おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

パンク侍、斬られて候

2024-02-18 08:48:48 | 映画
「パンク侍、斬られて候」 2018年 日本


監督 石井岳龍
出演 綾野剛 北川景子 東出昌大 染谷将太 浅野忠信
   永瀬正敏 村上淳 若葉竜也 近藤公園 渋川清彦
   國村隼 豊川悦司

ストーリー
自ら“超人的剣客”と豪語する浪人・掛十之進(綾野剛)がとある街道に姿を現わすや、いきなり物乞いの老人を斬り捨てる。
そして居合わせた黒和藩の藩士・幕暮孫兵(染谷将太)に“腹ふり党”なる新興宗教団体の脅威が迫っていると説き、重臣・内藤帯刀(豊川悦司)のもとで仕官への道を開く。
内藤は権力の座を重臣・大浦主膳(國村隼)と争っており、“腹ふり党”の一件で大浦を失脚させようと画策する。
ところが“腹ふり党”はすでに解散していることが判明、自らの立場を守るべく“腹ふり党”の元幹部・茶山半郎(浅野忠信)をたきつけて、藩内で騒動を起こさせようとする十之進だった。
発令される隠密ミッションを巡って、クセもの12人が、繰り広げる腹の探り合いと、1人の女・ろん(北川景子)をめぐる恋の行方は・・・。
そして、謎の猿将軍(永瀬正敏)が語り出す驚愕の真実とは・・・。
藩主・黒和直仁(東出昌大)に率いられた黒和藩の軍勢と“腹ふり党”の一大決戦が繰り広げられる。


寸評
僕は石井聰亙時代の「逆噴射家族」(1984年)を見て、随分と好き勝手する監督だなあと思ったのだが、石井岳龍と改名している今回の作品はそれ以上にハチャメチャで、これはもう付いていける人と付いていけない人がはっきり分かれるだろう。
僕はどちらかと言えば付いていけない部類だが、出演陣の快演だけはそのメイクを含め楽しめた。
冒頭こそオーソドックスな時代劇風だが、すぐにあらぬ方向へ暴走し始める。
登場するのは、お調子者のフリーター掛十之進をはじめ、いずれも強烈かつ奇妙奇天烈な人物ばかり。
おまけに"腹ふり党"の教義が「世界は巨大なサナダムシの腹の中だ!」だというのだから、もう何をかいわんやである。
したがって、基本は破天荒な暴走エンターティメントである。
内藤は自らの立場を守るべく「腹ふり党」元幹部・茶山半郎をたきつけて腹ふり党を復活させ、藩内で騒動を起こさせようと画策するのだが、そこで登場する茶山半郎の顔は天才バカボンのようなメイクで、その茶山を浅野忠信が怪演する。
浅野忠信だけではない。
幕暮孫兵の染谷将太も、ろんの北川景子も「よーやるわ」つい言ってしまう演技を見せる。
悪ふざけが過ぎると言いたくなるが、ここまで堂々とやられたらアッパレとしか言いようがない。
ミュージカル的なところもあるし、人形劇もあるし、影絵のような演出もあるし、ド派手なCGも飛び出す始末で、まさに何でもあり状態なのだ。
自分でものを考えずにひたすら流行に付き従う庶民を描いたり、正論しか言わない藩主がいたり、皆に迎合する軟弱な藩の幹部がいたりするのは現実社会への風刺ともいえるが、それよりもこの制作費の無駄使い的な映画作りを誰が許しているのかと思ってしまう。
ハッキリしたことは、僕は石井岳龍作品には溶け込めないということだった。