津村記久子さん作の小説「つまらない住宅地のすべての家」を読了しました。確か数か月前に新潟日報の書評で紹介されていて、「おもしろそうだなぁ…」と思って図書館に予約していた本でした。貸し出しの順番が回ってきて実際に読む頃には、書評に書かれていた内容やどんなことに興味をもってなぜ読もうと思ったかなんて、すっかり忘れているんですけどね。まぁいつもそんな感じです。
とある町の、路地を挟んで10軒の家が立ち並ぶ住宅地。そこに、女性受刑者が刑務所から脱走したとのニュースが入ります。自治会長の提案で、住民は交代で見張りをはじめるが……。住宅地で暮らす人間それぞれの生活と心の中を描く長編小説です。
まぁ簡単に言うとそういうことなのですが、とにかく登場人物が多いのですよ。10軒の家にはそれぞれ家族がおり(1人暮らしの青年もいるけど)、それぞれの生活と交友関係があり、それが微妙に繋がり合っているわけで、読み初めてすぐに「あれ?これってどこの家の誰の話?」「この人ってあの人だったかな?」みたいなことが頻繁に起こりました。歳をとるってイヤですね。まったくもう。
本の巻頭には、10軒の家がどのように配置されているかという住宅地の地図と、簡単な家族構成が記載されているので、最初はそれで時々確認しながら読み進めたのですが、途中からは自分で「登場人物一覧表」を作って、氏名や性格・互いの関係性などを書き込みこちらも併せて確認しながら読んでいったら、よく理解できました。
母親の不在を隠そうとする父親にあきれている中学生、育児放棄され食費のやりくりに悩む小学生、お人よしの同僚と事実婚している大学講師など、多様な語り手が逃亡犯のニュースに触発され、自らの抱える問題に向き合っていく様子がとてもおもしろかったです。住民たちのささやかな相互扶助の積み重ねが、巧みな伏線になっているのもお見事でした。関係者が大集合して、逃亡犯の謎が解かれる終盤は圧巻でした。
ボクは、「きっとこの小説、近いうちに映画化かドラマ化されるのは間違いないだろうな…」と思いました。「そうしたらこの役はこの役者さんに…」などと考えながら読んでいましたもの。あぁおもしろかった。発達障害やネグレクトなどで悩む子どもたちや犯罪に走りそうな青年が、周りの大人たちとの関わりの中で変化していく様子が、ボクにはとても印象的でした。