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ちょっと早起きした。

最後の朝は意外なくらい普通の目覚めだった。

「おはよう」

「あ、おはよう」

「ニャー」

あいかわずネネもまとわりついてきてる。

しばらくすると二階から奇声が聞こえた。

鼻血を出したこっちゃんが、ティッシュを取ろうとした時に、

さっちゃんのランドセルに血を垂らしたとさっちゃんが半泣きで訴えてた。

「もう！拭けば取れるんだからそんな風に言わないのっ！」と、妻。

さっちゃんは起き掛けの機嫌が悪い。赤ん坊の時から変わらない（笑）

一騒動が終わり、一階に降りてきて子供達が朝食を食べ始める。

バイクをどかしておいてやらないと引越しの邪魔になるので私は一旦外に出る。

昨日の内に自治会長に電話して、町内の集会所に置かせてもらえるように頼んでおいた。

バイクと、原付、私用の折り畳み自転車。

三台を動かし終わって家に入ると、もう仕事に行く時間まで10分しかなかった。

子供達はまだ、朝食を取っていた。

「パパはあと10分で仕事、行きます」

台所のイスに腰掛けてそう言った。

その後、海が危険な事、田舎は車のスピードが出ている事が多いので気をつけること、何点か注意しておいた。

実は3人には昨晩のうちに手紙を渡してある。

言いたいこと、面と向かって言うと泣いてしまいそうなので手紙にして渡した。

向こうでちょっと落ち着いたら読んでくれと妻には言ってある。

「2人とも元気でやるんだよ」

その一言言うのにも涙声になってしまうダメなパパにさっちゃんが笑いかけてくれた。

「また、会おうな」

さっちゃんを抱きしめる。

必死で涙を堪えた。

おでこにキスをした。

「あれ？こっちゃんは？」

いつの間にかこっちゃんはトイレ中。

最後までマイペースで間が悪い（笑）

仕事に行く時間を少々過ぎてしまったが、トイレから出てきたこっちゃんを抱きしめる。

まだこっちゃんは私のお腹に頭が埋まる大きさだ。

「ちっちぇなあ」

不意に口をついた、が、なんとか涙は流さずに済んだ。

「行ってきます」

「はーい！いってらっしゃーい！」

「車、気ぃつけてねぇ！」

いつもの朝かのようなやりとり。

妻が車をどかすために家を出た。

「今までありがとうな」

我ながら涙声過ぎだ。

子供達は外まで送ってくれた。

車に乗り込む前に

「またな！」と言って手を振る。




その後はもう、振り返れなかった。



「家族」の終わり。



車の中、独り、涙を拭く。

妻子達は最後まで涙を見せなかったのに。


最後まで、情けないパパで本当にゴメンな。