労働者代表の意見聴取や労基署への届出を怠った場合,就業規則変更の効力はどうなりますか。
就業規則を変更するに当たっては,労働者代表の意見聴取や労基署への届出が必要となります(労契法11条・労基法90条)。
しかし,就業規則変更の効力について定めた労契法10条は,就業規則変更が有効となるための要件として労働者代表の意見聴取や労基署への届出を規定していません。
したがって,労働者代表の意見聴取や労基署への届出がなかったからといって直ちに就業規則変更の効力が否定されるものではなく,同条の「その他の就業規則の変更に係る事情」として考慮されるにとどまるものと考えられます。
甲商事事件東京地裁平成27年2月18日判決も,以下のとおり判示し,私見と同様の結論を採っています。
「本件では,就業規則の変更にあたって,労働基準監督署への届出がなされ(書証略),外形上,労働者代表者の意見聴取もなされている(書証略)ところであるが,原告らは就業規則の変更に伴う労働者の過半数代表者の意見聴取手続が行われていないと主張しており,従業員代表を選ぶための投票等の手続がとられた事実も証拠上認めることはできない(証拠略)。」
「もっとも,就業規則の変更にあたっては,従業員代表の意見聴取,労働基準監督署への届出がなされていることが望ましい(労契法11条,労基法90条)ものの,就業規則の変更の有効性を認めるための絶対的な条件であるとはいえず,これらの事情は,労契法10条における「その他の就業規則の変更に係る事情」として,合理性判断において考慮される要素と解される。」
「そうすると,本件においては,就業規則の変更は労働基準監督署に届け出られているものの,従業員代表の意見聴取がなされているとは認め難い。しかしながら,このことだけをもって,就業規則の変更が無効になるとまでは解されない。」