上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

胸のつかえ

2024-12-16 10:53:22 | エッセイ


人生では自分の意思に関係なく、白か黒かどちらかに決まってしまうことがある。

最近、近くのクリニックで市の乳がん検診を受け、要精密検査の通知をもらった。
検診時にマンモグラフィー の画像に前回より少し変化があると告げられていて、
もしかしてという思いはあったのだ。
だが、実際に通知を手にすると、いつもよりずしんと重く、その重さは心持ちにもずしんと響いた。

1週間後に市内の総合病院で再検査へ。
周りも検査の人ばかりのようで、受付の時点から妙な緊迫感が漂っていた。
まず順番待ちをして医師の診察を受け、マンモとエコーの検査へ向かう。

順番がくるまで、ドア上に表示されるナンバーと自分のナンバーを確認するのみ。
40〜50代からかなりの高齢者までさまざま。夫が付き添う人もいる。
ただ、自分の結果だけに集中していて、人のことはあまり気にならない。

私はマンモの調子が悪いからと先にエコーへ。
検査室も順番待ちで、椅子の確保も要領良さが必要だった。
名前を呼ばれて中に入り、検査を受ける。
問題があるのは右側ということもあり、右側が丹念すぎるぐらい丹念にエコー機が動かされ、
「ああ、これは何かあるぞ」と自分に言い聞かした。
終了時、黙っておられない性分の私は我慢できず、技師の女性に聞いてしまった。
「やっぱり、何かありましたか?」
「ここではお答えできません」
と、冷静なお返事。
「そりゃあそうだ」と自分に言って聞かせた。

続いてマンモへ。ここはすぐに呼ばれた。
甚平型の患者衣に着替え、機械の前に立つ。
技師の言うままの姿勢にしても変に力が入ってしまい、何度も何度も注意される。
左右からだけでなく、上下からも撮影。
やっと終わりかと思うと、右だけもう一度と言われた。
「ああー、やっぱり!」

落胆と不安を抱えながら、また診察室へ。
ここでさらに順番待ちである。
「覚悟しよう、しよう」と自分に言い聞かせながら待つ。
時間潰しに本を持っていたが、冷静に文字を追うような余裕はない。

やっと番号が出て診察室に入ると、
「待たせてしまってごめんなさいね」と若い女医さん。
画像を見せながら、
「お持ちになったのはこの画像ですが、今日の検査はこれで異常ありませんでした」
「えっー!  大丈夫なんですか?」
「はいそうですよ(笑顔)」
嬉しいはずなのに、覚悟していた分、拍子抜けしてしまい不思議な気持ちになった。

すべて終え、精算待ちをしている時も考えてしまった。
結果が逆な人もたくさんいる。一線のどちらに行くかは誰も分からない。
この一線の右か左かで人生も大きく変わるのだ。

今回、再検査までの1週間も不安で揺れ動いた。
その時、助けられたのが友人が困難に直面していた時、ぽろっと言った言葉だ。
「何か起きたら、その時考えよう!」
先から一人で心配しすぎないで、考えすぎないで、結果が出てからいい案を一緒に練ろうと。
もちろん患者の意思だけではどうにもならないこともあるけれど、進むべき方向は決められる。
それにしても、
胸のつかえが下りた半日だった。
コメント
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