安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ジェイ・ジェイ・ジョンソン IN SWEDEN 1957

2012-08-26 20:20:32 | トランペット・トロンボーン

先週、「ヘブンスそのはら星空ナイトツァー」(長野県下伊那郡阿智村)に行ってきました。山麓駅からゴンドラに乗り15分で終点の星空観賞エリアに到着。午後8時半には、全ての照明が消されて、レーザー光線で指し示しながら、星や星座についての説明が行われ、約100人の観客が聞き入りました。若干かかっていた雲も、午後9時ごろには一掃されて、北極星、ベガ(織姫星)、天の川など満天の星をみることができました。当夜は、ジャズ・ナイトで、スタンダードジャズの演奏も行われました。

J. J. JONSON (ジェイ・ジェイ・ジョンソン)
IN SWEDEN 1957 (Marshmallow  1956,1957年録音)

 Insweden1957

星空ナイトツァーでは、星や月にちなんだ曲が主に演奏されて、テンポは概ねゆっくりで、その場の雰囲気に似合うものでした。単身赴任宅に帰宅したら、テンポが早く熱い演奏を聴きたくなり、J. J. ジョンソン(tb)の吹く「It's Only A Paper Moon」が収録された「In Sweden 1957」を取り出しました。日本のマシュマロレーベルが発売したもので、素晴らしいトラックばかりです。

1957年のJ.J.ジョンソンのスウェーデン・ツァーは、トミー・フラナガン・トリオによる「Overseas」を生んだことで有名ですが、そのツァーのメンバー5人による録音がまとめられたCDです。メンバーは、J. J. ジョンソン(tb)、ボビー・ジャズパー(ts fl)、トミー・フラナガン(p)、ウィルバー・リトル(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。J.J.がtromboniumというジャケット写真に写っている楽器を使ったトラックもあるようですが、判然としません。

楽旅中のストックホルムにおける放送録音が5曲で、「Thou Swell」、「Undecided」、「Never Let Me Go」、「It's Only A Paper Moon」、「A Night in Tunisia」。あとは楽旅前のアメリカにおける録音で、1957年1月のジャズクラブ「レッド・ヒル・イン」からの放送録音が4曲で、「Solar~Intro.」、「Thad Ben Wess」、「It's All Right With Me」、「Undecided」、そして1956年の「J is For Jazz」セッションから「Chasin' The Bird」の別テイクが2つです。なんといっても注目は、ストックホルムにおける録音。

全員絶好調と思われ、はじめの「Thou Swell」におけるフラナガン(p)のイントロを聴いただけで、期待に胸が躍ります。バラード「Never Let Me Go」では、ジャスパーはフルートを吹き、ジョンソンはミュートをつけていて、音色のブレンドも面白く、抒情的。「It's Only A Paper Moon」は、相当なアップテンポですが、ジョンソンは苦も無く音をヒットしていきます。エルヴィン・ジョーンズ(ds)に煽られてジャズパー、フラナガンのソロも、熱を帯びたもの。「A Night In Tunisia」もエキサイティングで、短いながらフラナガンのソロがメロディアスでまとまっています。

【ヘブンスそのはら星空ナイトツァー】

下記に2枚写真を載せましたが、僕の腕では、星空や夜景を撮るというのは困難でした。満天の星空をご想像いただくか、昼神温泉観光局のホームページ(ヘブンスそのはら星空ナイトツァー)をご覧ください。出演したテナー・サックス、ギター、ベースのトリオにより演奏された曲は、「Star Dust」、「Stella by Starlight」、「Stars Fell On Alabama」、「When You Wish Upon a Star」、「Fly Me to The Moon」、「I Remember Clifford」、「On The Sunny Side of The Street」、「見上げてごらん夜の星を」などでした。観客から演奏にも拍手があって、皆さん音楽も楽しんでいたようです。

