原作が指摘した法律の落とし穴に
ドイツ政府も動いた!らしい。
えらいこっちゃ。
「コリーニ事件」72点★★★★
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ドイツ、ベルリンの高級ホテル。
そのスイートルームに入ってきた男が、
部屋に滞在していた初老の富豪ハンス(マンフレート・ザパトカ)を
いきなり殺害する。
が、男は逃げも隠れもせず
血まみれのまま、ロビーの椅子に座り
その後、おとなしく、警察に捕まった――――。
男の名はコリーニ(フランコ・ネロ)、67歳。
ドイツで暮らす模範市民だった彼が、なぜ富豪を殺害したのか?
コリーニは何も語らず、静かに収容されていた。
そんなコリーニの弁護人となったのは
若き新米弁護士カスパー(エリアス・ムバレク)。
だが、実は殺された富豪ハンスは
カスパーの恩人だったのだ。
悩みながらもコリーニの弁護を引き受けたカスパーは
次第に、事件の裏に潜む、恐ろしい真実に迫っていく――――。
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「このミステリーがすごい!」でも上位に食い込む
ドイツの刑事事件弁護士にして、世界的ベストセラー作家
フェルディナント・フォン・シーラッハ原作の映画化です。
原作小説で指摘された
ドイツのある法律の落とし穴がきっかけとなり
政府が正式に「調査委員会」を立ち上げた、という
強力パワーのリーガル・サスペンス。
まあ、動くドイツ政府もすごいよな、というのが
やっぱりちょっと羨望なのですが(笑)
ミステリーでネタバレはつまらないので、さらっといきますが
この事件は
たぶん、みなさまのご想像どおり
ナチスドイツ時代に端を発している。
で、ドイツには当時の「罪」をうまく回避すべく
ずるこい人々が作った「法律」がある。
それに気づいた若き弁護士と
「いやいや、そこは含み置けよ、そしたらキミの将来は安泰だぞ」的な
前の世代の人々とのバトル、ともいえる話なんですね。
保身や利己心に従うか、
いや、自らの高潔な良心に従うか。
なんだか、あ~いろんな意味で
いまっぽい!(苦笑)
コリーニ演じるフランコ・ネロの
寡黙にしてすごい存在感もいいし、
その彼の背景にある、信じられない「過去」といい
トルコ系の血を持つ主人公の弁護士カスパーの
ドイツ社会での地位、差別にさらされてきた現状――なども盛り込まれ
全体に魅せるミステリーなことは間違いないです。
ただ、それゆえに、気になった点もあった。
まずコリーニの弁護士カスパーの、
被害者との個人的な関わりゆえの、葛藤やら回想が過剰すぎる。
戦時下での行いと、その後の「その人」は違う――――という
複雑さの現れなのかもしれないけど
少々、エクスキューズ(弁明)に見えなくもない。
それにね。
弁護には詳しくないけど、依頼人が黙秘してるなら、
まずその人の過去を探るのって、イロハのイ、じゃないの?
てか、絶対に知りたくなるよね?とか、思ってしまうんですが
主人公がなかなかそれに着手せず
中盤に物語がようやく動き出すんですよね。
もうちょっと、はよ、やって?と(笑)
でも、おもしろかったですよ。
ちなみに。
原作者のシーラッハ氏は1964年生まれで、自身もナチ党の実力者を祖父に持つそう。
弁護士になり、過去に正面から「小説」というかたちで向き合う
その姿勢、やっぱ尊敬してしまいます。
★6/12(金)から公開。