安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ペッパー・アダムス 10 TO 4 AT THE 5 SPOT

2010-11-28 19:57:10 | その他木管楽器

先週の水曜日は仕事の関係で東京に行ってきました。その帰りに寄り道をして、鈴木良雄Generation Gapのライブを目黒のジェイジェイズ・カフェ(Jay-J's Cafe)で聴いてきました。鈴木良雄(b)は大ベテランですが、他のメンバーは、中村恵介(tp)、山田拓児(sax)、ハクエイ・キム(p)、大村亘(ds)という若手だけに、勢いのある音が出ていました。長野新幹線の最終に間にあうようにワンセットだけで店を後にしましたが、ハクエイ・キムのプレイを初めて聴くことができたので良しとしましょう。自宅でも2管編成によるライブ盤です。

PEPPER ADAMS (ペッパー・アダムス)
10 TO 4 AT THE 5 SPOT (RIVERSIDE 1958録音)

 10to4atthe5spotpepperadams

久しぶりに管入りのライブに行ったのですが、若い女性のグループが3組も来店していて驚きました。曲目はオリジナルで、それぞれ長いソロを各楽器がとっていたのに熱心に聴いていました。こういうところから、ジャズファンが増えればよいですね。ピアノカウンターに座ったのですが、目の前でそれぞれの演奏が見れるのは格別です。

ペッパー・アダムス(bs)のこの作品は、ハード・バップ時代のライブ録音として有名なものですが、タイトルが変わっています。「10から4まで」なのですが、これは夜の10時から朝の4時までという意味で、ファイブスポットにおける公演の時間だそうです。ミュージシャンは、その間休憩をはさみながら、いくつかのステージをこなすのでしょうが、聴く側も体力と時間に余裕が必要です。

メンバーは、アダムス(bs)、ドナルド・バード(tp)、ボビー・ティモンズ(p)、ダグ・ワトキンス(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)で、ほぼデトロイトに縁がある人の集まりです。曲は、サド・ジョーンズの「'Tis」、D・バード作「The Long Two/Four」、「Yourna」、スタンダードの「You're My Thrill」、トラディションの「Hastings Street Bounce」の5曲で、オリジナルが多いです。

アダムスのバリトン・サックスの音量は大きく、そのプレイはゴリゴリとかなりの迫力がありますが、案外と柔軟なところもあり、ワンホーンで演じた「You're My Thrill」などは、甘さこそ少ないですが、ムードが出ています。全編にドナルド・バードの輝かしい音によるトランペットプレイが聴けるのが嬉しいところで、「The Long Two/Four」、「Hastings Street Bounce」と、このグループの快演が続きます。

【Jay-J's Cafe】

リーダーの鈴木良雄がメンバーを紹介しています。ピアノのハクエイ・キムは、スケジュールがぎっしりで、メジャーのユニバーサルレーベルからデビューすることが決まっているそうです。確かに切れのよいフレーズを続々と繰り出していて、いつかピアノ・トリオで聴いてみたいピアニストです。

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ラリー・ヴコヴィッチ STREET SCENE

2010-11-24 00:02:29 | ピアノ

21日(日)のN響アワー(NHK教育TV)では、ネルロ・サンティが指揮したNHK交響楽団の演奏するメンデルスゾーンの「イタリア」交響曲が放映されていました。サンティは1931年生まれのイタリアのベテラン指揮者ですが、チューリッヒ歌劇場を中心に世界各国で活躍しています。彼は多数の歌劇をはじめ、暗譜で指揮をすることで知られており、この交響曲も暗譜でした。しかも、軽やかなリズムを刻んでいて、とても80歳近いとは信じられません。NHK交響楽団はここ数年彼を招聘していますが、できれば実際の演奏会を聴きたいものです。ジャズの方もベテランの作品です。

LARRY VUCKOVICH (ラリー・ヴコヴィッチ)
STREET SCENE (Tetrachord Music 2005年録音)

 Streetscenevuckovich

ラリー・ヴコヴィッチは、ユーゴ出身のピアニストですが、同国出身のダスコ・ゴイコヴィッチ(tp)のライブ盤「As Simple as It Is」でサイドメンを務めていたところから知りました。その後、ヴコヴィッチのリーダー作もボツボツと買いましたが、近年録音された作品の出来が素晴らしいので、驚きかつ喜んでいます。彼は、1936年生まれなので、70歳にならんとした時の録音です。

最近は、ブルースに根ざしたオーソドックスなバップ・ピアノの新作は、あまり目につかなくなったような印象を受けます。そんな中で、ヴコヴィッチは、ラテン・リズムを取り入れたりしながら、伝統的なプレイの良さを発揮しています。メンバーは、ヴコヴィッチ(p)、ラリー・グラナディア(b)、アキラ・タナ(ds)で、曲により、Hector Lug(congas)、Vince Delgadd(bongo)が加わります。

