ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい

2020-06-14 02:27:43 | あ行

「気狂いピエロ」、鮮烈だったなあ!

 

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「アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい」70点★★★★

 

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2019年12月に79歳で亡くなった、ヌーヴェルヴァーグのアイコン、

アンナ・カリーナのドキュメンタリーです。

 

その人生を、晩年の恋人だった監督が振り返る、という形式で

うん、作品全体がラブレター、というのはよくわかる。

 

さて、アンナ・カリーナ、

もちろんゴダールの「気狂いピエロ」などで

知ってはいたけれど

その出自がこんなにドラマチックだとは知らなかった。

 

1940年、ナチスドイツ占領下に生まれた彼女。

 

その生まれた状況もすごいですが

その後、デンマークから一人パリに飛び出し、

あのココ・シャネル、に見いだされ、

モデルとして花開いた。

 

そしてその後、ゴダールやアニエス・ヴェルダ監督、

セルジュ・ゲンスブールにヴィスコンティなどと仕事し、

時代のミューズ、アイコンになっていく。

 

そのサクセスストーリーにも驚くんですが

そこからさらに彼女は、監督業や作家業にも挑戦し

歳を重ねてからも舞台、歌に活躍し

70代になっても、メディアにも惜しみなく登場している。

相変わらずの美とオーラに驚きつつ

 

常に挑戦を続けた女性なんだ!と知り、

改めて尊敬しました。

 

そして

晩年、おそらく70代後半であろう彼女が

若い頃の自分をスクリーンで観るシーンが何度も出てくるのですが

 

若き日の自分を観るその目に、

少しの躊躇も、焦燥もない。

本気で愛おしそうなまなざしであることに

感じ入るものがありました。

 

常に現在進行形で、真剣に人生に向き合い続けた人にとって、

これまでの歩みに、悔いなどみじんもないんだ、と。

 

ましてや過去の栄光や、若さへの執着、

それに老いの不安だってこれっぽちもないのよ、とその姿は語っているようで

なんて、すごいんだろう!と。

 

この映画、劇中に登場する過去映像の著作権の関係から

本来日本では上映できないそうで

今年限りの、特別公開だそう。

 

見逃してはなりませぬ。

 

★6/13(土)から新宿K's cinemaほかで公開

「アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい」公式サイト

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