安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

カーティス・フラー SLIDING EASY

2011-09-25 21:13:13 | トランペット・トロンボーン

この3連休は、比較的ゆとりがありました。そこで、国道19号線を途中で右折し、大町市八坂(旧北安曇郡八坂村)から、北安曇郡池田町を抜け、安曇野市明科に至るルートで実家に帰ってみました。ルート上にある「八坂の大滝」と「唐花見湿原」に寄り、ゆっくりと散策をして、憩いのひと時を過ごしました。有名な観光スポットではないので、誰も見かけずあたりには静寂が漂っていました。今夜は、トロンボーンで憩います。

CURTIS FULLER (カーティス・フラー)
SLIDING EASY (United Artists 1959年録音)

 Slidingeasycurtisfuller

往復の車の中で聴いていたら、リー・モーガンのかっこいいトランペットばかり目立ちましたが、改めて自分の部屋で聴いてみると、ベニー・ゴルソンの編曲によるハーモニーや、フラーやフラナガンのソロも細部まで聴こえて、印象が全く異なりました。実は、右下に女性を配置したジャケットのデザインの意味がわからず、謎めいたジャケとして記憶に留めている作品でもあります。

メンバーは、カーティス・フラー(tb)、リー・モーガン(tp)、ハンク・モブレイ(ts)、トミー・フラナガン(p)、ポール・チェンバース(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。しかも編曲をベニー・ゴルソンとジジ・グライスが担当しており、かなり力の入ったアルバム作りが行われたのだろうと想像したくなるパーソネルです。

曲は、フラー作が2曲で「Bit of Heaven」と「Down Home」、バディ・ジョンソン作「I Wonder Where Our Love Has Gone」、パーカーの「Bongo Bop」、ベニー・カーター作「When Lights Are Low」、ジミー・ヒース作「C.T.A.」の6曲。うち「Down Home」と「C.T.A.」をグライスが、あとの4曲はゴルソンが、アレンジをしています。

「Bit of Heaven」は、ゴルソン・ハーモニーが心地よく、中庸をいく穏やかなモブレイ(ts)のソロ、颯爽と登場するモーガン(tp)とたまりません。バラードの「I Wonder Where Our Love Has Gone」は、フラー(tb)の演奏は、ブルージーですが、抑え気味でかえってしみじみとし、フラナガン(p)のソロも寂しさを際立たせます。名曲「When Lights Are Low」は、ミディアムテンポで、イントロから3管によるカラフルなテーマ、そしてフラーを先発にチェンバース(b)までリラックスしたソロが続きます。

【八坂の大滝】
落差50メートル、滝の裏側に山道があり裏側からも見物できます。傍らのお堂には弘法大使が祀られており、大滝の弘法さまといわれているようです。冬は、氷筍ができ、その時期に訪れる方もいるようです。

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             手前からの全景

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           裏の山道からの撮影


サル・二スティコ COMIN' ON UP!

2011-09-18 21:51:43 | テナー・サックス

昨日は、所用があって東京に行ってきました。用事を済ませて午後3時半にお茶の水に着き、「JAZZ TOKYO」に入ったところ、入り口付近に「御茶ノ水 神保町 JAZZ SPOT GUIDE」というパンフレットが置いてあり、ジャズ喫茶、バー、ライブハウス、レコード店など12のお店が紹介されていました。その一つ、ジャズ喫茶・バーの「GRAUERS」に寄ってみました。この8月に開店したばかりのお店で、昔のジャズ喫茶という趣きもあり、居心地のいい空間でした。RIVERSIDEレーベルのアルバムを聴いてみます。

SAL NISTICO (サル・ニスティコ)
COMIN' ON UP! (Riverside 1962年録音)

 Cominonupsalnistico

「GRAUERS」は、リヴァーサイド・レーベルを傘下に擁した「ビル・グラウアー・プロダクション」の社長であったBill Grauer氏の名前から採られたようです。お店の経営者は、古庄伸二郎さんで、同レーベルの研究者として有名な方です。編纂された、リヴァーサイドのディスコグラフィーがカウンターに置いてありました。

サル・ニスティコ(ts)は、2枚のアルバムをリヴァーサイドに残し、これは第2作目です。現在、この2枚を1CDに収めた輸入盤が出ているようです。僕は、カウント・ベイシー楽団のメンバーとして、はじめ彼の名前を知りましたが、ビッグ・バンドの活動が長かったプレイヤーです。サル・ニスティコ(ts)、サル・アミコ(tp)、バリー・ハリス(p)、ボブ・クランショー(b)、ヴィニー・ルジーロ(ds)というメンバー。

パーカー作の「Cheryl」、マイルス作の「Down」、二スティコ作の「Samicotico」と「Comin' On Up」に、スタンダードの「By Myself」、「Easy Living」そして、Paul Fontaineという人の書いた「Ariescene」で、全7曲。選曲からも、バップ~ハード・バップに真正面から挑んだという意欲が伝わります

