仕事と生活の授業(続き)

前に作ったホームページは、あまり読まれないようなのでブログで再挑戦です。

23.『この世界の片隅に』(アニメーション映画)その二 2016年 原作 こうの史代 監督 片渕須直

2016年12月12日 | 映画の感想文



 『この世界の片隅に』の感想の続きです。


 映画の序盤中盤を経て、

 現実にはあり得ない化け物や座敷わらしを

 何の違和感もなく受け入れる心の下地が

 ゆっくりと作られていきます。


 そして映画の終盤。

 空襲が終わりほっとして防空壕から出てきた

 人々を狙い撃ちにする時限式の投下爆弾も、


 日本家屋を効率的に焼き払い、

 火の海を作ることで一人でも多くの民間人を

 殺すことができるよう工夫された焼夷弾も、


 映画の世界に入り込み、あり得ない

 ファンタジーを現実として受け入れてしまっている観客は、

 ファンタジー以上にあり得ない戦争におけるできごとを、

 自分自身の体験として受け入れざるを得なくなっています。


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 同情(シンパシー)や感情移入(エンパシー)によって

 涙を通じた戦争体験の継承という道もあります。


 戦争の悲惨な実状を克明に描くことで、

 恐怖や嫌悪による戦争に対する拒絶を伝える道もあります。


 そのどちらでもない道、

 『日常としてのファンタジー』

 『ファンタジーとしての日常』

 という回路を使って、


 現在の常識では想像しがたい事柄を

 観客に体験させるという道を選び、

 成功しています。


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 高い芸術性をもっているこの映画は、

 それ自体に価値があって、

 何か他の目的のために優れている

 ということではありません。


 それでも、

 戦争体験の継承という重要な使命を

 果たすことのできる素晴らしい媒体である

 という側面をこの映画は持っています。


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コメント
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