ヴコヴィッチの自作の「Dexter's Mode」、「Blue Bohemia Suite」、「Scandinavian Waltz」、ソニー・クラークの「News for Lulu」、アルフレッド・ニューマンの「Street Scene」、スタンダードというべき「As Time Goes By (Mambo)」(時の過ぎゆくままに)、「I Ain't Got Nobody」、「Come Rain or Come Shine」(降っても晴れても)、「Oh, You Crazy Moon」、「It Could Happen to You」、「Under Paris Skies」(パリの空の下)など全13曲です。

はじめの「Dexter's Mode」から疾走感が感じられますが、全体にラリー・グラナディア(b)のよく歌うソロや上下するランニングベースはききものです。ヴコヴィッチは、歌の伴奏に長けていることもあり、音が軽めできれいですし、音遣いは極端なものがないので、寛いで聴いていられます。小気味良いプレイの「News for Lulu」、意表をついたリズムで早いテンポの「As Time Goes By」、バラードで高音が美しい「I'll Wait and Pray」、スインガーの「I Ain't Got Nobody」と面白く、充実した作品です。

ホームページにラリー・ヴコヴィッチ(Larry Vukovich ピアノ)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ラリー・ヴコヴィッチ


ジェニー・ぺイス LOVE IN A MIDNIGHT MOOD

2010-11-21 20:27:28 | ヴォーカル(E~K)

安曇野市の実家から、リンゴをひと箱買ってきてほしいと頼まれたので、長野市の自宅から北へ車で45分ほど行ったところにある、長野県上水内郡飯綱町倉井のJA長野さみずフルーツセンター直売所に行ってきました。ちょうど今が最盛期といっていい出荷量らしく、リンゴが大量に並んでいましたが、たまには親孝行というわけで、高くて見栄えもいいものを買いました。味はそう変わらないはずなので、自宅用には5キロ1000円というお値打ち品にしたのですが、蜜が入っていて、甘さと、しゃきっとした感じが合わさり素晴らしく美味です。甘さと力強さの感じられるヴォーカルです。

GENIE PACE (ジェニー・ぺイス)
LOVE IN A MIDNIGHT MOOD (JADE 1957年頃録音)

 Loveinamidnightmood

ジャケット裏面のライナーノートの執筆者は、著名なジャズ評論家のIRA GITLER(アイラ・ギトラー)だったので、もしかしたらいい内容だろうと期待して購入したのですが、その期待に十二分に応えてくれるアルバムでした。ジョニー・ぺイスについては、ライナーくらいしか情報がありませんが、kuirenさんのブログ「ジャズとレコードとオーディオと」には、彼女の作品がもう一作紹介されています。

ハイスクール卒業後、1953年にタイピストとしてCBSに就職しましたが、ローラースケートに興味を持ちその訓練をしつつ、ヴォーカル・コーチの元で学び、54年の末には「Eastside club」に2週間出演。その仕事は1年間続きましたが、病気で休養をとります。56年の半ばにカムバックし「La Silhouette」らのクラブに出演。彼女を認めていたJim Brightにそこで再会し、彼のレーベルでこのLPを作ることになります。したがって、録音は57~58年頃ではないかと推測しています。

スタンダード集です。「Wee Small Hours」、「The One I Love Belongs to Somebody Else」、「I Get Along Without You Very Well」、「I'll Remember April」、「One for My Baby」、「The Lonesome Road」、「Lover Man」、「My Melencholy Baby」、「I Got It Bad and That Ain't Good」、「Body and Soul」(身も心も)、「Street of Dreams」に、ちょっと珍しい「May I Never Love Again」の12曲。

失恋状態にあるミッドナイトムードということで、編曲もそれに対応したムーディーなものが多いですが、ぺイスの歌声には力強さと爽やかさが感じられるので、そういったイメージばかりが出ているわけではありません。それぞれ歌詞をしっかりと歌っていて、輪郭のはっきりとした歌唱を行っています。「We Small Hours」、「I'll Remember April」、「One For My Baby」と、ことにLPのA面に惹かれます。多分、CD化はまだされていないと思います。

ホームページの散策に、神戸のジャズ・観光スポットを掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう 神戸のジャズ・観光スポット

【さみずフルーツセンター近くの光景】

遠くは大阪ナンバーの車などが駐車しており、全国から買い物に来ているようです。近くは、りんご畑が広がりますが、まだ収穫されない果実が枝についているのが見えました。遠くには北信濃の山々が望める場所です。

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エディ・コスタ GUYS AND DOLLS LIKE VIBES

2010-11-17 23:23:25 | ヴァイブ、オルガン他

11月14日(日)から16日(火)にかけて出張で神戸市に行ってきました。自由な時間はそうとれなかったのですが、15日に北野坂にあるジャズ・クラブの「ソネ」の最終ステージを聴くことができました。はじめの2曲はピアノ・トリオによる演奏で、次いで、ヴォーカリストの山添ゆかさんが登場して4曲歌いました。山添さんの歌もよかったのですが、はじめのピアノ・トリオが躍動的で、とりわけピアノの泉川貴広さんが印象に残りました。既に盛んに演奏活動を行っていますが、今後が期待できそうです。ソネでピアノ・トリオが演奏した「If I Were a Bell」が入っているアルバムです。

