My ordinary days

ようこそいらっしゃいました!
ふと思い立ち第2のキャリアを始めてしまった、流されがちなひとの日々を綴るブログです

カレル・チャペック「R.U.R.(Rossum's Universal Robots)ロッサム世界ロボット製作所」

2011-03-10 11:48:57 | 読書
青空文庫で読みました。
http://www.alz.jp/221b/aozora/rur.html
長編ではないので貼り付けようとも思いましたが、やはりここにアップするには長いので・・・
ご興味があればこちらのリンクから↑どうぞ^^ 戯曲です。

カレル・チャペック(1890-1938)が「ロボット」という言葉を作ったチェコの作家、ということは知っていましたが、実際に読むのは初めて。
「労働」を意味するチェコ語: robota (もともとは古代教会スラブ語での「隷属」の意)から ロボット という言葉ができたらしいのですが、実際にその言葉を発案したのはカレルの画家のお兄さんとのこと。

ロボット=機械と思い浮かべてしまいますが、このロボットは機械ではありません。ロッサム製作所が化学物質から人間のパーツを作り出し組み合わせ、ココロや感情、意思を持たないということ以外はほぼ人間と同様、生殖能力もなく20年程度で壊れてしまう労働用の「人造人間」。それが「ロボット」なのです。ロボット、というのは商品名ね。

労働から人間を開放するために作られたロボット。しかしあまりにも人間と似ているためロボットの人権?を守るために立ち上がろうとする人たち・・・救世主や預言者、宣教師、無政府主義者などなどがロッサム製作所のある島にやってきます。若く美しいヘレナもその一人。彼女は世界中に20万人もの会員を擁する「人道連盟」からやってきてロボットの扱いを向上させロボットを解放することを求め、ロボットたちにも自由を求めるよう説きにきたのです。しかし意思も情熱も愛もないロボットにヘレナの考えが通じることはなく、彼女は取締役のドミンと結婚することに(ここら辺の展開はイミフだ 恋愛って不可解!?)
ヘレナはロボットに感受性をもたせ人間らしくさせたいと願い、結局その思いが仇となりロボットは人間への憎悪と反乱の意思を持つこととなり、人類は彼らの手によってあっけなく滅亡します。生き残ったのは労働局主任ただ一人。そして・・・



読み始めはまるでコメディーかと思うような軽快さでした。すべての労働をロボットにまかせ、人類をこの世界の特権階級にすることを夢見たドミン。

ドミン「もはや運命ですよ。そして人間が人間に隷属することも、人間が物の奴隷になることも終わりを告げるでしょう。無論、その前におそろしいことがおこるでしょうが、それは避けられません。しかし、もうパンを得るために命をなげうったり、暴力をふるう必要もありません。ロボットは物乞いの靴ですら磨くでしょうし、家の中にベッドをも用意するでしょう。
アルクイスト 「ドミン、ドミン。お前さんの言うことは、まるで完全無欠の楽園みたいじゃないかね。昔は奉仕の中にもよいことはあったし、謙虚さの中にも何かすばらしいものがあった。一汗かくことや、疲れることにも何かしら美徳があったんだ。」
ドミン 「たぶんね。でも世界を変えることによって失ったものを、考慮するわけにはいかないよ。人間は自由で何にも束縛されてはいけないんだ。自己を完成させること以外のどんな目的も、どんな努力も、どんな心配もすることはない。人は物にも人にも奉仕する必要はない。人は製品を作る機械でもなければ装置でもない。人は創造主となるのだ。」
ブスマン 「ああ神々しい。」
ファブリ 「かくありたまえ。」

おおぅ、この時代にロボットはなかったのですからもちろんそのままの意味でとらえるわけにはいきませんが。でも創造主になりたい人はいつの世にもいるような~。
労働から解放されれば人は自由になれるのか?資本家は自由で幸せ、労働者は奴隷で不幸なの?そんなことではもちろんない。ロボットが反乱を起こした後、労働局主任である技師は祈ります。
「主よ、わたくしに労働を与えてくださったことを感謝します。迷えるドミンやその他のものどもに光をお与えください。彼らの所行をくじき、人間を本来の労働にお戻しください。」

一方、ドミンはこの暴動が終わった後に新しいタイプのロボットを製造する計画をたてています。
「それぞれの工場で、違う肌の色、違う言語を持ったロボットを製造するんだよ。そしてお互いがまったく交われないようにするんだ。やつらは、決してお互いを理解することはない。そしてわたしたちが、やつらに誤解の種をちょっと植え付けてやる、そうすれば、すべてのロボットが、違う工場のマークがついているロボットを憎しみ合うような時代がやってくるというわけだ。」

この争いの作り方!このお話が書かれた時代は1927年、あらら、ドイツ映画「メトロポリス」もこの年初上映ですね。(リメイク版を見たよ)
昭和2年、芥川龍之介が亡くなった年で古田足日が生まれた年でもある。・・・ってわかりづらい??上野―浅草間の地下鉄が開通した年でリンドバーグが大西洋の単独無着陸飛行に成功した年。よけいわからないか1920年代といえば第一次大戦(1914-1918)の後、まずアメリカでものすごい勢いで新しい産業が発展し(車やラジオや映画や)消費者需要が加速、それにともない生活様式も大きく変化した時代です。ヨーロッパも戦後アメリカからの投資を受けて大量生産を行う新たな産業がどんどん成長していきました。そんな頃に書かれたお話・・・。世界恐慌前の狂乱の時代のお話なわけですね。


資本家対労働者
キリスト教の倫理観


と この3点が主題になるのですが(チャペックは信仰を持っていたと思う)その内容より有名になってしまった「ロボット」という言葉。
ここで使われた「ロボット」の発想は当時の人々のなかに漠然とあったものなのでしょう、機械化がどんどん進み人間の変わりに働くナニカが生まれるはず、という発想またはは予想を先駆けて小説に著したチャペックの勝ち。



ああこの人は犬好きでもあったのね・・・「ダ―シェンカ」というフォックステリアのお話も書いています。お話・・・てか・・・ダ―シェンカに読み聞かせるためのお話ですが

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。