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ヒュー・ローソン COLOUR

2012-08-19 17:28:33 | ピアノ

涼を求めて、不動滝(長野県下伊那郡高森町)を訪れてみました。位置は、天竜川を挟んで南アルプスとは反対側の山中になります。大島川という川に沿って、約4キロメートルほど走ると駐車場があり、そこから歩いて2~3分ほどで着きます。不動滝は、落差50メートル、横幅10メートルと雄大で、滝の真下までいって飛沫を浴びることもできます。涼しさを求めて行くには絶好の場所でした。音が迸るプレイが聴けます。

HUGH LAWSON (ヒュー・ローソン)
COLOUR (SOUL NOTE 1983年録音)

 Colourhughlawson

ヒュー・ローソン(P)のリーダー・アルバムは3枚だけですが、長らく入手困難だった「Casablanca」(somethin'else)がこの6月に復刻されたので、購入しました。稀少盤として高値を呼んでいたCDだけに、JAZZレア盤リクエスト復刻として発売されたのは朗報です。これで、彼のアルバム3枚が入手できたので、ホームページにまとめると同時に、ブログでは、2作目の「COLOUR」を取り上げてみました。

ローソンは、1950年代から活躍していましたが、1978年録音の「Prime Time」(Jazzcraft)によって日本でも知られるようになり、僕もLPを入手しました。バド・パウエルに基礎をおいた演奏をしますが、マッコイ・タイナーからの影響もうかがえます。それは、例えば、このアルバムの第1曲目の「Pictures At An Exhibition」では、左手のシングルトーンで低音を入れて伸ばしている間に、右手の下降フレーズが始まるという、やり方が出てきますし、手数が多く、フレーズが小刻みでモーダルなところなどからです。

メンバーは、ヒュー・ローソン(p)、カルヴィン・ヒル(b)、ルイ・ヘイズ(ds)。曲は、ムソルグスキーの「Pictures At An Exhibition」(展覧会の絵)、デヴィット・ゲイツの「If」、あとは、ローソンのオリジナルで、「The Tinkler」、「Georgie Porgie」、「The Beast From Bali-Bali」、「23rd Street Blues」、「Creepy Chicken」の7曲。カルヴィン・ヒルは、マッコイ・タイナー・グループのべーシストだったプレイヤーです。

厚い和音を交えた、力強いピアノが聴ける力作。彼の3枚目のアルバム「Casablanca」では「Ballads For The Beast」として収録されている、リズミックで哀感溢れるテーマを持った自作の「The Beast From Bali-Bali」は、こちらの方がテンポが遅く、メロディも鮮明に示されて、より哀感が漂っています。「23rd Street Blues」と「Creepy Chicken」の2曲は、3人によるいかにもブルーズというプレイが展開され、黒っぽくゆったりとした好演。カルヴィン・ヒル(b)も、「Georgie Porgie」をはじめ、ソロ、バッキングに活躍し、よく響く重い音が印象的。

ホームページのジャズに、ヒュー・ローソン(p)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ヒュー・ローソン

 【不動滝(長野県下伊那郡高森町)】

 所在地:高森町 牛牧 2887-9

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ジャネット・サイデル DON'T SMOKE IN BED

2012-08-15 23:47:20 | ヴォーカル(E~K)

安曇野市から飯田市に来る途中、中央道伊那インターで降りて、伊那市にある三澤珈琲店に立ち寄り、珈琲豆(正確には挽いてもらった粉)を買いました。とりあえず特選ブレンドを購入しましたが、美味しかったので、たまに買いに行くことにします。このあたり(長野県飯田下伊那地方)には、珈琲豆の専門店がないので、探していたところ、高速道を使って約30分くらいの比較的近くに良い店が見つかりました。「Black Coffee」が収録されたアルバム。

JANET SEIDEL (ジャネット・サイデル)
DON'T SMOKE IN BED (LA BRAVA MUSIC 2002年録音)

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「Black Coffee」は、ポール・フランシス・ウェブスター作詞、ソニー・パーク作曲により、1948年に作られた歌で、サラ・ヴォーンが1949年に録音しヒットしました。最も有名なヴァージョンは、ペギー・リーのものですが、多くの歌手が歌っています。歌詞の大意は、「待っている男が来ないので、孤独にさいなまれ一睡もできずに、自分の部屋を歩き回り、ブラック・コーヒーを飲んで気持ちを紛らわせている」といったところでしょうか。かなり無理があるので、元の歌詞全部を読んでみてください。