EDDIE COSTA (エディ・コスタ)
GUYS AND DOLLS LIKE VIBES (CORAL 1958年録音)

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神戸は、北野異人館街やメリケンパーク、南京町と見所が多く、また、オシャレなレストランやブティックなどのお店が通りに並んでいるためか、女性観光客が多くいました。ジャズ・ライブを聴けるところが多いことに加え、洋食をはじめ食べるものも美味しいので、また行きたい街です。ジャズ喫茶「茶房 ヴォイス」や「MOKUBA'S TAVERN」に寄ってみましたが、お店の方はフレンドリーで、さすがに港町神戸だと感心しました。

さて、エディ・コスタですが、ピアノとヴァイブのどちらも一流の腕前を持っていたミュージシャンで、ピアノの方は左手を用いて低音も活用した力強いプレイをします。ヴァイブの方は、あまり共鳴させずにストレートに音を出していますが、ピアノのようなごつごつとした感じはないので聴きやすいものです。その彼が唯一、ヴァイブに専念したアルバムが、この作品です。

メンバーは、エディ・コスタ(vib)、ビル・エヴァンス(p)、ウォンデル・マーシャル(b)、ポール・モチアン(ds)という、今から見ると実に豪華な人選です。曲目は、1950年11月から1200回も上演されたミュージカル「Guys and Dolls」(野郎どもと女たち)からで、「Guys and Dolls」、「Adelaide」、「If I Were a Bell」、「Luck Be A Lady」、「I've Never Been In Love Before」(まだ恋したことはない)、「I'll Know」の6曲。作曲は、フランク・レッサー。

バラードの「Adelaide」では、コスタは、和音を交えたしっとりしたプレイを行い、エヴァンスは抒情的で新鮮な旋律を弾いています。「If I Were a Bell」は、早いテンポでリズミック。コスタが、ストレートな響きでややメカニックな演奏をしています。同曲では、P・モチアンのブラッシュプレイも心地よい。「I've Never Been in Love Before」は、はじめはバラードで、エヴァンスの繊細な演奏が素晴らしく、途中から早いテンポに変わり、コスタがメロディを装飾しながらスイングしていきます。

【ジャズ・クラブ 「ソネ」】

(入り口)

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(泉川貴広(p)、井手厚(b)、高野正明(ds))

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(山添ゆか(vo)とピアノトリオ)

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デイブ・ブルーベック JAZZ: RED HOT AND COOL

2010-11-13 21:16:04 | ピアノ

ようやく長野市の自宅のリフレッシュ工事が終わり、足場が取り外されました。外壁などが塗り替えられて、外観は新しくなりました。お風呂の追い焚きが出来なくなっていたガス給湯器も買い替えたので、湯船のぬるくなったお湯に蛇口から熱い湯を足して、時間をかけてお湯をあたためる必要が無くなりました。冬の寒い時期に、飲み会で遅く帰っても暖かい風呂にすぐに入れるのが嬉しいところです(笑)。HotとCoolがタイトルに入ったアルバムです。

DAVE BRUBECK (デイブ・ブルーベック)
JAZZ: RED HOT AND COOL (COLUMBIA 1954,55年録音)

 Jazzredhotandcool

ブルーベックのコロンビア盤のジャケットには工夫を凝らしたものがあり、華やかなものがいくつかあります。「ANGEL EYES」や「MY FAVORITE THINGS」など美女を配した明るいものが大いにアピールしますが、「JAZZ: RED HOT AND COOL」も、ピアノに寄りかかり微笑を浮かべる赤いドレスの女性と、ピアノを弾いているブルーベックの対比が面白いジャケットです。。

表面に小さい文字で入っていた写真家の名前は、RICHARD AVEDONでしたが、この人はファッション分野で大きな成功を収めた写真家だと思います。リチャード・アヴェドンは、このジャケット写真を撮影した当時は、ハーパース・バザー誌で活躍しているころで、その後はヴォーグ誌やニューヨーカー誌でも活動しました。僕が知らなかっただけかもしれませんが、思わぬ発見でした。

デイブ・ブルーベック(p)、ポール・デズモンド(as)、ボブ・ベイツ(b)、ジョー・ドッジ(ds)というブルーベック・コンボの初期のメンバーで、曲は、「Lover」、「Little Girl Blue」、「Fare Thee Well, Annabelle」、「Sometimes I'm Happy」、「The Duke」、「Indiana」、「Love Walked In」。本作品はニューヨークのクラブで録音されたライブものです。

ブルーベックは、厚い和音を用いたり、クラシックからの引用を行ってソロをとっています。この時期のカルテットの魅力は、ポール・デズモンド(as)に多くを負っていますが、スインギーな「Sometimes I'm Happy」や「Indiana」がグループとしてもまとまっていて楽しく聴けます。デズモンドは「Fare Thee Well, Annabelle」においてもリズムに乗った美しいプレイを行っています。後年のジョー・モレロ(ds)入りのグループを知ってしまうと、リズムがちょっと重いのが気になりますが、まあ贅沢というものですね。