ちょっと興味深かったので、ココにメモ。
小保方リーダー&若手研究者必読!今さら人に聞けない「正しい実験ノート」の書き方
・・・・・・・・・そこまで話題、そこまで人気の「実験ノート」だが、そもそも科学者・研究者として信頼されるための「実験ノート」とはどのようなものなのだろうか? すべての理系学生、研究者はもちろん、文系ビジネスパーソンにも役立つ「正しい実験ノートの書き方」について、改めて九州大学・中山敬一教授にレクチャーいただこう。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部)
● 第三者が追跡できるものが 証拠になる
ノートというのは、自分の「備忘録」としての役割もありますが、それだけではありません。科学者にとっての「証拠」とは、第三者が追跡できるものでなければいけません。
追跡できるというのは、平たく言えば「第三者が見てわかるもの」ということ。つまり、
・走り書き、字が読めないなど、他人が解読不可能なのもの
・日付などの基本的な情報が曖昧である
・手順や前後関係が不明で、第三者が再現きないもの
・実際の実験内容とは異なるもの(いわゆる捏造も含め)
は、当然のことながら「証拠」になり得ません。
ビジネスパーソンが議事録を上司に提出する際のルールと同じだと思います。読めないもの、内容が理解できないもの、嘘はダメ。研究の世界ではこれらに加え、「再現性」というのも重要な要素と言えるでしょう。
● 研究者の素質は 論理性に尽きる
具体的な実験ノートの書き方は後述するとして、最初にお伝えしたいことがあります。それは「研究者の素質とは何か」ということです。
研究者に求められる第一の資質は、意外に思われるかもしれませんが、「論理性」なのです。つまり、突飛なアイデアではなくて、A→B、B→C、故にA→Cというような、確実で綴密な思考能力が要求されます。
逆に言えば、天才でなくても、誰もが思いつかないことを発見するエジソンやアインシュタインみたいな人でなくても大丈夫だということです。
● 論理が非論理、 すなわち大発見を生む
ではどうやって論理性から大発見が生まれるのでしょうか? 大発見は往々にして、論理体系の中から論理にはずれるものとして顔を出してきます。論理性がなければ論理にはずれたものを認識できませんから、貴重な機会を逃してしまうでしょう。逆説的ですが、論理が非論理(大発見)を生むのです。
ピカソはあんなデフォルメされた絵ばかり描いているイメージがありますが、実はたぐいまれなデッサン力があったそうです。それと同じ、研究者にとっての論理性とは、画家のデッサンカに匹敵するものなのです。
頭で理解できても実行できないという人は、実は真の理解ができておらず、硬直化した感情に流されているのです。
● 美しい実験ができるかどうかで 研究者の適性を見抜く
科学の世界では、新しい発見とは既成の事実で説明できないものとして発見されます。しかし既成の事実や論理を知らなければ、新しい発見もないでしょう。つまり知識と思考方法に裏打ちきれた論理をしっかり組み立てることこそが、研究者としての成功への第一歩なのです。
理路整然と整理された美しい書類と、グチャグチャの書煩の違いは、単に本人の美的センスだけではなく、論理性が反映された結果だと思います。
研究者としての適性を見抜くことは難しいですが、実験させればある程度見抜く自信はあります。プログラミングの世界における美しいコードが書けるかどうかと同じく、美しい実験ができるかどうかがポイントです。
美しい実験とは、理論的に整合性のある対照(コントロール)を置き、結果の解釈を誤らないための種々の工夫がなされている実験です。実験は結果を得るまでにさまざまな工程を経ますから、その間の多くの押さえるべきポイントを理論的に把握できている人だけが、最終的にきれいな結果に到達できます。
そのためには、研究結果ではなく、研究過程における論理性を大切にすることが重要なのです。
● 実験ノートで 論理性を磨く
ではどうやって論理性を磨けばいいのか。ビジネススキル本がお好きな人ならご存じかもしれませんが、論理性を磨くための一番の近道はノートをとることです。研究過程における論理性を高めていくためにも記録をとるのです。
先に述べたとおり、美しい実験ができる人になるためには、数多く実験を行うことはもちろんですが、毎回の実験記録を取り、見返し、客観的に分析したり、ときには担当教授のフィードバックを得たりすることが重要です。
● ノートを プチ論文化する
結論から言います。
実験ノートは論文と同じように書きましょう。
実験ノートを「プチ論文」にするのです。必要な構成は次のとおり。
(1)タイトル
(2)日付