ジャネット・サイデルは、オーストラリアの人気歌手ですが、うるおいのある声で暖かみのある、包み込むような歌唱をするので、恨みも入った「Black Coffee」をどう歌うか興味があったところですが、噛んで含めるようながら、比較的さらりと歌っています。バックのギター演奏がムードを出しています。彼女の書いたライナーによると、「不在の恋人を眠ることができないほど、恋しく思っている。それは男も女も同じ。」という内容に、とらえ直しているようです。

曲は、ペギー・リーが歌ったものばかりで、「Blues in the Night」、「You Do Something To Me」、「He's a Tramp」、「Things are Swingin'」、「Fever」、「Johnny Guitar」、「It Takes a Long Train with a Red Caboose」、「Black Coffee」、「Why dont' ya do right?」、「I Don't Enough About You」、「Bella Notte/La La lu」、「Mr.Wonderful」、「Bye Bye Blues」、「The Folks Who Live on the Hill」、「Street of Dreams」、「Don't Smoke in Bed」の16曲です。

フルートやギターが入ったジャジーなコンボの伴奏で、丁寧に歌われていきます。決して、叫んだり、唸ったりしない、寛いで穏やかなサイデルの歌は、聴いていると優しい気持ちにしてくれるかのようです。どれもよいですが、おなじみの「Fever」や「Johnny Guitar」そして「I Don't Enough About You」、「Street of Dreams」、「Don't Smoke in Bed」と、4ビートのヴォーカルを堪能することができました。

【三澤珈琲(伊那店)】

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所在地: 長野県伊那市 日影451-1
<nobr>電話: 0265-76-5117
HP: 三澤珈琲ホームページ</nobr>


ハンプトン・ホーズ EVERYBODY LIKES HAMPTON HAWES VOL.3 THE TRIO

2012-08-12 16:47:13 | ピアノ

所用で名古屋市に行ってきました。用事を済ませた後は、レコード店とジャズ喫茶巡りです。レコード店は、バナナ・ジャズ・シンジケートとサン・オブ・スリーサウンズ、ジャズ喫茶は、はじめてYURIに寄りました。YURIには、午後2時過ぎに入ったのですが、お客さんが多く、食事をしている女性や、文庫本を読んでいる初老の男性などバラエティに富んだ客層でした。ハードバップ名盤が大きめの音量で流れていて、居心地がよく、名古屋での必須の立ち寄り場所になりそうです。YURIの看板に使われているイラストジャケです。

HAMPTON HAWES (ハンプトン・ホーズ)
EVERYBODY LIKES HAMPTON HAWES VOL.3 THE TRIO (Contemporary 1956年録音)

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名古屋のジャズ喫茶YURIは、店内が明るく、食事のメニューも豊富で、ランチタイムにお客さんを集めているようでした。午後1時前にも店の前を通りかかったのですが、続けて2~3組入って行ったので、時間をおいて、レコード店を回ってから訪ねてみました。ワニのイラストを使った看板は、愛嬌があって目立つ優れモノで、元のイラストもコンテンポラリーの動物ジャケ中、楽しい一枚です。

店内に一時間ほどいましたが、かけているのはLPで、ウィントン・ケリー(p)「Wynton Kelly」(Riverside)、ロンネル・ブライト(p)「BRIGHT'S SPOT」(Regent)、アート・ペッパー(as)「The Way It Was」(Contemporary)がかかりました。ケリーとブライトの2作は、ギター入りのピアノ・トリオの編成が共通で、どちらもケニー・バレルが参加しています。YURIのシステムは、どういうものか不明でしたが、ギターやベースがよく鳴っていました。

