総合診療医からの健康アドバイス

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アイネットラジオ4 コロナ感染症病床を確保する方法はある。しかし 行き過ぎた医療の細分化、専門家が感染症診療を難しくしている

2021-05-14 10:42:33 | ラジオ放送の中身

 皆様、こんにちは。総合診療医からの健康アドバイスの時間です。

 今日の沖縄は晴れ時々曇り。予想最高気温は29度です。それでは、前回からの続きです。どうぞ。

 

アーサー 今、触れられました医療提供体制の整備についてなんですが、今日私の方からそこを整理しつつ、ご意見をうかがいたいと思います。

 

 まずひとつめ、入院病床の確保ということで、もともと県発表の資料では最大507床。

 県内の重点医療機関に県内3病院が指定されておりますが、その3病院で最大507床を確保というのをうたいつつ、4月12日時点で、入院者数385人に対し、確保した病床が381という新聞発表がありました。

 このような数字の乖離がなぜ起きてしまうのかという素朴な疑問があります。

 このあたり、どうご覧になりますか。

 

徳田 ベッド数というのは結構ダイナミックに変化するんです。

 というのは、ICUというのは病院の中で固定されている部分ですけど、急性期病棟というのは、医療状況に合わせて変化させるんですね。

 同じ病棟の中でも急性期病棟の病床数を増やしたりすることができる。

 午前にはなくても午後からできるということもありえるんです。

 病院によりますが。

 ですから、病床数にかんしては細かい数字に少しずれが出てくるというのは当然あり得ます。

 

アーサー それを考えると、最大病床数をうたうというよりも、現場の実情が刻一刻と動くものに対応せざるを得ない、と。

 

徳田 ええ、ですから病床のコロナ感染症の占拠率が増えたら、それに合わせてまたどんどん増やすという可能性は高いと思いますね。

 実際、海外などでは手術室もコロナ病床になっている病院もあるんです。

 どうして手術室かというと、全身麻酔をかける機会があるじゃないですか、意識を鎮静して呼吸を止めることもあるので、そうしたときには人工呼吸器が必要です。

 ですから手術室は、すべての部屋に人工呼吸器がそろっているんです。

 問題は通常の手術室の人工呼吸器は陽圧だということ。

 そこを陰圧に改造するだけでコロナ病床になるんですよ。

 

アーサー なるほど。

 

徳田 アメリカの急性期病院のほとんどはそういうやり方です。

 コロナで病床がひっ迫してくると、そういう対応もしたんです。

 

 一般病棟では足りないとなったとき、まずは一般病棟に人工呼吸器を入れてやっていました。

 その人工呼吸器は自動車会社などに緊急で製造させたものです。

 昨年、前の大統領のトランプさんがそういう命令を出して、いわゆるBIG3、フォード、GM、フィアット・クライスラーはじめ、いろいろなところに製造させて。

 そうやって大量に作って、医療機関に送って。

 ですからアメリカの場合、相当の数のコロナ患者さんを収容できる。

 一つの病院で何百人とか、診ることができる。

 

 日本の場合はもともとICU病床が少ないというのがあります。

 一般病床が多いですけれども、コロナを診ることができる、コロナの患者さんをケアできるスタッフが少ない、足りない。

 看護師さんもそうですし、医師も、人工呼吸器を扱ったり、全身管理ができる医師じゃないといけないわけですが、呼吸器感染症ができて全身が診れる総合内科的なドクターが必要なんですけど、そういう人が極めて少ない。

 例えば内科でも、10診療科くらいに分かれていますが、呼吸器とか感染症内科の医師はもちろんコロナを診ることができます。

 そちらの専門ですから。

 ですが、例えば消化器内科、糖尿病内科とか内分泌内科とか、リュウマチ膠原病内科とか、まあ、研修を受けていれば診ることができる人もいます。

 長期研修を受けていて、人工呼吸器を使えるといったようなことができるドクターならば。

 しかしそうした研修をやっていなければできない。

 私はできません、ということになるわけです。

 だから断る。

 建物があれば、診れるというわけではないんです。

 

 手術室を改造して、そこで診るということが欧米ではできます。

 欧米では総合内科のドクターがたくさんいますから。

 ところが日本の場合は、内科の中でも細分化されていて、診ることができる人は一部です。

 内科以外はさらにそう。

 眼科、耳鼻科、整形外科、形成外科とかいろいろあるわけです。

 昔でしたら、診療科にかかわらずどんな患者さんも診るというドクターが結構多かったですけど、今は専門分化、細分化がかなり行き過ぎている。

 その分、専門診療で、その分野を詳しく診るというメリットはありますが、皮膚科とか眼科の先生に、明日からコロナを診てくださいといっても、人工呼吸器がそこにあっても「スイッチはどこですか」といったことになる。

 無理なんです。

 

 だから全国ですぐに病棟がいっぱいになって、医療ひっ迫で、実際に患者さんの受け入れができずに自宅で急変して亡くなられているケースが大阪でも、東京でも起こっています。

 第一波のときにもありましたけど、第三波でもありましたし。

 

 沖縄ではそれがない。

 なぜかというと、沖縄では総合的な診療ができる体制が整っているということ。

 プラス、基本的に救急患者さんは断らないですから沖縄の病院の場合は。

 我々の関連病院もそうですけれど。

 いっぱいでも断らないです。

 実際今回のコロナに関しては、県庁の対策本部に、どの病院がどのくらいコロナの患者さんを診て、あと何人受け入れることができるか、リアルタイムに共有データとして見れることになっているんです。

 そこで回すことができる。

 

 次回に続く。

 

 

 梅雨の晴れ間が約二週間続くそうです。

 

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