山クジラの田舎暮らし

岩手県北の田舎に生息する「山クジラ」です。定年後の田舎暮らしや趣味の山行きのことなど、発信していきます。

『猫大名』=神坂次郎著

2013-05-15 07:32:37 | 読書

 神坂次郎著の『猫大名』を読んだ。2009年1月25日出版の中公文庫版である。もともとは『猫男爵」という名前で小学館より2002年12月に出版されたものを改題している。神坂次郎という著者の本は初めてである。神坂次郎は1927年和歌山県生まれ、俳優座演出部など演劇関係を転々としたあと、小説の世界に入ったという。82年『黒潮の岸部』で第2回日本文芸大賞を受賞し、84年『元禄御畳奉行の日記』がベストセラーとなったらしいが、私のまったく知らない情報である。

 新田義貞の末裔・岩松家はわずか120石と霊験あらたかな『猫絵』でその名を知られていた。21代当主・満次郎俊純が明治維新後に男爵に叙せらるまでの波乱万丈の日々を、幕末の世相・騒乱とともに描いている。

 この本は、八戸に出かけた際に寄った古本屋(大手チェーン店)で本棚を物色している時に見つけ買っておいたものだ。まず何より題名が変わっていて興味を感じたのである。読んでみると、わずか120石の「大名」がいたことに驚かされた。その大名の足跡を追いかけ、小説にした作者の目の付け所がとても面白い。ついでに言えば私の故郷は群馬県渋川市だが、実家の墓所の一角に新田氏の末裔のなんのなにがしという墓があって、かつて徳川家で調査に来たという碑があった。群馬は新田氏の出どころで、徳川が新田源氏の末裔を名乗って征夷大将軍になったことから、こういう言い伝えのようなものがたくさんある。新田義貞は鎌倉幕府を滅ぼし、建武の中興の先駆けをした人物として群馬では英雄と思われていた。歴史を紐解くとそう簡単な問題ではないのだが、地元ではそうだったのである。その意味でも、『猫大名』に妙に親近感を感じてしまった。