猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ふたつの名前を持つ少年

2015-09-11 04:31:32 | 日記
ドイツ・フランス合作映画「ふたつの名前を持つ少年」を観にいった。
第二次世界大戦下のワルシャワにあったゲットーから脱走した8歳の少年スルリックは、
同じような境遇の子供たちと森で生活していたが、逃走中にはぐれて1人になり、寒さと
飢えから人里に降りてきた。凍死寸前で行き倒れになったスルリックは、1人で暮らす
ヤンチェック夫人に保護される。彼女の夫と2人の息子は、パルチザンとしてナチスと
戦っていた。スルリックは父の教えに従い、ユダヤの名前を捨て「ユレク・スタニャク」と
名乗る。彼の愛らしさと賢さに気づいたヤンチェック夫人は、"ポーランド人孤児ユレク"
の身の上話を考え出し、キリスト教の祈りとともにスルリックに教え込む。束の間の夫人
との平和な毎日に忘れていた笑顔を取り戻すスルリック。だが、ある朝ヤンチェック夫人
は家の周りの雪の上に、ゲシュタポの足跡を発見する。

実話を基にした小説の映画化である。8歳のユダヤ人少年スルリックが、ユダヤ人差別
をする人には虐げられ、そうでない人には助けられ、あちこちを転々としていくさまは、
胸が痛む。当時このような子供は少なからずいたのかもしれない。
ヤンチェック夫人の家を出て、ユレクとして生きていくことになったスルリックは、ある
農場で仕事と引き換えに寝食を与えられるが、数カ月後には近所の少年たちにユダヤ
人であることを見破られてしまう。そしてまた森に逃げることになる。ナチスに命を狙わ
れながら必死に逃げ、また次の農場で雇ってもらう。小さな子供が命の危険にさらされ
ながら生きていくために働き続けるなんて、壮絶としか言いようがない。ユダヤ人だと
いうだけで、何故そんな目に遭わなければならないのか。
大ケガをした時も、病院に運び込まれたがユダヤ人嫌いの医者に手術を拒否される。
しかし翌日別の医者が手術をしてくれて、かろうじて命を取り留める。今なら考えられ
ない、許せないことだが、当時は普通にあったことなのだろう。人間とはどこまで冷酷に
なれるものなのか。ユレクの辛い旅はまだ続く。
スルリックのモデルになったヨラム・フリードマンという人は、今ではイスラエルで幸せ
に暮らしているという。しかし彼が少年時代に体験したことは、あまりに重たい。
「自分がユダヤ人であることを忘れるな。パパやママのことは忘れても、ユダヤ人だと
いうことは忘れるな」スルリックの父が、スルリックと別れる際に言った言葉が凄く印象
に残った。その後のシーンも。
この映画の原題は「RUN BOY RUN」(走れ、走って逃げろ)である。そちらの方がずっ
といい。



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コメント
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