相続登記の手続きを一緒にしたらどうかという話があったものの、本人が急がなくていいのであれば今すぐにやる必要もないと判断してそのまま放置していたようです。私はその税理士とは面識はないので、そのような経緯を知る由もなく、本人も忘れていたのだから仕方がなかったとはいえ、登録免許税を2重に支払わなければならず、痛い出費となってしまいます。今回の登録免許税は2万円程度だったのでまだいい方だと思いますが、これが何十万だと思うとぞっとします。来年4月から相続登記義務化が始まりますが、やはり相続登記は速やかに手続きをした方がいいと思います。

ところで今回のように一旦相続登記をしたものの、後に相続人が相続放棄をしていたことを失念していたため、相続登記を抹消する場合ですが、登記原因は民法95条1項には該当しないので「年月日取消」ではなく「錯誤」になります。登記原因証明情報は、相続放棄申述受理通知書と権利者及び義務者の戸籍謄本を添付したのですが、法務局から報告形式の登記原因証明情報を作成してほしいと指摘を受けました。この辺りは、法務局ごと取扱いが違うのかもしれません。

参考までに登記原因証明情報に記載する「登記の原因となる事実又は法律行為」の記載例を記載しておきます。

(1)令和〇年〇月〇日、本件不動産の名義人Aの死亡により相続が開始し、Bが相続したとしたとしてB名義への所有権移転登記(令和〇年〇月〇日〇〇地方法務局〇〇支局受付第〇号)がなされた。

(2)しかしBは〇〇家庭裁判所に、Aの相続につき相続を放棄する旨の申述をしており、これが受理されていた。

(3)よって、Bは相続人ではなく、B名義の登記は無効であるので抹消する。


相続権の範囲(直系尊属)

2023-12-06 11:16:31 | 相続

被相続人に子供はなく直系尊属が相続人となる場合。

父親は既に他界し、母親が相続人となるケースでは、既に亡くなった父親には代襲相続は発生せず、父親の両親(被相続人からみて祖父母)には相続権はありませんので、母親のみが相続人になるのは、以前の投稿したとおりです。

直系尊属に代襲相続はない - 司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上 (goo.ne.jp)

それでは同じケースで、相続人となった母親が相続放棄をした場合はどうなるのか。

その場合は、次の順位である兄弟姉妹に相続権が移るのではなく、被相続人の父方及び母方の両親(被相続人の祖父母)が生存していればそちらに移ります。民法889条の規定で「直系尊属の場合は、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。」とされているからです。

両親がいなければ兄弟姉妹に相続権が移るケースがほとんどだと思いますが、不幸にも若くして亡くなってしまったケースではありえなくないと思いますので注意が必要です。