これは、おなじみのアルバムですが、メンバーは、ハンプトン・ホーズ(p)、レッド・ミッチェル(b)、チャック・トンプソン(ds)。曲は、「Somebody Loves Me」、「The Sermon」、「Embraceable You」、「I Remember You」、「A Night in Tunisia」(チュニジアの夜)、「Lover Come Back To Me」(恋人よ我に帰れ)、「Polka Dots and Moonbeams」(水玉模様とお月さま)、「Billy Boy」、「Body and Soul」(身も心も)、「Coolin' The Blues」で、「The Sermon」と「Coolin' The Blues」は、ホーズのオリジナルです。

「Somebody Loves Me」や「Billy Boy」など、いずれの曲も、ミッチェル、トンプソンのすっきりとしたリズムに乗って、よくスイングしています。「Polka Dots and Moonbeams」など、テンポの遅い曲ではアルペジオを用い、優雅な曲に仕上げています。自作の「Coolin' The Blues」では、ブルーズが得意のホーズらしい演奏が楽しめ、レッド・ミッチェルのよく弾むベース・ソロも聴き逃せません。

ホームページのジャズ喫茶にYURIを掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジャズ喫茶YURI

【ジャズ喫茶YURI】

所在地:愛知県名古屋市東区東桜1-10-40
電話: 052-951-7800 
営業:12:00~24:00(日・祝は22:00)、月曜日定休

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キャノンボール・アダレイ CANNONBALL'S BOSSA NOVA

2012-08-08 23:53:32 | アルト・サックス

長野市の自宅に久しぶりに帰ったら、松本市在住で名古屋市に単身赴任している友人から葉書が届いていました。内容は、7月16日に南アルプス光岳に上り、この10年間で「信州美しき百山」(信濃毎日新聞社刊)にすべて登ることができたという報告でした。山登りに凝っていることは、もちろん知っていましたが、よく短期間で実現できたものです。「おめでとう」とメールしましたが、お祝い(飲み会)を名古屋でするつもりです。丘の頂上から写したと思われるリオの港をジャケットに使っています。

CANNONBALL ADDERLEY (キャノンボール・アダレイ)
CANNONBALL'S BOSSA NOVA (Capitol 1962年録音)

  Cannonballsbosanova

最近は、また登山ブームなのでしょうか。山ガールが出現したり、中年のグループで縦走したりと、たくさんの方が登山を行っているようです。長野県内の高校でも、山岳部が復活するところがあり、まだブームが続きそうです。それにしても彼の百山は立派です。リオデジャネイロの方は、ケーブルカーで丘の頂上まで行くようですが、それは、香港でも同じでした。リオは写真で見るだけですが、きれいな港です。

キャノンボール・アダレイ(as)のこのアルバムは、ボサノヴァ黎明期の1962年の録音で、これ以降、彼はファンキー路線に向かうので、このようなアルバムは作られていません。共演のBossa Rio Sextetのメンバーは、セルジオ・メンデス(p)、ドゥルヴァル・フェレイラ(g)、オクタヴィオ・ベイリーJr.(b)、ドン・ウン・ロマノ(ds)、ペドロ・パウロ(tp)、パウロ・モウラ(as)と、ボサノヴァを担った名前が並んでいます。

曲は、ドゥルヴァル・フェレイラ(g)のオリジナルで、「Clouds」、「Batida Diferente」、「Joyce's Samba」、「Sambop」、ジョビン作の有名曲「Corcovado」と「O Amor Em Paz(Once I Loved)、セルジオ・メンデス(p)作「Groovy Samba」、Joao Donato作「Minha Sudade」の8曲。曲により共作者もいますが、ボサ・リオ・セクステットのメンバーの作品が多く、当然ですが、ボサノヴァオリジナルばかりです。

キャノンボール(as)は、ミドル・テンポの静的な曲も見事にこなしています。最初の「Clouds」では、魅惑的なメロディーを、艶やかな中低音を用いて、装飾音も使いながら吹きます。この1曲だけでも、聴いてみたいアルバムです。他にも「Corcovado」、「O Amor Em Paz」など知られた曲が、アドリブを交え楽しめますが、バックでは、ギターやドラムスなどが軽くリズムを刻んでいて、これぞボサノヴァという気分にしてくれます。