サル・二スティコ(ts)の音色は、深く、どっしりとしていて、それだけで惹きつけられます。また、サル・アミコ(tp)は、中音を中心とし、マイルスを思わせるところがあります。「Cheryl」は、全員はつらつとして、グルーヴィーさも出ています。バラード「Easy Living」は、二スティコのワン・ホーンによる熱演で、「Down」ではニスティコはややラフながら豪快な演奏ぶりを披露。バリー・ハリス(p)のまとまりのあるソロも随所に入り、ハード・バップに浸れるアルバムです。

【御茶ノ水 神保町 JAZZ SPOT GUIDE】
12のお店の紹介が載っているパンフレット。お店の写真や、地図などのレイアウトもよく、センスがよくて感心しました。御茶ノ水、神保町界隈は、ジャズ喫茶の「響」が閉店するなど、一時足が遠のいたのですが、新たなお店が開店し、JAZZ TOKYOができるなど面白い街になってきました。「本の街」という月刊誌(定価150円)も刊行されていて、古書街の歴史を感じさせます。音楽やレコードに関する文章も含まれていて、帰りの新幹線の中で読んできました。

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【GRAUERS】
夕方から営業のお店が多い中、ここは、営業時間が午後1時からなので、僕のような地方在住者にはありがたいです。スピーカーはJBL4333Aと表記がありました。キャノンボールのアルトがいい音で鳴っていました。

お店のホームページ  GRAUERS 

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        「御茶ノ水 神保町 JAZZ SPOT GUIDE」の紹介ページ 

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            看板                          窓に貼られたリバーサイドのレーベル


アイリーン・ウッズ IT'S LATE

2011-09-15 23:32:12 | ヴォーカル(E~K)

今日(9月15日)、「信州醸熟和酒の会」提唱の長野県内10,000人信州地酒で同時カンパイ(乾杯)イベントに参加して、飲み会に出席してきました。どうやらこの催しは、長野県内だけのようですが、たまには日本酒もいいものです。すぐ酔うので、少しだけ飲んだだけですが、芳醇な冷酒でした。帰宅してそんな女性ヴォーカルを聴いてみました。

ILENE WOODS (アイリーン・ウッズ)
IT'S LATE (Jubilee 1957年録音)

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ヴォーカルのオリジナル盤は、いくらか安くなったとはいえ、人気のあるものは簡単に出ませんし、結構な値段がつきます。アイリーン・ウッズのこのジュビリー盤もそのような一枚で、僕はとりあえずCD(LPTIMEレーベル)で我慢をしています。このレーベルは、いろんなものを出してくれるのでありがたいのですが、不満なところは、ジャケットにオリジナルレーベルの表記がないことで、いつも泣いています(笑)。

アイリーン・ウッズは、ディズニー映画「シンデレラ」(1950年)で、シンデレラの声を担当したことで有名です。そのサントラ盤でも3曲歌っていますが、これは彼女の唯一のヴォーカル作品で、よくぞ残してくれたものです。たいへん安らぐ内容で、深夜に聴くにも相応しい。

スタンダードが主ですが、意外に面白いものが含まれ、「It's a Blue World」、「Everytime」、「When Your Lover Has Gone」、「If I Love Again」、「What A Difference A Day Makes」(恋は異なもの)、「Estrelita」、「While We're Young」、「If You Were Mine」、「I'm Old Fashioned」、「You're Blase」、「I Remember You」、「It's Late」の12曲。編曲は、ビル・クリフトンが担当しており、フルートのソロなども入るジャジーな仕上がりですが、うるさくなく優雅です。

ややハスキーな声で可憐で繊細な感じの歌いぶりで、ビヴァリー・ケニーを少し想いおこさせます。バラードの「It's a Blue World」、情感を込めて声を張り上げる「Everytime」。スローテンポで、滑らか、レガート気味に歌う「If I Love Again」は、クリフォード・ブラウン(tp)の演奏で聴き慣れているだけに、却って新鮮。「What A Defference A Day Makes」は軽やかにスイングしています。「Estrelita」は、鼻歌風のスキャットで、ムードたっぷりなど、「シンデレラ・ヴォイス」を堪能できます。

【信州地酒で同時にカンパイ】
長野駅前にある「ウインズ長野店」で、職場の仲間で盛り上がりました。ローカルニュースでは、午後6時30分の同時カンパイにむけて、カウントダウンも行われ、僕らもそれに合わせました。写真のお酒は大雪渓で、長野県北安曇郡池田町で作られているものです。松本市、安曇野市を中心とした、県の中部でよく飲まれている美味しい地酒。

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エリック・ドルフィー OUT TO LUNCH

2011-09-11 18:53:22 | アルト・サックス

先週、須坂市や信濃町など長野県北部を回ってきました。お楽しみの昼食は、戸隠(長野市)の「たからや」というそば店に行きました。わさびと辛味大根を薬味として入れたつゆで蕎麦を食べましたが、サービスに、そば団子や漬物、おでんまで出してくれたのにはびっくりしました。途中寄った「鏡池」周辺は、吹く風も涼しくて、そろそろ秋の気配でした。辛口の作品を聴いてみます。