(3)実験目的
(4)材料・方法
(5)実際におこなった手技
(6)結果
(7)考察
ほとんどの学生は指導しないと、ノートには(5)実際におこなった手技、だけをちょこっとメモ程度に書くだけしかしません。しかし大切だけど意外に難しいのは、(1)タイトルと、(3)実験目的ですね。
これは論文も同じです。タイトルとサマリーが論文の顔となり、ほとんどの内容はそこに集約されるのです。仕事に置き換えれば、優れた企画書の条件も同じでしょう。
(5)実際におこなった手技、についてもほとんどの学生はうまく書けていませんね。私は、実際におこなった手技は、どんな小さなことでも記載します。何をどのくらいの量を入れたか、どのくらい時間をかけたかを、毎回毎回具体的に記載します。それがいつも同じようなことでも、です。
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● 記録の積み重ねが 将来の財産になる
実験ノートをプチ論文化すると、日々の実験が楽しくなってきます。
目的を明らかにして、しっかりと結果を記載し、それに対していろいろと考察をしてみる。これは論理性や科学的思考の訓練になるだけでなく、実際に論文を執筆するときにとても役に立つはずです。
それ以上に大切なことは、その詳細な記録が君の将来の財産になるでしょう。きちんとしたノートがあれば、似たような実験をするときにすぐに再現することができます。何かあったときに、これまで自分がどんなことをやってきたのか証明できるという点でも、ノートは貴重な財産なのです。
練習記録を詳細にノートに記録しているトップアスリートもたくさんいます。記録の蓄積が自身の学びや発見、改善につながるだけでなく、「ここまでやってきた」という自信にもなっているのだそう。実験ノートも同じです。
残念なことに、私は今まで多くの学生に実験ノートをしっかりつけるように口うるさく指導してきましたが、結果的に私が感心するくらいの質のノートをつけたと思われる人はたったの3人しかいません。そしてその3人とほかの人との研究能力には圧倒的な差があります。
優れた企画書のようにノートをとる。 全研究者はもちろんこと、文系理系にかかわらずすべての学生、ビジネスパーソンの皆さんにもぜひ今日から実践していただければと思います。
中山敬一 [日本分子生物学会副理事長、九州大学教授]
小保方リーダー&若手研究者必読!今さら人に聞けない「正しい実験ノート」の書き方
・・・・・・・・・そこまで話題、そこまで人気の「実験ノート」だが、そもそも科学者・研究者として信頼されるための「実験ノート」とはどのようなものなのだろうか? すべての理系学生、研究者はもちろん、文系ビジネスパーソンにも役立つ「正しい実験ノートの書き方」について、改めて九州大学・中山敬一教授にレクチャーいただこう。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部)
● 第三者が追跡できるものが 証拠になる
ノートというのは、自分の「備忘録」としての役割もありますが、それだけではありません。科学者にとっての「証拠」とは、第三者が追跡できるものでなければいけません。
追跡できるというのは、平たく言えば「第三者が見てわかるもの」ということ。つまり、
・走り書き、字が読めないなど、他人が解読不可能なのもの
・日付などの基本的な情報が曖昧である
・手順や前後関係が不明で、第三者が再現きないもの
・実際の実験内容とは異なるもの(いわゆる捏造も含め)
は、当然のことながら「証拠」になり得ません。
ビジネスパーソンが議事録を上司に提出する際のルールと同じだと思います。読めないもの、内容が理解できないもの、嘘はダメ。研究の世界ではこれらに加え、「再現性」というのも重要な要素と言えるでしょう。
● 研究者の素質は 論理性に尽きる
具体的な実験ノートの書き方は後述するとして、最初にお伝えしたいことがあります。それは「研究者の素質とは何か」ということです。
研究者に求められる第一の資質は、意外に思われるかもしれませんが、「論理性」なのです。つまり、突飛なアイデアではなくて、A→B、B→C、故にA→Cというような、確実で綴密な思考能力が要求されます。
逆に言えば、天才でなくても、誰もが思いつかないことを発見するエジソンやアインシュタインみたいな人でなくても大丈夫だということです。
● 論理が非論理、 すなわち大発見を生む
ではどうやって論理性から大発見が生まれるのでしょうか? 大発見は往々にして、論理体系の中から論理にはずれるものとして顔を出してきます。論理性がなければ論理にはずれたものを認識できませんから、貴重な機会を逃してしまうでしょう。逆説的ですが、論理が非論理(大発見)を生むのです。
