ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

三度目の殺人

2017-09-03 23:39:54 | さ行

毎度、是枝監督にはやられっぱなし(笑)


「三度目の殺人」80点★★★★


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弁護士の重盛(福山雅治)は
「真実に興味などない。依頼人の利益が一番だ」という
クールな男。

彼は殺人の前科のある三隅(役所広司)が
働いていた工場の社長を殺した事件を担当することになる。

面会に行った重盛に、三隅は
「間違いありません」と淡々と罪を認める。

解雇された恨みからの殺人、しかも前科者の犯行――
誰もが「ありふれた裁判」になると思っていた。

が、重盛が調査を始めると
意外な事実が明らかになり――?!


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素晴らしい!

謎を含んだミステリのようで、
凄まじい深度の人間描写とドラマ。

原作ものではなく
是枝監督が取材を通じて
興味を持った事柄をもとに書いた脚本だそうで

殺人犯(役所広司)、被害者の男の娘(広瀬すず)、弁護士(福山雅治)・・・
一つの事件に関わる、立場の違う三人の

それぞれに
押し殺した感情、その氷点下な冷気の塊が、
画面から溢れて、こちらに押し寄せてくる。
潰される!ってほどなんですよ。


まず殺人犯役の役所広司氏。

温和で、しかし底が知れないというか
劇中でも言われるように
まさに「空っぽのうつわのような」、計り知れない不気味さを持つ男を
凄まじく演じていて、眼福です。


その器に重なる福山雅治氏も、引かない芝居。
広瀬すず氏も見事。

そんなに出演シーンは多くないですが
福山氏に相対する検察側の若手、市川実日子氏が
これまた「シン・ゴジラ」をどこか引きずったイメージで

清濁併せ呑まなければならない「むぅうう」な状況を
一瞬で表したりして
たまらない(笑)


見て思うのは

誰もが
生きにくい社会をやり過ごし、
生き延びていることが奇跡なんだってこと。

そこにある
紙一重の「そっち側」。

そこに至った誰かを裁くのも
また同じ社会を生きる人である。


人が人を裁くって
ホントに、こんなことなのか?

怖いっす。


「三度目の殺人」の意味は?
犯人は、いや我々は、何を「殺している」のか?
その答えを、ぜひ劇場で!


★9/9(土)から全国で公開。

「三度目の殺人」公式サイト
コメント (3)
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