ERIC DOLPHY (エリック・ドルフィー)
OUT TO LUNCH (BLUE NOTE 1964年録音)

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このところ、美しい旋律の曲をたくさん聴いてきましたが、辛口のものも聴きたくなり、久しぶりにマルチ・プレイヤーのエリック・ドルフィーのおなじみのアルバムを取り出しました。フリージャズではありませんが、サウンドやソロ・プレイにアブストラクトなものを感じとることができます。

1964年という時点で進歩的なミュージシャンが揃っています。エリック・ドルフィー(as,bc,fl)、フレディー・ハバード(tp)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、リチャード・デイヴィス(b)、トニー・ウィリアムス(ds)という豪華メンバー。ハッチャーソンの叩くヴァイブから発せられる和音が効果的で、はじめて聴いたときにはそればかり強く印象に残りました。

曲はすべてドルフィーのオリジナルで、「Hat and Beard」、「Something Sweet, Something Tender」、「Gazzelloni」、「Out to Lunch」、「Straight Up And Down」の5曲。フルートで演じられる「Gazzelloni」は、イタリアのフルート奏者セヴェリーノ・ガッゼローニを指しています。彼がイ・ムジチ合奏団と録音した、ヴィヴァルディのフルート協奏曲は、LPを持っていたので、ドルフィーのこの曲名にも親近感があります。

エリック・ドルフィーは、ここでも3種類の楽器を用いて演奏していますが、音の塊によりソロを綴っていくようなアルト・サックスによるプレイが迫力があって面白い。そこで、「Out to Lunch」、「Straight Up And Down」が入っているLPのB面をよく聴いていました。各曲のテーマなど合奏部は、トランペットやヴァイブが入り、音色やメロディ、そしてリズムが斬新。しかしながら、聴くにつれて、ドルフィーのソロ・プレイに焦点を当てたくなる一作です。

【たからや】 
地元で働いている人たちの間で人気のあるおそばやさん。この写真の7ぼっち(7つの馬蹄形のそばの盛り)で750円。そばだんご(一人2個)や漬物、おでんはサービス。民宿も兼ねていますが、安いですね。

住所:長野県長野市戸隠2285 TEL 026-254-2270
 

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          入口                      そばだんご        

【鏡池】
長野市戸隠にある農業用のため池です。通称鏡池で、戸隠連峰の景色が池に写ります。

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チャールズ・マクファーソン BEAUTIFUL!

2011-09-04 20:43:37 | アルト・サックス

長野市には「プースカフェ」というフリーマガジンがあります。女性向けのグルメや美容記事が主なので、普段は読まないのですが、今回は「安曇野を訪れてみませんか?」という記事があったので手に取ってみました。観光からお食事処まで、コンパクトで実用的な記事に好感が持てました。「(安曇野は)清冽な水と空気、自然豊かな美しい光景」という記述に、同地生まれの僕は嬉しくなりました。美しいというタイトルのアルバムです。

CHARLES McPHERSON (チャールズ・マクファーソン)
BEAUTIFUL! (XANADU 1975年録音)

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チャールズ・マクファーソン(as)は、1960年代にプレスティッジ・レーベルに初リーダー作を吹き込んでいますが、そのスタイルはチャーリー・パーカー直系といってよいもです。息の長いミュージシャンで、続く1970年代~2000年代まで活動を続けています。ザナドゥに残したこの作品は、スタンダードナンバーを取り上げ、抒情豊かなところを聴かせるとともに、親しみやすいものです。

メンバーは、チャールズ・マクファーソン(as)、デューク・ジョーダン(p)、サム・ジョーンズ(b)、リロイ・ウィリアムズ(ds)。デューク・ジョーダンが参加しているのが意外でしたが、ジョーダンは、軽やかなプレイをしており、指がよく動いています。

曲目は、スダンダードが並びます。「They Say It's Wonderful」、「But Beautiful」、「It Could Happen to You」、「Lover」、「This Can't Be Love」、「Body and Soul」、「It Had To Be You」の7曲。これらはヴォーカルナンバーでもあり、例えば「They Say It's Wonderful」は、ジョニー・ハートマンが、また、「This Can't Be Love」は、パット・モラン・カルテットが歌っていて、それらを思い浮かべながら聴くのも一興です。

マクファーソンは、テーマをしっかりと吹き、ソロではスリリングなところをみせます。「They Say It's Wonderful」や「This Can't Be Love」がそれに当たります。バラードの「But Beautiful」は、D・ジョーダン(p)のイントロでムードが設定され、続くマクファーソンもしっとりとして起伏に富んだソロをとっており魅力的。「It Had To Be You」は、マクファーソンが早いパッセージを繰り出して快調で、続くジョーダン、ジョーンズを含め、ハードバップ色が濃厚です。

【プースカフェ】
長野市内を中心として配布されているフリー・マガジンです。この9月号で100号になるそうです。月1回出されているので、8年以上続いていることになります。

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