ピカソはあんなデフォルメされた絵ばかり描いているイメージがありますが、実はたぐいまれなデッサン力があったそうです。それと同じ、研究者にとっての論理性とは、画家のデッサンカに匹敵するものなのです。
頭で理解できても実行できないという人は、実は真の理解ができておらず、硬直化した感情に流されているのです。
● 美しい実験ができるかどうかで 研究者の適性を見抜く
科学の世界では、新しい発見とは既成の事実で説明できないものとして発見されます。しかし既成の事実や論理を知らなければ、新しい発見もないでしょう。つまり知識と思考方法に裏打ちきれた論理をしっかり組み立てることこそが、研究者としての成功への第一歩なのです。
理路整然と整理された美しい書類と、グチャグチャの書煩の違いは、単に本人の美的センスだけではなく、論理性が反映された結果だと思います。
研究者としての適性を見抜くことは難しいですが、実験させればある程度見抜く自信はあります。プログラミングの世界における美しいコードが書けるかどうかと同じく、美しい実験ができるかどうかがポイントです。
美しい実験とは、理論的に整合性のある対照(コントロール)を置き、結果の解釈を誤らないための種々の工夫がなされている実験です。実験は結果を得るまでにさまざまな工程を経ますから、その間の多くの押さえるべきポイントを理論的に把握できている人だけが、最終的にきれいな結果に到達できます。
そのためには、研究結果ではなく、研究過程における論理性を大切にすることが重要なのです。
● 実験ノートで 論理性を磨く
ではどうやって論理性を磨けばいいのか。ビジネススキル本がお好きな人ならご存じかもしれませんが、論理性を磨くための一番の近道はノートをとることです。研究過程における論理性を高めていくためにも記録をとるのです。
先に述べたとおり、美しい実験ができる人になるためには、数多く実験を行うことはもちろんですが、毎回の実験記録を取り、見返し、客観的に分析したり、ときには担当教授のフィードバックを得たりすることが重要です。
● ノートを プチ論文化する
結論から言います。
実験ノートは論文と同じように書きましょう。
実験ノートを「プチ論文」にするのです。必要な構成は次のとおり。
(1)タイトル
(2)日付
(3)実験目的
(4)材料・方法
(5)実際におこなった手技
(6)結果
(7)考察
ほとんどの学生は指導しないと、ノートには(5)実際におこなった手技、だけをちょこっとメモ程度に書くだけしかしません。しかし大切だけど意外に難しいのは、(1)タイトルと、(3)実験目的ですね。
これは論文も同じです。タイトルとサマリーが論文の顔となり、ほとんどの内容はそこに集約されるのです。仕事に置き換えれば、優れた企画書の条件も同じでしょう。
(5)実際におこなった手技、についてもほとんどの学生はうまく書けていませんね。私は、実際におこなった手技は、どんな小さなことでも記載します。何をどのくらいの量を入れたか、どのくらい時間をかけたかを、毎回毎回具体的に記載します。それがいつも同じようなことでも、です。
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● 記録の積み重ねが 将来の財産になる
実験ノートをプチ論文化すると、日々の実験が楽しくなってきます。
目的を明らかにして、しっかりと結果を記載し、それに対していろいろと考察をしてみる。これは論理性や科学的思考の訓練になるだけでなく、実際に論文を執筆するときにとても役に立つはずです。
それ以上に大切なことは、その詳細な記録が君の将来の財産になるでしょう。きちんとしたノートがあれば、似たような実験をするときにすぐに再現することができます。何かあったときに、これまで自分がどんなことをやってきたのか証明できるという点でも、ノートは貴重な財産なのです。
練習記録を詳細にノートに記録しているトップアスリートもたくさんいます。記録の蓄積が自身の学びや発見、改善につながるだけでなく、「ここまでやってきた」という自信にもなっているのだそう。実験ノートも同じです。
残念なことに、私は今まで多くの学生に実験ノートをしっかりつけるように口うるさく指導してきましたが、結果的に私が感心するくらいの質のノートをつけたと思われる人はたったの3人しかいません。そしてその3人とほかの人との研究能力には圧倒的な差があります。
優れた企画書のようにノートをとる。 全研究者はもちろんこと、文系理系にかかわらずすべての学生、ビジネスパーソンの皆さんにもぜひ今日から実践していただければと思います。
中山敬一 [日本分子生物学会副理事長、九州大学教授]