弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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残業代(割増賃金)算定の基礎賃金

2014-01-07 | 日記

残業代(割増賃金)算定の基礎賃金をどのように考えればいいのか教えて下さい。

 労基法は,原則として全ての賃金を残業代(割増賃金)算定の基礎となる賃金とした上で,労基法37条5項及び労基則21条において,残業代(割増賃金)の基礎に算入しない賃金(除外賃金)を制限列挙するという態度を取っており,「(月給額-除外賃金)」が残業代(割増賃金)算定の基礎となる賃金となります。
 労基法37条5項,労基則21条で除外賃金とされているのは,
 ① 家族手当
 ② 通勤手当
 ③ 別居手当
 ④ 子女教育手当
 ⑤ 住宅手当
 ⑥ 臨時に支払われた賃金
 ⑦ 一か月を超える期間ごとに支払われる賃金
です。
 条文には規定されていませんが,残業代(割増賃金)それ自体を残業代算定の基礎賃金とするのは背理ですから,
 ⑧ 残業代(割増賃金)の趣旨で支給される賃金
についても,残業代算定の基礎賃金から除外することになります。

 除外賃金に該当するかどうかは,名称にかかわらず実質によって判断されますので(昭和22年9月13日発基17号),名称が「家族手当」や「住宅手当」であったとしても,除外賃金ではないと判断されることも珍しくありません。
 「家族手当」は,扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当のことをいいますので,独身社員についてまで支払われていたり,扶養家族数に関係なく一律に支給されていたりする場合は,除外賃金としての性質を有する「家族手当」とは認められず,残業代(割増賃金)算定の基礎賃金に入れるべきこととなります(昭和22年11月5日基発231号)。
 また,「住宅手当」は,住宅に要する費用に応じて算定される手当をいいますので,全社員に一律に定額で支給することとされているようなものは,除外賃金としての性質を有する「住宅手当」には該当せず,残業代(割増賃金)算定の基礎賃金に入れるべきこととなります(平成11年3月31日基発170号)。

 労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分については無効となり,無効となった部分は労基法で定める基準によることになります(労基法13条)。
 したがって,例えば,除外賃金に当たらない手当が存在するにもかかわらず,基本給のみを残業代(割増賃金)算定の基礎賃金とする旨合意し,合意書に署名押印させたとしても当該合意は無効となり,労基法所定の計算方法が適用されることになります。
 また,就業規則は労基法に違反してはならず(労基法92条1項),労基法違反の就業規則はその部分に関しては無効となりますので,例えば,除外賃金に当たらない手当が存在するにもかかわらず,賃金規程において,基本給のみを残業代(割増賃金)算定の基礎賃金とする旨規定して周知したとしても当該規定は無効となり,労基法所定の計算方法が適用されることになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


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月給制の正社員に関する残業代(割増賃金)の計算方法

2014-01-06 | 日記

月給制の正社員に関する残業代(割増賃金)の金額は,労基法上,どのように計算すればいいのですか?

 労基法上,月給制の正社員の通常の労働時間の賃金は,「(月給額-除外賃金)÷一年間における一月平均所定労働時間数」で算定されることになるのが通常です(労基則19条1項4号)。
 例えば,月給24万円で除外賃金がなく,一年間における一月平均所定労働時間数が160時間であれば,24万円÷160時間=1500円/時が通常の労働時間の賃金となります。

 労基法上の割増率は,時間外労働については通常の労働時間の賃金の25%増し(中小企業を除き60時間超の場合は50%増し),法定休日労働については通常の労働時間の賃金の35%増しですので,上記の例では,原則として,
 時間外労働については1500円/時×1.25=1875円/時
 法定休日労働については1500円/時×1.35=2025円/時
で計算した残業代(割増賃金)を支払わなければならないことになります。

 さらに,深夜労働(22時~5時の労働)については通常の労働時間の賃金の25%に相当する深夜割増賃金を支払う義務がありますので,上記の例では,
 1500円/時×0.25=375円/時
を加算して支払う義務があります。
 昼間の仕事であれば,深夜労働は同時に時間外労働であるのが通常ですから,上記の賃金単価を前提にすれば,平日22時以降の賃金単価は,
 1875円/時+375円/時=2250円/時
となります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


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合宿研修の時間と労基法上の労働時間

2014-01-04 | 日記

合宿研修の時間は,労基法上の労働時間に該当しますか?

 合宿研修は,業務命令により参加が命じられたり,合宿研修に参加しないと何らかの不利益を課されたり,合宿研修に参加しないと業務遂行に必要な知識技能が習得できず,業務に具体的な支障が生じるような場合は,特段の事情のない限り,使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるため,合宿研修に要した時間は,食事時間等の休憩時間や睡眠時間を除き,労基法上の労働時間に該当します。
 研修カリキュラムに組み込まれていない討論等の時間は,業務命令により参加が命じられておらず,参加しなくても不利益が課されず,討論等に参加しなくても業務に具体的な支障が生じない等,本当の意味での自由参加であれば労基法上の労働時間ではありません。
 しかし,自由参加と言いながらも,参加しない場合には何らかの不利益が課される場合や,討論等に参加しないと業務遂行に必要な知識技能が習得できず,業務に具体的な支障が生じるような場合には,労基法上の労働時間となります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


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