ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

リチャード・ジュエル

2020-01-13 00:57:58 | ら行

クリント・イーストウッド監督は、まだまだ走る!

 

「リチャード・ジュエル」71点★★★★

 

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1996年。オリンピック開催に沸く米・アトランタ。

 

リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は

警官になることを目指してきた純真な若者。

 

だが、強すぎる正義感はしばしば周囲との軋轢も起こし、

いまはオリンピックの野外フェス会場の警備員として働いていた。

 

その夜、リチャードは会場で

怪しいリュックサックを見つける。

 

「爆発物かもしれない!」と率先して市民を避難させた彼は

結果的に多くの人々の命を救い

リチャードはヒーローとして人気者になる。

 

だが、そんな彼があろうことか

「容疑者」となってしまい――?!

 

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クリント・イーストウッド監督が

1996年に起きたアトランタ爆破事件を描いた作品です。

 

「ハドソン川の奇跡」(16年)

など、割と最近ニュースになった実話を基にすることも多い監督。

 

今回は、1996年、アトランタ・オリンピックの最中に起きた

爆発テロ事件が題材に。

 

テロを最小限に食い止め、一躍ヒーローとなった純真な青年が

一転、犯人扱いされ

実はいまもその汚名が完全に注げていない・・・・・・という事実を知り

「真実を伝えなければ!」と筆を、いやカメラを取ったそうです。

 

 

イーストウッド監督にしては

若干、光りきれていないところも残している感じなんですが

実際の出来事が教える教訓を、とにかく「誠実」に伝えていて

いま、大事な作品だと思いました。

 

というのは

純真で正義感の強いリチャードが、犯人にされていく様が

あまりに昨今の風潮、たとえばSNSでの炎上にそっくりで

 

誰かを「血祭り」にし、生贄にしようとするメディアや大衆の恐ろしさが

20年以上たった現在、より加速している!ってことを

いやでも感じずにいられないから。

 

無理やり犯罪のストーリーを考え、リチャードをハメようとするFBIにイラだちつつ、

同時に、正義感や忠誠心が裏目に出そうな

リチャードの言動や行動にもハラハラ。

 

そんな彼を助けることになる弁護士ワトソン役の

サム・ロックウェルが実によい!

そう、「スリー・ビルボード」(18年)のあのいや~な巡査役で

アカデミー助演男優賞を獲ったあの人です。いや~ナイス。

いい人か悪い人かわかりにくい「あや(綾)」の加減といい

ちょっとスティーヴ・カレルを思わせるよね。

 

さらにリチャードの母役

キャシー・ベイツもさすがの存在感。

 

と、脇を固めるキャストも手堅く

リチャードの運命はいかに?!と魅せるんですが

 

色気を武器にネタをとる女性記者など

もうひと押し、ふた押し、書き込んでほしいキャラやエピソードがあったかな、と。

 

でも、なによりこの作品は

リチャード・ジュエル本人に、捧げられるべきもので

その意義は十二分に果たしてはいるなあと。

 

89歳のレジェンド、

まだまだ走り続けてほしい!

 

★1/17(金)から全国で公開。

「リチャード・ジュエル」公式サイト

コメント (2)
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