弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷に関し使用者が負う注意義務の具体的内容

2011-07-10 | 日記
Q121 業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷に関し,使用者が負う注意義務の具体的内容はどのようなものですか?

 使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うとするのが,最高裁判例(電通事件最高裁第二小法廷平成12年3月24日判決,労判779-13)です。
 この最高裁判決が認めたのは,「不法行為責任」における注意義務ですが,安全配慮義務(労働契約法5条,「使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をする者とする。」)の具体的内容を議論する際にも,参考にすべきものと思われます。

弁護士 藤田 進太郎

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労災保険給付と労働者からの損害賠償請求

2011-07-10 | 日記
Q120 労災保険給付がなされれば,使用者は,労働者から損害賠償請求を受けずに済むのでしょうか?

 労働基準法75条~88条は,労働者が業務上負傷し,または疾病にかかった場合における災害補償について規定しています。
 この災害補償責任は使用者の無過失責任であり,過失相殺がなされることはなく,原則として平均賃金に対する定率により補償額が決定されており,労災保険法により労災保険制度が整備されています。
 しかし,労災保険給付は,慰謝料は対象としておらず,休業損害や逸失利益の全額を補償するものではありません。
 したがって,労災保険給付がなされている場合であっても,使用者は,労働者から,慰謝料,休業損害や逸失利益で補償されなかった金額について,損害賠償請求を受ける可能性があるということになります。
 労災保険給付がなされている事案では,業務起因性が肯定されているわけですから,労災保険給付がなされていない事案以上に,使用者の責任が認められやすいとさえ,評価することができると思います。

弁護士 藤田 進太郎

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労働審判に異議が申し立てられて訴訟に移行した場合における解決までの時間

2011-07-10 | 日記
Q119 労働審判に異議が申し立てられて訴訟に移行した場合,最初から訴訟が提起された場合と比べて,解決までの時間が長くなってしまうのでしょうか?

 労働審判から訴訟に移行した場合,労働審判手続において既に争点の整理ができているケースが多いことから,和解交渉のため期日を重ねたというような事案でない限り,異議申立て後,判決までの期間は短くなっており,労働審判を経ずに訴訟が提起された場合と比較して,解決までの時間が長くなってしまうということは多くないようです。
 ただし,「訴状に代わる準備書面」の記載内容が労働審判手続を踏まえた内容になっていないような場合は,答弁書も労働審判における答弁書と同じような内容のものが提出されることになりがちであり,同じような主張・反論が繰り返された結果,解決までの時間が無駄に長くなってしまう可能性がありますので,訴訟に移行した後の主張書面には,労働審判の経緯を踏まえた主張・反論をしっかり記載する必要があります。

弁護士 藤田 進太郎

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労働審判に異議を申し立てて訴訟に移行した場合の流れ

2011-07-10 | 日記
Q118 労働審判に異議を申し立てて訴訟に移行した場合,どのような流れで訴訟が進められるのでしょうか?

 訴訟手続に移行した場合,労働審判の代理人が引き続き訴訟を受任する場合であっても,新たに訴訟委任状を追完する必要があります。
 原告(労働審判手続における申立人)に対しては,異議申立てから2~3週間程度の間に,労働審判手続を踏まえた,「訴状に代わる準備書面」及び書証の提出,提訴手数料の追納及び郵便切手の予納が指示されることになります。
 これに対し,被告(労働審判手続における相手方)は,「訴状に代わる準備書面」に対する「答弁書」等を提出し,第1回訴訟期日に臨むことになります。

弁護士 藤田 進太郎

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労働審判に対し異議を申し立てるかどうかの判断基準

2011-07-10 | 日記
Q117 労働審判に対し異議を申し立てるかどうか迷っています。何を基準に判断すればいいでしょうか?

 労働審判手続で解決しておくべきか,訴訟で戦うべきかの判断についてですが,私の個人的な感覚としては,他の労働者への波及効果等の理由から,会社経営上争う必要が高いものを除き,できるだけ労働審判手続において解決すべき事案が多いのではないかと考えています。
 代理人の弁護士が異議を申し立てるべきだという意見の場合は,異議を申し立てて訴訟で争う価値があるのかもしれません。
 しかし,代理人の弁護士労働審判手続で調停をまとめるべきだとか,労働審判に対し異議を申し立てずにそのまま解決した方がいいという意見を述べている場合は,異議を申し立てていい結果に終わることは稀ではないかと思います。
 感情的な判断は差し控え,弁護士の意見に耳を傾ける経営姿勢が重要と思われます。

弁護士 藤田 進太郎

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労働審判手続において調停が成立しなかった場合

2011-07-10 | 日記
Q116 労働審判手続において調停が成立しなかった場合は,どうなるのですか?

 労働審判委員会から示された調停案を当事者のいずれかが最後まで受け入れなかった場合は,24条終了するような場合を除き,審理の終結が宣言され,概ね調停案に沿った内容の労働審判が当事者双方に告知されるか,審判書が送達されることになります。
 労働審判に対しては,告知・送達から2週間以内に異議を申し立てることができますが,当事者いずれも異議を申し立てなかった場合は,労働審判は裁判上の和解と同一の効力(既判力,執行力等)が生じます。
 他方,当事者いずれかから異議が申し立てられた場合は,異議を申し立てた当事者に有利な内容の部分を含めた労働審判の効力そのものが失われ,訴訟手続に移行します。
 労働審判に対し異議を申し立てた結果,移行後の訴訟で,労働審判で支払を命じられた金額よりも多額の金銭の支払を命じられるということもよくありますので,労働審判に対し異議を申し立てるかどうかを検討する際には,注意が必要です。

弁護士 藤田 進太郎

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