安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

イヴ・ボスウェル THE WAR YEARS

2010-01-30 21:40:25 | ヴォーカル(E~K)

長野市内の古本屋で「シェークスピア劇のヒーローたち」(小田島雄志著 日本放送出版協会 1989年刊行)という本を購入しました。シャイロック、フォールスタッフ、ハムレットなど劇の登場人物に焦点を当て、その人物と作品の解説がコンパクトに書かれていました。シェークスピアの戯曲は、7~8年くらい前に偶然読み始めたところ面白くて、買っては読むの繰り返しで、白水社Uブック版の全集37冊をすべて揃えました。シェークスピアの国、英国の女性歌手です。

EVE BOSWELL (イヴ・ボスウェル)
THE WAR YEARS (Capitol 1957年録音)

 The_war_years

シェークスピアというと、ジャズやヴォーカル作品で関連があるのは、その名もずばりのクレオ・レーン(vo)の作品「シェイクスピア・ジャズ」、オスカー・ピーターソン(p)のシェイクスピア・フェスティヴァルにおけるライブ、そして、デューク・エリントンの「Star Crossed Lovers」などが浮かびます。それらもよいのですが、深夜なのでバラード系アルバムにしてみました。

イヴ・ボスウェルの、この作品は米国キャピトルから発売(僕のものは日本盤)されていますが、元は英国Parlophoneレーベルの「Sentimental Eve」です。「The War Years」は後からつけたタイトルですが、収録曲、歌ともにそれにふさわしい内容で、うまくつけたものです。ボスウェルは、英国でヒット曲を出したポピュラー系統の歌手ですが、ハンガリー出身で、戦火を避けて一家で南アフリカに渡り、英国に来ています。

曲目は、「It's Been A Long, Long Time」、「I'll Be Seeing You」、「Sentimental Journey」、「You'll Never Know」、「There, I've Said It Again」、「I'll Buy That Dream」、「As Time Goes By」といった、情感に富んだ曲に加え、ラテン味を加えた「Besame Mucho」、「Amor, Amor」など12曲で、佳曲とスタンダード。本作品の特長は、イヴの歌に相応しい曲を集めたところにあるようです。

編曲は、レグ・オーエンで、弦も使った実に穏やかな伴奏です。イヴは、ふくよかな声で、力みのない軽さで歌っていきます。優しく吹くトロンボーンのレガートのような趣でフレーズの最後を消え入るようにもしています。特に「I'll Be Seeing You」、「You'll Never Know」、「There, I've Said It Again」。ですが、「Besame Mucho」も忘れ難い。

 (ブログで触れた著作)

  Shakespearehiroodajima   Kinghenryvipart1odajima

ホームページの散策安曇野に「冬の碌山美術館」を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう 冬の碌山美術館 

 


ボビー・ハッチャーソン COMPONENTS

2010-01-24 20:00:40 | ヴァイブ、オルガン他

21日の木曜日に東京へ出張してきました。四ツ谷に用事があり、ちょうどお昼休みがうまく空いたので、約2年ぶりにジャズ喫茶の「いーぐる」によってみました。ジャズ喫茶・バーは夕方からの営業が多くなっているので、お昼から開いているのはありがたいことです。1時間ほどスピーカーの近くに座って音のシャワーを浴びてきました。そのとき聴いたアルバムです。

BOBBY HUTCHERSON (ボビー・ハッチャーソン)
COMPONENTS (Blue Note 1965年録音)

 Componentshutcherson

スピーカーから流れてきたとき、ボビー・ハッチャーソン(ヴァイブ)らしいとは気付きましたが、よくわからなかったので、立てかけてあるCDジャケットを見ました。ブルーノート作品にもかかわらずCDでしたが、実は最近復刻されたものが(TOCJ-8570)本邦における初の発売です。さっそく東京でゲットしてきました。

ハッチャーソンは、クールでフレッシュな音の響きが魅力ですが、「新主流派~フリー」というカテゴリーでとらえられたためか、人気という点ではもう一歩かもしれません。しかし、この「COMPONENTS」は、オーソドックスなプレイが含まれ、メロディの綺麗な曲も収録されているので、手に入れてよかったものです。

メンバーは、ハッチャーソン(vib)、フレディ・ハバード(tp)、ジェームス・スポールディング(fl、as)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、ジョー・チェンバース(ds)。全8曲中、前半の4曲はハッチャーソンの、後半の4曲はチェンバースのオリジナルです。スポールディングは、フルートで幻想的なムードをだすなどして貢献しています。

前半4曲は、聴きやすく、「Little B's Poem」は可愛らしい曲想で、フルートのソロが光ります。「Components」は、ハバードはじめ共演陣がエネルギッシュなソロをとり、ハッチャーソンもフレッシュなプレイを繰りひろげています。「Tranquillity」はバラード、「West 22nd Street」は遅いテンポでブルージー。後半4曲はアブストラクトの傾向ですが、「Pastoral」は短い演奏ながらヴァイブがリリカル。

ホームページにアン・ギルバート(ヴォーカル)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう アン・ギルバート

 Iriguchikakudai20100121

  「いーぐる」の入り口


ジョー・ワイルダー WILDER'N WILDER

2010-01-17 20:56:14 | トランペット・トロンボーン

我が家の風呂(ガス給湯器)が故障して、追い焚きができなくなりました。冬のさなか、追い焚きができないと不便で、湯船のぬるいお湯を外へかい出して、そこへ60度の熱い湯を入れて温度をアップしています。僕はぬるま湯がいいのですが、さすがに冬本番だとある程度熱くないと、体が温まりません。買い替えるしかしょうがないかもしれません。いい塩梅の柔かい音を出すトランペッターを聴いてみます。

JOE WILDER (ジョー・ワイルダー)
WILDER'N WILDER (SAVOY 1956年録音)

 Wildern_wilder

ジョー・ワイルダー(tp)は、近年比較的知られるようになりました。この作品は、再発が繰り返されている、彼の代表作の一枚です。小さい音から大きい音まで無理なく出ている美しい音色、バラードにおけるムード設定のうまさなど、モダン初期のプレイヤーとして傑出しています。ゆったりとした気分で、トランペットを楽しみたいときに取り出すアルバムです。

サヴォイ・レーベルのハウス・リズム・セクションがバックを務めています。ハンク・ジョーンズ(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、ケニー・クラーク(ds)という堅実なリズム陣です。ハンクのバッキング、ソロともにワイルダーのプレイにふさわしいもので、ともに落ち着いたプレイなので、室内楽的にも聴けます。

曲目がまたこのメンバーにふさわしく、「Cherokee」、「Prelude to A Kiss」、「My Heart Stood Still」、「Six Bit Blues」、「Mad About The Boy」、「Darn That Dream」という、メロディーがきれいなものが多いです。

「Prelude To A Kiss」と「Mad About The Boy」というバラード2曲の素晴らしさが際立ちます。お手本になるような美音、丁寧な節回しなど曲のもつ表情、ムードがよく伝わってきます。快適なテンポの「My Heart Stood Still」では軽やかなワイルダーの快演が聴けます。長尺の「Cherokee」も彼の持ち味がでていますが、ハンク・ジョーンズのソロも聴きものです。

ホームページのジャズ喫茶にエオンタ(長野県松本市大手)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジャズ喫茶 エオンタ


ジョー・ヘンダーソン TETRAGON

2010-01-11 23:20:32 | テナー・サックス

招待状をいただいたので、先日、長野市内で行われたある業界の新年会に行ってきました。政治や景気のことは挨拶の中で多く触れられていたので、顔見知りの人とは、健康の話で歓談してきました。早朝の散歩やラジオ体操、スポーツジムに通っているなど、皆さん結構気を使っているようです。僕も何かやった方がいいと思うのですが、実行に至っていません。「招待(状)」は英語で「Invitation」です。

JOE HENDERSON (ジョー・ヘンダーソン)
TETRAGON (Milestone 1967,1968年録音)

 Tetragon

「Invitation(インビテーション)」は、1944年にブロニスラフ・ケイパーが作曲したものに56年にポール・フランシス・ウェブスターが詞をつけて、歌われたり演奏されるようになったもの。ケイパーは「On Green Dolphin Street」も作っています。「Invitation」は、コード進行が面白くモーダルな響きがするせいもあるのか、様々な奏者に取り上げられてきました。

「Invitation」の演奏には、アル・ヘイグやミルト・ジャクソンなどのものもありますが、なんといってもジョー・ヘンダーソンの「Tetragon」収録の同曲の演奏がよく知られています。このアルバムは、彼の代表的作品でもあり、、また、親しみやすいので、はじめてジョーヘンを聴くのにも適しています。

二つのセッションからなり、67年9月の録音は、ヘンダーソン(ts)、ドン・フリードマン(p)、ロン・カーター(b)、ジャック・デジョネット(ds)。68年5月は、ヘンダーソン(ts)、ケニー・バロン(p)、ロン・カーター(b)、ルイ・ヘイズ(ds)というメンバー。「Invitation」は、前者のメンバーによる録音です。

「Invitation」、「R.J」、「The Bead Game」、「Tetragon」、「Waltz For Zweetie」、「First Trip」、「I've Got You Under My Skin」の7曲。「Invitation」は、テーマをしっかりと吹きどっしりとしたスイングをしてくれます。「Tetragon」の小刻みフレーズはかっこいいし、「I've Got You Under My Skin」も高音を用いるなど聴きどころが多い作品。

ホーム・ページにジョー・ヘンダーソン(ts)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジョー・ヘンダーソン


デラ・リーズ A DATE WITH

2010-01-03 19:37:05 | ヴォーカル(A~D)

年末年始休みは、長野市の自宅に閉じこもっている時間が長く、久しぶりに何作かDVDを借りてきて映画を見ました。コメディーの棚にあったエディー・マーフィー監督の「ハーレム・ナイツ」も借りてきましたが、クラブの経営者が、乗っ取りを図ったギャングをやっつけるという「スティング」に似たストーリーでした。愉快だったのは、売春婦の元締め役でデラ・リーズが登場して、その巨体で存在感を示していたことです。

DELLA REESE (デラ・リーズ)
A DATE WITH (JUBILEE 1958年録音)

  A_date_with_della_reese                ハーレム・ナイト [DVD]

デラ・リーズはゴスペルからの影響があって、シャウトもするなど、若干アクの強さも感じられるヴォーカリストです。数枚ほどアルバムをもっており、リズムへの乗りがよく、豪快な歌が聴けるので、威勢のいい歌ものを聴きたいときなどに取り出します。なお、彼女は女優としてテレビ、映画に多数出演しています。

本アルバムは、シカゴのジャズクラブ、Mister Kelly'sに出演した時をとらえたライブ盤です。伴奏は、カーク・スチュアート(p)・トリオです。Kirk Stuartは、リズムに乗り、曲の出だしなどコンピング(和音で伴奏すること)によりスイング感を醸し出すので、好きな伴奏者の一人です。デラ・リーズとも相性がよさそうです。

曲目はバラード系も含まれ、「Sometimes I'm Happy」、「Happiness is a Thing Called Joe」、「Someone to Watch Over Me」、「Pennies From Heaven」、「If I Forget You」、「All of Me」、「The Nearness of You」、「Just One of Those Things」、「The Party's Over」など12曲ですが、スタンダードが多いです。

最初の「Sometimes I'm Happy」から乗りの良さが味わえます。「Someone to Watch Over Me」や「The Nearness of You」は、結構しっとりとしたバラードで歌われます。傑作なのは「All of Me」で、熱烈に迫る感じをよく出していて、これで迫られた男性は、ちょっと引くかもしれません(笑)。クラブでの公演のためか、抑制もきいていて、いい出来ではないかと思います。ジャケットもグッド。

ホームページの読書に「ヨーロッパ・ジャズ黄金時代」を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ヨーロッパジャズ黄金時代