就業規則に規定する普通解雇事由以外の理由に基づき,普通解雇することはできますか?
就業規則が存在する会社については,就業規則に規定された普通解雇事由に基づいてのみ普通解雇 できるとする見解と,就業規則に規定されていない解雇事由によっても普通解雇できるとする見解があり,現時点では論争に決着がついていません。
この論争に巻き込まれないようにするため,「その他,前各号に準じる事由があるとき。」といった包括的な条項を普通解雇事由として規定しておくようにして下さい。
就業規則が存在する会社については,就業規則に規定された普通解雇事由に基づいてのみ普通解雇 できるとする見解と,就業規則に規定されていない解雇事由によっても普通解雇できるとする見解があり,現時点では論争に決着がついていません。
この論争に巻き込まれないようにするため,「その他,前各号に準じる事由があるとき。」といった包括的な条項を普通解雇事由として規定しておくようにして下さい。
就業規則がない会社でも,民法627条に基づき普通解雇 することができます。
懲戒解雇 が,就業規則がない場合には原則として行うことができないのとは対照的です。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において,雇用は,解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には,解約の申入れは,次期以後についてすることができる。ただし,その解約の申入れは,当期の前半にしなければならない。
3 6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には,前項の解約の申入れは,3か月前にしなければならない。
普通解雇 の有効性を判断するにあたっては,
① 就業規則の普通解雇事由に該当するか
② 解雇権濫用(労契法16条)に当たらないか
③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
④ 解雇 が法律上制限されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。
普通解雇 (狭義)とは,能力不足,勤務態度不良,業務命令違反等,労働者に責任のある事由による解雇 のことをいいます。
普通解雇(広義)は,普通解雇(狭義)に整理解雇 (使用者側の経営上の理由による解雇)を加えたものをいうのが一般的です。
普通解雇(広義)=普通解雇(狭義)+整理解雇
解雇 が法律上制限されている主な場合としては,以下のようなものがあります。
① 国籍,信条又は社会的身分による差別的取扱いの禁止(労基法3条)
② 公民権行使を理由とする解雇の禁止(労基法7条)
③ 業務上の負傷・疾病の休業期間等,産前産後休業期間等の解雇制限(労基法19条)
④ 性別を理由とする差別的取扱いの禁止(男女雇用機会均等法6条4号)
⑤ 婚姻,妊娠,出産,産前産後休業を理由する不利益取扱いの禁止(男女雇用機会均等法9条)
⑥ 育児休業,介護休業,子の看護休暇,所定外労働の制限,時間外労働の制限,深夜業の制限,所定労働時間の短縮措置の申出等を理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(育児介護休業法10条,16条,16条の4,16条の9,18条の2,20条の2,23条の2)
⑦ 通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(パートタイム労働法8条)
⑧ 都道府県労働局長に対し個別労働関係紛争解決の援助を求めたこと,あっせんを申請したことを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(個別労働関係紛争解決促進法4条3項,5条2項)
⑨ 法違反を監督官庁(労基署等)に申告したことを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(労基法104条2項,最低賃金法34条2項,安衛法97条2項,賃確法14条2項等)
⑩ 公益通報したことを理由とする解雇の無効(公益通報者保護法3条)
⑪ 不当労働行為の禁止(労働組合法7条)