上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

10月 仰天(1)

2019-10-06 17:20:36 | エッセイ

「同じ関西でも、大阪と一緒にしてほしくないわ〜」
神戸と京都の人は、大抵そう思っている。 

大阪に住んで40年以上になる私は、思わず「そんなに変わらへんのんちゃう?」とツッコミたくなるのだが、
運転マナーの悪さといい、違法駐車の多さといい、これじゃしょうがないかと納得してしまうことも多い。
しかも、全国ワーストワンが長く続いた「ひったくり」に自分が遭ってしまったのだ。

その日は、仕事もお休み。久しぶりに幼なじみと会って梅田で食事をし、語らい、
心も体もほっこりとして最寄り駅に降り立ち、帰路についた時のことだ。

住宅街が続き、人通りの少ない駐車場に差しかかった所だった。
「あっ!」と思ったその瞬間。左手にさりげなく持っていたバックが、それほどの衝撃もなく、突然、消え失せた。
と同時に2人の高校生らしき男の子の乗ったバイクが一瞬にして走り抜け、その後ろ姿を見て初めて気がついた。

「これって、もしかしてひったくり?」
『えっ、私の財布、マンションの鍵、携帯電話、カード、通帳、旅行の写真……はどうなんの???』
その間、 わずか1秒くらい。
恐怖の時こそ声なんか出るわけないと信じていた私なのに、実際は大声で叫んでいた。
「ドロボー!!!!!」

閑静な住宅街とはいえ、だれか1人ぐらい顔を出してくれる人はいないのかと思うくらい、周りの反応は一切なし。
前からやってきた下校中の中学生2人連れに「今の子ら、ひったくりやから追いかけて」と頼んでみたが、
私の驚愕ぶりが逆に笑いを誘うほどだったのか、平和そうにヘラヘラと笑っているだけだった。

「ああ、情けない」と、中学生たちに八つ当たりしながら、
「財布にはいくら入っていたかなあ?」
「クレジットカードを使われたらどうなんのよ!」
「通帳を早く使用禁止にしな、あかん!」と、さまざまなことを考えながら、
とにかく電話を借りて警察に通報しなきゃと、自宅があるマンションの管理人室に向かった。

が、こういう時というのはなぜか気ばかりあせって、足が思うように運ばない。
それでも前を向いて懸命に歩いていたら、「な、なんと!」。向こうから連中のバイクがやって来たのだ。
「あっ、あいつら」
だが、声を出す間もないほどのスピードで逆方向へ突進し、ナンバーだけでも覚えてやろうと血相を変えて振り返ると、
プレートは数字が見えないように見事に上に上げられていた。

「ああ、最悪!」
 もう完全に「泣きっ面に蜂」状態。悔しくて、腹立たしくて、悲しくて、それなのに、
いくら歩いてもなかなか目的地には着かず、真冬だというのに背中には汗びっしょりかいていた。
                                               (つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする