安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ジョー・スタッフォード AUTUMN IN NEW YORK

2010-10-31 07:55:58 | ヴォーカル(E~K)

僕の友人には、煙草を吸う人が何人もいますが、この10月からの値上げでとうとうやめたという人が出てきました。小遣いへの影響だけでなく、健康を考えてとか、奥さんに言われたなどがやめた理由のようです。僕も学生時代に吸っていたことがあるのですが、当時のガールフレンドに「やめて!」ときつく言われて、すぐやめました(笑)。曲中の煙は、煙草のものではなく恋の炎ですが、「Smoke Gets in Your Eyes」を聴いてみました。

JO STAFFORD (ジョー・スタッフォード)
AUTUMN IN NEW YORK (Capitol 1955年録音)

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「Smoke Gets In Your Eyes」(煙が目にしみる)は、オットー・ハーバーグ作詞、ジェローム・カーン作曲の1933年の歌で、ミュージカルの中で使用されましたが、1958年のプラターズ(コーラスグループ)による大ヒットで日本でも有名になりました。恋人が去っていった悲しみで泣いているのを、恋の炎の煙で目がしみていると強がってみせているという内容です。

大スタンダードだけに多くの人が歌っていますが、長い音符が目立つ曲でバラードだけに、ジョー・スタッフォードの息の長いフレージングが相応しい気がして、彼女の歌で聴いてみました。収録アルバムは「Autumn in New York」ですが、同作は「煙が目にしみる」より、タイトル曲の「ニューヨークの秋」でおなじみですね。

収録曲は、「Autumn in New York」、「Smoke Gets in Your Eyes」、「Haunted Heart」、「If I Loved You」、「In The Still of The Night」(夜の静けさに)、「Some Enchated Evening」(魅惑の宵)、「Just One Of Those Things」、「Almost Like Being in Love」(恋しているみたい)、「Make Believe」、「Through The Years」、「The Best Things in Life are Free」、「Sometimes I'm Happy」の12曲で、ミュージカル・ナンバーが並んでいます。

彼女のトランペット・ヴォイスといわれる、息の長いフレーズが生かされた曲がよいです。中でも「Autumn in New York」、「Smoke Gets in Your Eyes」、「Some Enchated Evening」は、いずれも好きな曲の好唱なので、惚れ惚れとします。本来は、ジャズというより、ポピュラーのヒット歌手と言った方が相応しいかもしれませんが、「In The Still of The Night」などにおけるリズムへの乗りを聴いていると、間口の広い歌い手だと感じ入ります。

ホームページにジョー・スタッフォード(ヴォーカル)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジョー・スタッフォード 


テテ・モントリュー BODY AND SOUL

2010-10-24 19:01:16 | ピアノ

朝の通勤途上は、急いでいるので、道端の樹木や草花などに無関心なことが多いのですが、きのうはそのコースをゆっくりと歩いてみました。土曜日の出勤だったのですが、集合時間が遅かったので、そんな気持ちになりました。途中、長野駅の東口近くの住宅の庭にひと固まりの秋桜(コスモス)が咲いていました。蜂も蜜を吸いによってきていて、天気の良い穏やかな日にふさわしい光景に見とれて、しばしたたずみました。帰宅後は、華麗なテクニックと抒情を併せ持ったピアニストを聴きました。

TETE MONTOLIU (テテ・モントリュー)
BODY AND SOUL (enja 1971年録音)

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最新のジャズ批評誌2010年9月号の特集は、「ピアノ・トリオ in  ヨーロッパ」と題して、ここ10年ほどの間にリリースされた多くの作品を紹介しています。もちろんその中に、スペイン出身のテテ・モントリューの名前はありませんが、かつてヨーロッパを代表するピアニストの一人として紹介されてきました。

テテ・モントリューは、卓越したテクニックでドライブしまくるので、オスカー・ピーターソンに近いところがあります。しかし、繊細さを持ち、モードなども吸収するなど、新しい面も持っています。ピアノの音については、分離がよく硬質に聴こえますが、クラシックの充分なトレーニングを積んだからでしょう。

本作品は、ミュンヘンのクラブ「ドミシル」に出演した時に録音されたもので、トリオのメンバーは、モントリュー(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、ジョー・ネイ(ds)。曲は、「Sweet Georgia Fame」、「Old Folks」、「A Nightingale Sang in Berkeley Square」(バークレー・スクエアのナイチンゲール)、「Body and Soul」(身も心も)、「Lament」という有名なものとテテの自作「Blues」の全6曲。

テテの繊細で抒情豊かなプレイは、「A Nightingale Sang in Berkeley Square」のピアノ独奏によるイントロやバラード「Lament」で味わえます。全体を通して、ダイナミックで歯切れのよい演奏を行っていますが、特に「Sweet Georgia Fame」や「Body and Soul」あたりに、その特徴が出ています。また、ジョージ・ムラーツ(b)の出番が多く、ライブならではの変化に富んだベース・ソロが楽しめます。

【長野市内の道端のコスモス、蜂】

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ソニー・レッド OUT OF THE BLUE

2010-10-21 00:07:02 | アルト・サックス

JR東日本と長野県内の各観光協会などが、10月から12月まで信州デスティネーションキャンペーンを行っています。信州をくまなく歩いてほしいという意味を込めて、アルクマというマスコットを作りPRしており、長野駅にはそのイルミネーションも灯っています。紅葉のこの時期は、とりわけ見所が多いので、多くのお客様に信州を訪れていただければ嬉しいです。名前に「レッド」が入ったミュージシャンです。

SONNY RED (ソニー・レッド)
OUT OF THE BLUE (Blue Note 1959年、60年録音)

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名前に、レッドが入るジャズメンは、レッド・ガーランド(p)、レッド・ミッチェル(b)、レッド・ホロウェイ(ts)やフレディ・レッド(p)なども思いつきましたが、アルト・サックスのソニー・レッドを聴いてみました。彼は、50~60年代のハードバップ期に佳作を残しており、本作品はワンホーンでもあり、彼の代表作の一枚です。

メンバーは、ソニー・レッド(as)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ロイ・ブルックス(ds)、一部ベースとドラムスがサム・ジョーンズ(b)、ジミー・コブ(ds)。僕にとっては、頬が緩んでしまうメンバーであり、実は買った動機は、ケリーのピアノを聴くためでした。

曲目は、スタンダードと自作が半々くらいです。LPでは「Bluesville」、「Stay as sweet as you are」、「I've Never Been in Love Before」(まだ恋したことはない)、「Blues in The Pocket」、「Alone Too Long」、「Nadia」、「The Lope」、「Stairway to The Stars」(星への階段)の8曲。テンポは、早くてミディアム・ファーストくらいなので、ベースも含めて各人のソロがじっくりと楽しめます。

レッドは、甘さを含んだ音色でストレートにメロディを歌いあげており、力強さには欠けますが、その分繊細さがうかがえます。ハードなイメージではないので、ブルーノートの作品としては異色といってよく、ヴォーカルを楽しむようにも聴けます。きれいな旋律の「Stay as Sweet as You Are」、「I've Never Been in Love Before」、「Alone Too Long」あたりが印象に残ります。「Stay as Sweet as You Are」を聴くと、ナット・キング・コールの滑らかな歌(「Love is The Thing 」(Capitol)に収録)を思い出します。

【長野駅の「アルクマ」イルミネーションとJR情報誌】

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モニカ・ボーフォース SLOWFOX

2010-10-17 08:58:59 | ヴォーカル(L~R)

先週の宴会では、お吸い物や天ぷらなどのマツタケ料理が出てきて、秋だと感じました。今年はマツタケが豊作ということなので、シーズンが終わる前に、焼いたものを食べるつもりです。マツタケの食べ方もいろいろありますが、焼いて裂いたものが一番で、次にマツタケのすき焼きです。食べ物だけでなく、空の色もようやく秋らしくなり、透き通った青色が鮮やかです。澄んだ声のヴォーカルを聴いてみました。

MONICA BORRFORS (モニカ・ボーフォース)
SLOWFOX (BMG Ariola 1995年録音)

 Slowfox

秋の澄み渡った空に呼応して、透明感が感じられる声で歌ったバラード集を聴いてみました。スウェーデンの女性歌手としては、ビル・エバンス(p)との共演盤もあるモニカ・ゼッタールンドが有名ですが、モニカ・ボーフォースも、来日公演もあり、同国の歌手として名前が通っているといってよいでしょう。

LPで購入した「Your Touch」(Caprice)が、ジャジーな作品で気に入り、その後の録音もボツボツと集めました。このSlowfoxは、テンポが遅いので声の質がわかりやすいです。高音部分など澄んでいるのが特徴ですが、キンキンという声ではないので聴きやすい。また、彼女のポートレートを使ったジャケットの構図がよくて、そちらも魅力的。

トランペットやシンセサイザーなども用いた伴奏で、中心はGosta Nilsson(p)、Per Nillson(b)、Leroy Lowe(ds)。スタンダードが多く、「Polka Dots and moonbeams」、「I Get Along Without You very Well」、「Soon」、「Dindi」、「The Folks Who Live On The Hill」、「The Masquerade is Over」、「Everything Happens to Me」、「What Are You Doing The Rest of youre Life」など13曲。

心に染みいるバラードの数々です。「Polka Dots and Moonbeams」の出だしは、ベースだけがバックで、そこにピアノが被さっていくという憎い演出で、初めから引き込まれます。続く「I Get Along Without You Very Well」も、透明感が溢れています。「Soon」は、はじめ厳かに出て軽くスイングしていいムード。「Dindi」、「Masquerade」もよいですが、「The Folks Who Live~」や「What Aer You Doing~」は、エコーを利かせてこだまのように音を響かせていますが、この編曲(加工)は無かった方がよかった。


ケニー・ドーハム MATADOR 

2010-10-13 22:01:07 | トランペット・トロンボーン

この10月10日~11日は、安曇野市の地区のお祭りで、父と一緒に神社にお参りに行きました。境内には船(柴船といいます)が停めてありましたが、このへんでは、屋台とか神輿ではなく、車輪をつけた船を出します。船の中では、中学生が太鼓、鉦をたたき、大人が笛を吹いてお囃子をやりますが、人数が多く迫力があります。お囃子には3つの曲想があり哀調を帯びていますが、早いテンポのものは勇壮さがあります。最近、危険ということで、お囃子をやりながらの曳航が行われず、境内に据え付けになりました。お囃子の後は、哀愁名盤を聴いてみました。

KENNY DORHAM (ケニー・ドーハム)
MATADOR (United Artists 1962年録音)

 Matador

哀愁ハードバップというと、僕の場合はジャッキー・マクリーン(as)の数々のリーダー作に手が伸びます。ケニー・ドーハム(tp)は、このアルバムで意欲的なプレイを行っていますが、マクリーンが曲の提供を行い、また、ハードながら甘さも感じられる音で吹いた名曲が収められていて、いつも手元に置いておきたい一枚です。

メンバーは、ドーハム(tp)、マクリーン(as)、ボビー・ティモンズ(p)、テディ・スミス(b)、J.C.モーゼス(ds)で、ホーンの二人による双頭バンドによる作品と言ってもいい内容です。また、ティモンズの活躍も目立ち、Melanie(パート3)におけるソロは、アイデア豊かで煌めいていて、初めて聴いたときには、びっくりしました。

曲は、ドーハムの「El Matador」、マクリーンの「Melanie Part1~3」、チャップリンの「Smile」、ビクター・ヤングの「Beautiful Love」、ヴィラ・ロボス作「Prelude」、ナット・キング・コールが歌った「There Goes My Heart」と前半はオリジナル、後半はほぼスタンダードという配列です。「Beautiful Love」は、郷愁を誘うような美しい曲で、「学生時代」(平岡精二作、ペギー葉山歌)には、似たメロディが出てきますが、それもまたよいです。

「El Matador」と「Melanie」(「Melody for Melonae」)は、たいへん充実した演奏で、聴き逃せませんが、哀愁ハードバップファンの僕としては、Smile、Beautiful Love、Prelude、There Goes My Heartと続くLPでいうとB面を楽しむことが多いです。とりわけ、マクリーンが吹く、ミディアムテンポのバラード「Beautiful Love」は絶品といってよく、同曲はビル・エバンス(p)の名演(「Explorations」(Riverside)に収録)が知られていますが、この演奏も素晴らしい。

【地区のお祭りの柴船】

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